新型アウディA4シリーズにふたつのディーゼル・モデルが加わった。今回、試乗したのはベース・モデルとなる35TDI アドバンスト。果たして、その乗り味は?
アウディの試乗会で超ド級のRSQ8に乗った後は、ぜひとも一番ベーシックなモデルに乗りたいと思った。そこで選んだのが、A4シリーズに新たに加わったふたつのディーゼル・モデルのうちのパワーの低い方である35TDIだ。そのアドバンスト仕様が試乗車のラインナップの中にあり、これがこの日用意された中でもっとも安い試乗車だった。
その価格はRSQ8の3分の1以下、といっても538万円である。この価格をどう見るかは後で触れることにして、まずはクルマの成り立ちをみてみると、一番の特徴であるディーゼル・エンジンは2リッター直4ターボで最高出力=163ps/3250-4200rpm、最大トルク380Nm/1500-2750rpmを発生、7段自動MTのSトロニックを介して前輪を駆動する。ちなみに、上級ディーゼルの40TDIは同じ2リッター直4のターボ違いで190ps/400Nmのパワー&トルクを得ており、こちらは4輪駆動となっている。実のところ、A4の前輪駆動モデルに乗るのは本当に久しぶりで、それが今どんなふうになっているかにも興味があったのだ。
いささか地味(失礼!)な、テラグレー・メタリック(オプションで9万円)のボディ・カラーを持つA4 35TDIは、タイヤ・サイズも17インチと穏当で、いかにも堅実な実用車という見かけに好感が持てた。乗り込んでみると、シートもフルレザーではなく、ファブリックとのコンビネーションだったが、これは実はラグジュアリー・パッケージでオプション。スタンダードはファブリックのみになるようだ。
私としては、それで十分だと思うのだが、それはともかく、ボタンを押してエンジンを始動すると、始動時こそディーゼルらしい音が聞こえたものの、走り始めるとまったく気にならなくなったどころか、あまりに室内が静かなのにビックリさせられたのである。オプションの消音シートを挟み込んだアコースティックガラスも効いているのかも知れないが、それにしてもまるでひとクラス上の高級車のような静けさだ。
けれど、全体的な乗り味は、とてもカジュアルな印象だった。エンジンの回転フィールもサスペンションの動きも、シルキーというような滑らかさとは違い、それよりも木綿のようなちょっとザラついた、とても骨太な感じで、素朴な乗り味が私にはなんとも気持ち良かった。
可変ダンパーの付かない一発決めの脚は、硬すぎず柔らかすぎず、絶妙な落としどころに調整されている。そしてフツウに走っている限り、前輪駆動車であることを意識させられるシーンはまったくないだろう。ハンドリングはきわめてニュートラルで、切れば切っただけ曲がってくれるし、山道を少々飛ばしたところで、コーナーでアンダーステアが出ることもないし、アクセレレーターを踏み込んでもトルクステアも出ないから、気持ち良くスポーツ・ドライビングを楽しむことができる。
もちろん、決してRSQ8のような有り余るパワーを持っているわけではないから、急坂で加速しようと思ってアクセレレーターを目一杯踏み込んでも、速度が付いてくるまでにはやや時間がかかるということはあるが、それで実用車として不足があるとはまったく思えない。むしろ、こういうクルマをスポーティに走らせるのが、ドライビングの一番の楽しみだという気さえしてくるのである。とにかく、シャシーとパワートレインのバランスがとれた素性のいいクルマというのは、まさにこういうクルマのことを言うのだと思う。久々に清々しいクルマに出会えたのはうれしいが、ひとつだけ気になったのは価格だ。これがもう100万円安かったら満点なのだが……。
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬
(ENGINE2021年5月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.08
【後篇】2024年総まとめ! 自動車評論家44人が選んだ「いま身銭買いしたいクルマのランキング!」 クルマ好きの人たちの深層心理がわかった!!
2024.11.12
BMW4シリーズ・グランクーペが初の変更 新しいヘッドライトと装備の充実で商品力を高める