スーパースポーツカーのMC20を発表し、勢いに乗るマセラティが、ついに電動化モデルを市場に投入した。マセラティ史上初のマイルド・ハイブリッド、ギブリ・ハイブリッドに菰田潔氏が試乗!
マセラティはまずエクステリアデザインの美しさに惹かれてしまう。ここがイタリアの自動車メーカーっぽい。ギブリは4ドアサルーンでありながらクーペのような流麗なボディパネルで構成される。そのシルエットは遠くにあっても目立つ。ギブリより大きなボディのクワトロポルテもSUVのレヴァンテも、もちろんスーパースポーツカーのMC20も滑らかな美しいボディが妖艶な雰囲気を醸し出している。
そしてその走りの部分は、レースの世界で培ったエンジンとサスペンション技術が市販モデルにも生かされている。
しかし世の流れは美しさや走りが良いだけでは許してくれない。今回マセラティとして初の電動車はギブリ・ハイブリッドとして登場した。
ギブリのラインナップはこれまでⅤ6とⅤ8だった。通常モデルはディーゼルにしてもガソリンのパワー違いにしてもまた4WDモデルにしてもすべて3リッターV型6気筒エンジンを搭載、また日本市場にはまだ上陸していない高出力モデルのトロフェオにいたっては3.8リッターV8をフロントに収めていた。ハイブリッドになって一番大きな違いは直列4気筒エンジンを積んだことだ。排気量は2リッターだからそれだけでも軽量化になっている。
これだけ聞くと何か頼りなく感じるかもしれないが、ギブリ ハイブリッドが目指したものはガソリン・エンジンのパフォーマンスとディーゼル・エンジンの燃費だ。
マセラティのハイブリッド・システムは48VのBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)が主役である。BSG、バッテリー、eブースター、DC/DCコンバーターの4つで構成されている。減速時のエネルギーをBSGが電力に変え、トランクにあるバッテリーに充電する。エンジンに付属したeブースターと呼ぶ電動コンプレッサーに電気を送るのはトランクのバッテリーである。電動コンプレッサーは低回転時のエンジンパワーを補うことができ、従来のターボ・チャージャーと連動させることで鋭いアクセル・レスポンスと幅広い回転域で太いトルクを確保することができる。
新しい2リッター4気筒のマセラティ・エンジンはFCAグループ由来のマルチエア4気筒エンジンがベース。ただし、モデナのマセラティ・イノベーションラボにおいてその内部部品に至るまで徹底した見直しを行った。電子制御システムもボッシュの最新コントロール・ユニットが搭載されている。こうしてeブースターとターボ・チャージャーによる出力とトルクを最大限に引き出している。
まだナンバーが付いていない試乗車なので走行は駐車場内だけに制限される。パイロンで作ったスキッドパッドとスラロームコースは小雨でちょっと湿っていたが、ESC(横滑り防止装置)をカットし、スポーツモードを選び、滑りを楽しむためダンパーを硬めにセットして思い切り試してみた。
そもそもV6エンジンを搭載できるボディに軽量な4気筒だから余裕があるのだろう。攻めていってもシャシーもボディも剛性が高くしっかりしていた。
スキッドパッドでは左のパドルシフトで1速に落とし、アクセルを踏み込んでリヤを滑らせる。回転が上がり過ぎてもDレンジなので自動シフトアップしてくれるから、そのまま2速でドリフトが持続できる。アクセルペダルの反応が良いのはやはりeブースターのお蔭か?
ピッチの短いパイロンスラロームでは、4気筒によるノーズの軽さが軽快なフットワークを生んでいた。フロント245/35ZR21(96Y)XL、リヤ285/30ZR21(100Y)XLのピレリPゼロもしっかり働いてくれていた。
ボディの美しさ、軽量4気筒エンジン、シャシーボディ剛性の高さ、軽快なハンドリング、燃費の良さ、それに職人が手作りしたインテリアの質感の高さも含めて、ギブリ・ハイブリッドが新しいマセラティの方向性を示しているようだ。
文=菰田潔
■マセラティ・ギブリ・ハイブリッド
駆動方式 フロント縦置きエンジン+48Vマイルド・ハイブリッド
全長×全幅×全高 4971×1945×1461mm
ホイールベース 2998mm
トレッド 1635/1653mm
車重 1950kg
エンジン形式 直列4気筒ターボ+eブースター
排気量 1998cc
最高出力 330ps/5750rpm
最大トルク 450Nm/4000rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後) マルチリンク
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 235/50R18
車両本体価格(税込) 未定
(ENGINEWEBオリジナル)
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