金沢から東京まで走るボルボの長距離試乗会。新しいV90にたくさん乗れる、と喜んで参加したのだがちょっとした落とし穴が潜んでいた。
ボルボの試乗会で長距離を走るのには慣れていた。千歳から東京まで走ったこともあるし、東京からいわきを経て、新潟まわりで帰ってきたこともある。でも、マイナーチェンジしたV90の金沢試乗会は、それ以上にハードでタイトなものだった。
日程は新幹線で金沢に前日入りし、翌朝より試乗をしつつ東京へ戻るという余裕のあるもの。返却期限は17時だから、早めに出れば十分間に合う。しかも前夜のうちに、茶屋街での撮影は終えていた。ではなぜ大急ぎの旅になったかといえば、10時頃に立ち寄った合掌造りで知られる五箇山でラジオの交通情報を聞くまで、その日から東名高速道路が集中工事なのを忘れていたのだ。返却に間に合わせるには、東海北陸道と中部縦貫道で高山を抜け、安房峠越えをするしかない。ナビはすでに30分以上遅れると告げていたが、なんとなく間に合う予感もしていた。なぜなら試乗車はただのV90ではなく、最新のマイルド・ハイブリッド、B6を積むRデザインだったからだ。

新しいボルボV90の見た目の違いは少なく外観の変更点はグリルとバンパー下部くらいで、元々のエレガントな雰囲気を保ちつつ、新しさも感じさせる。以前のRデザインは内装がスポーティ・グレード=黒内装、というステレオタイプな仕立てだったが、新型はブロンドという明るい色も選択できる。上品だけど押し出し感もある。過剰でない、適度なスポーティさがRデザインの魅力だ。

エンジンはディーゼルがカタログ落ちした。ガソリン・エンジンは数字が5だと2リッターターボ、6と8は2リッターターボ+スーパーチャージャーとなるのは以前と同じだが、純ガソリンのT5/6が内部構造を刷新し気筒休止とアシスト・モーターを加えたB5/6になり、さらに後輪を2基目のモーターで駆動するPHEVのT8との3本立てになった。B6エンジンはT6より全体的にずっと滑らかで、気がつくと自分が思っているよりもずっと速度が上がっている。スターターと発電機を兼ねる13.6ps/40Nmのアシスト・モーターが、始動時やトルクが落ち込む8段ATの変速時、気筒休止時に絶妙に介入するのが効いている。300ps/420Nmを発揮するB6エンジンはディーゼルのように下からぐぐっと車体を押し出し、それでいて上から下まで全域でスムーズだ。おまけに静かで、スーパーチャージャー特有の回転音は聞こえない。
高速巡航は快適そのもの。ただ、片側1車線の東海北陸道では追い越しができず、先を急ぐ身としては焦る。シフト・パドルがないのが惜しいが、時々現れる追い越し車線で小さなノブを左でダウン、右でアップと手首を返して操作し変速すれば、車重が1930kgもあるとは思えないほど余裕綽々で前走車をパスできる。
飛騨清見ICから続く中部縦貫道はまだ途切れ途切れで、高山西ICまでと安房トンネル以外、工事のトラックが連なり、轍の深い158号線を走るしかない。Rデザインの機械式サスペンションはダンパーやスタビライザーは専用設定で、前後スプリングはノーマルのV90比で50%も締め上げられているという。ホイールは20インチだし、タイヤサイズも35%扁平だ。ところが道がこれほど荒れているのに、バネ下が重くて暴れる気配がほとんどしない。路面のうねりや凹凸に、しっかり足がついてくるような感覚だ。

岐阜と長野の県境を越える頃には、到着時刻は30分も早いとナビが示しはじめた。ここで油断して、梓湖から野麦峠へ撮影に向かったのがまずかった。紅葉がきれいで交通量も少ないが、あっという間にリードタイムがなくなる。来た道を慌てて引き返し、松本ICから長野道、中央道をひた走り、東京を目指す。
17時の期限には結局10分ほど間に合わなかった。でもほかの試乗チームは、それから1時間ほど戻って来られなかったと聞いた。条件が厳しくなれば厳しくなるほどそのクルマの真の力が分かるというけれど、7時間で500kmをイッキ乗りして、新しいV90の実力は本物だと思った。こんなにタイトなスケジュールでなければ、まだまだ走れる。心地よい疲れを身体に感じながら、僕はそう、頭の中で考えていたからだ。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也
■ボルボV90 B6 Rデザイン
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4945×1880×1475mm
ホイールベース 2940mm
トレッド(前後) 1620mm
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1930kg(1060kg:870kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ+スーパーチャージャー
排気量 1968cc
最高出力 300ps/5400rpm
最大トルク 420Nm/2100-4800rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
(後) マルチリンク/リーフ
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 255/35R20
車両本体価格(税込) 884万円
(ENGINE2021年2・3月合併号)
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