2021.04.24

LIFESTYLE

アイディア満載! 建築家の自邸だからできた三角敷地に建つコンクリートの狭小住宅 小さいからこそ面白い世界がある!! 

東京都渋谷区に建つ腰越邸。

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それが、都会の真ん中に家が建っただけでなく、敷地内に車庫も確保。こうして腰越さんは、人生で初めて自分のクルマを手に入れることができた。素敵な話じゃないか。

「特に車種を想定せず、小さな駐車スペースを用意しておきました。そして子供を授かり、クルマを持つことに。仕事柄デザインは譲れません。FIAT500かスマートで悩みましたが、ショールームに飾られていた白と黒のモデルが可愛くてスマートの方を選びました。買い物や3歳の子供を公園まで乗せていくような街乗りだけでなく、親子3人で帰省する際にも活躍しています。小さいクルマですが、高速走行も楽ですよ。もちろん仕事で現場に行くのにも使います。クルマはいいですね。実は運転が好きだったんです」




さて、腰越邸は平面図を見て分かる通り、小さな敷地だが余裕をもって建てられている。60%ある建蔽率(当時の規定で。現在は70%)をギリギリまでではなく、30%強しか使っていない。容積率も200%のところを140%までで。最初は建蔽率一杯に建てるプランを半年ほど考えていたが、しっくりいかなかった。どうやっても隣家との間に50cmほどのスペースが生まれる程度で、エアコンの室外機を置いたらそれで終わりである。そこで建蔽率を目一杯使うことを止めることで、今のプランが生まれた。建物の周り3カ所にちょっとした庭を設けた結果、腰越邸は狭い土地に建っているようには見えない。こうした割り切りも、建築家の自邸ならではだ。

16平方メートルでも狭くない

さて、4層からなるこの家の間取りは、外階段を下りた半地下が腰越さんの事務所。別の階段を上って玄関を入った1階が水回りと予備室。2階がリビング・ダイニング・キッチン。3階が寝室で、その一部が奥様の書斎スペースになっている。限られた空間を広く感じさせる工夫が随所にされているのは、やはり建築家の自邸だ。居室部の天井高は238cmと、普通の家より少し高い。窓も床から40cmの高さから始まる大きなもの。さらに建物は通りに対して30%傾けて建っているので、向かいの建物の窓と視線が合わない位置関係だ。付近には同じような高さの家が無く、窓からの眺めは視線が抜けている。そのため2、3階は16平方メートルもない空間だが狭さを感じない。


驚いたことに収納は、3階に大きいものがひとつあるだけ。引っ越しの際に本当に必要なものだけを選んで、ミニマルな生活を送っている。さらにお子さんが生まれたのを機に、コンクリート打ちっ放しの床に厚さ3cmの国産の杉材を貼った。赤ちゃんはハイハイをするので、椅子やベッドの生活を止めて床の生活をするためだ。デザイナーもののダイニングセットは、この時処分した。3階は布団を敷いて眠るので、普段は床に何もない。こうした積み重ねのおかげで、腰越さんが心配した小さな家を訪れた感じは全くなかった。


ところで、わざわざ都心のお洒落なエリアを選んで建てた家である。いったいどのように暮らしているのだろう。特に自宅の下で働くのだから、相当な長時間労働ではと想像したが大間違い。建築事務所は18時で業務終了。所員には残業を禁じている。会社勤めの奥様とは、自宅に仕事を持ち込まない約束をしているので、それ以降は家族の時間だ。仕事が忙しい時は、早朝から働くライフスタイルである。

しかも夫婦やお子さんとの生活だけではない。アクセスが良いので、実家のお父様が上京し、この家を拠点に趣味の落語を聴きに出かける事もあるのだとか。なるほど。けして大きくなくとも、拘った家ができると人生はより豊かになる。腰越邸を訪れて、そう強く感じた。

建築家:腰越耕太。1976年新潟県生まれ。神奈川大学卒業後、設計事務所勤務を経て独立。自邸は構造で無理をしないようにRC造としたが、近年は木を使用したSDGs的な建築を得意としている。写真はRC造の4階建てのビルの建て替え。1-2階は鉄骨、3-6階は木造として建物の軽量化に成功し、4割増の床面積を実現させた。2年後には15階建ての木造ビルが完成する予定。Photo : GlassEye Inc./海老原一己

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

(ENGINE2021年5月号)

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