長野駅からレンジローバーで向かった白馬のスキー場。はたしてそこで待っていたのは、ゲレンデの上を雪まみれになって縦横無尽に駆け回っているディフェンダーだった。
スキー場のゲレンデをクルマで走るのは初めてだ。しかも圧雪されておらず、耕運機が畑を掘り返した後みたいに雪の塊がごろごろしていて、いかにもスタックしそうである。でも、こんなところを走れるのか? という恐怖感はすぐに消えた。今回の相棒のランドローバー・ディフェンダーは、ひとたび速度が乗りさえすれば、まるで水を得た魚のようにゲレンデを駆け抜けたからだ。
試乗車はエアサスを装備するロングボディの110SEで、タイヤはノキアンのハッカペリッタR3 SUVというスタッドレスを履いていたが、スタート前から半分くらい雪に沈んでいた。動き出すと、重く湿った雪の抵抗で、がくがくと身体が前後左右に揺さぶられるし、まっすぐ進めない。コースはスキーのスラロームを逆に登るような設定だが、パイロン代わりの旗の周囲は特にえぐれていた。避けようとしたが轍のせいで深みへ誘導され、旗の真横で見事にスタック。
落ち着いていったんバックし再スタートするも、センターデフを持ち常時4駆のディフェンダーでもタイヤがスリップし、それを感知しパワーが絞られてしまう。電子制御による悪路支援プログラム、テレインレスポンスをオート・モードからある程度滑り出しを許容する草地/砂/雪モードに切り替え、さらに副変速機をロー・レインジに。今度はどうだ? と右足に力を込めると、回転計の針が一気に跳ね上がるのと同時に、あっけなくディフェンダーは抜け出した。
雪の状態をよく見て、荒れた轍の中を格闘しながら進まず、雪の残る柔らかなところを狙って走るようにすると速度が落ちない。旗を外から大きく回り込み、暴れるステアリングを抑えながら上手くスロットルのタイミングを合わせると、雪を跳ね上げ、斜めになりながら前に進む! 21年モデルで追加投入された3リッター直6ディーゼルに比べ、試乗車の2リッター直4ガソリンは最高出力こそ同じ300psでも、最大トルクは400Nmとディーゼルの650Nmの約6割しかない。けれど右足の操作に対する反応が鋭く、コントロールは自在だった。夢中になって走っていると、すぐに頂上に辿り着いてしまった。
街中で見るディフェンダーはキュートで、視点が高く車体サイズを把握しやすく、兄貴分のレンジローバーやディスカバリーに遜色ない快適性すら備えた、優れた実用車だ。けれどディフェンダーの本分は、まさにこういう場所を走るためにある。それを心底実感させられた試乗だった。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人/ジャガー・ランドローバー・ジャパン
(ENGINE 2021年5月号)
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