2021.04.09

CARS

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まるでシートがソファーのような “フランス人が好きなフランス車” シトロエンC3 がモデルチェンジ!

生活に彩りをあたえてくれるシトロエンC3は、家のように過ごせて、家具のように使えるクルマだ。ENGINEでもお馴染みのデザイン・プロデューサー、ジョー・スズキさんが、そんなシトロエンC3に乗って、宇都宮の家具ショップ、「vanilla宇都宮」を訪ねてみた。


家具見本市、ミラノサローネを視察

シトロエンC3は、現在新車で手に入るものの中で、最もデザインの良い一台ではないかと思っていた。そんな折マイナーチェンジが行われ、この魅力的なクルマについてデザインから語る機会を得た。


かつてパリで3年間働いていたうえ、デザイン・建築を中心とした仕事をしているからだろう。デザインが素晴らしいのは、外見が独創的なだけではない。シートを含めた内装もよく考えられている。


聞けば、シトロエンのデザインチームは、世界最大の家具見本市であるミラノサローネを視察して案を練ったというではないか。ということで、デザインや内装、座り心地についてお喋りするため、インテリアショップのvanilla宇都宮の田中昇社長を訪ねるべく、シトロエンC3でドライブすることになった。


vanilla宇都宮は、延床面積が140坪もある大きなインテリアショップ。イームズ、カリモク60など、国内外の名作を数多く扱う。家具だけでなく、クルマにも拘るマニアな顧客が多いのだとか。

走り出す前に、まずはクルマの周りを軽く一周。現在のデザインとなった3代目が発表されて5年になるが、ひと目で車名を当てられる明確な個性は色褪せていない。屋根がエメラルドグリーンのツートンの色分けは、今回のマイナーチェンジで新たに登場したもの。こうした色も、デザインの一部になっている。


フランスで暮らした時に感じたのは、彼らが最も大事にすることの一つが、他人と違うこと。もし誰かと意見が同じなら、自分の意見を変えてしまうような国民である。その点シトロエンC3は、他の何にも似ていない。 


シトロエンBX、シトロエン・エグザンティアが奥さん用のクルマとして家にあった田中さんは、最新のシトロエンがとても気になるようだ。

実車を目にして意外だったのは、写真から想像していたよりも小ぶりに感じることだ。全長は僅かだが4mを切る。狭い道でも、扱いやすいサイズである。C3はこれで3代目になり、カーブを多用したデザインは代々継承されているが、先代のように可愛いタイプではない。彫刻のような豊かな造形で、少々筋肉質。余分なラインの少ない、クリーンな姿をしている。


そのボディを引き締めているのが、ドアの下部に貼られた黒いエアーバンプだ。この角を丸めた長方形は何度も繰り返されるモチーフで、デザイン上のアクセントになっている。マイナーチェンジで手が加えられた顔は、前期モデルのどこかのんびりとした顔から、少ししまった印象に変わった。


インテリアのトリムはシックな「スタンダード」と写真の「エメラルド」の2種類が用意されている。エメラルドグリーンのアクセントは新鮮だ。

室内に入ってみると、メーター周りは外観に比べるとオーソドックスで視認性も良い。速度計もタコメーターも、リアルな針があるタイプで、懐かしさを感じてほっとした。表情のある樹脂製のダッシュボードには、エメラルドグリーンのオーバル状のトリムが改めて登場。これだけで印象が華やかになる。


日本でフランスというと高級ブランドのメッカの印象が強いが、それはごく一部の限られた世界の話。多くの人は質素で合理的な生活をしている。価格に見合ったものでないと決して買わないうえ、美意識も高い。


街の人のファッションを見ても、なんでもないジーンズとセーターに、スカーフを巻いたりブローチを付けたりと、ワンポイントのアイデアで自分らしく楽しく生きる工夫をしている。シトロエンC3もまさにそんな感じで、フランス流の日常を楽しむ道具なのだろう。


まるでパリ郊外の田舎道のような道を走るC3。ゆったりした乗り心地は好印象だ。

高速道路も余裕の走り

さて、C3は取材チームの3人と機材を乗せて高速道路を走り出す。室内の広さや荷室はこれだけあれば、大抵の場合は十分だろう。エンジンは元気がいい。1.2リッターのターボだが、決して遅いクルマではない。


高速道路の合流や、巡行なども余裕だ。フランスは、パリを離れれば殆どが田舎である。道の多くは、交通量が殆どない、ゆったりとした田舎道や都市と都市を繋ぐオートルート(高速道路)。どんなクルマも、ある程度のスピードで走らないと危険だ。


そんな国で生まれたシトロエンC3は、速度の遅い日本の高速道では、僕のような走りだと十分に余裕がある。そして、柔らかで粘るような乗り味が心地良い。タユタユとした乗り心地で、東北道を北上する。


筆者。フランス時代から、時々ベレー帽をかぶっていたが、いつの間にかそれが日常に。室内はルーミーで視界も良い。
シトロエンC3は、デザイン面で語ることが多く、まだ乗ってもいない田中さんと話が盛り上がる。
ちょっとしたカフェコーナーもあるvanilla宇都宮。ご覧のように店舗は広い。数年前、筆者はここでトークイベントを行ったことが。
田中さんのお店はブームが来る前に、ビンテージのイームズを扱うことから始まった。今でもイームズは主力商品。

そうこうしているうちに、クルマは田中さんの待つvanilla宇都宮に到着。この店は、イームズやカリモク60など内外の名作椅子を中心に扱う、我が国でトップクラスの販売数を誇るインテリアショップだ。


しかも田中さんの家には、奥様用のクルマとしてシトロエンBXやシトロエン・エグザンティアがあった時期も。これほど相応しい話し相手はいないだろう。ところがいつもは饒舌な田中さんが、シトロエンC3の前で無口になっている。


「今のシトロエンって、こんなにしっかりしているんですね……」


少し前のシトロエンと暮らしていた旧オーナーからすると、最新のC3はプロダクトとして格段に進歩しているように見えるそうだ。そしてステッチが入り、エメラルドグリーンのアクセントのシートを見てひとこと。


「随分洒落ていますね。掛けてみると、抜群の座り心地じゃないですか」


シトロエンのシートの良さは定評があるが、今回のモデルチェンジでスポンジの厚さが増し、さらに快適性が向上しているそうだ。


スポンジ厚が2mmから15mmになって座り心地が良くなったアドバンスドコンフォートシート。エメラルドのアクセントがお洒落。サイドサポートの形状など、デザインも個性的だ。
後席のニールームも必要十分なスペースが確保されている。
遊び心溢れる旅行鞄の取手のようなドアハンドルのデザインや、人が直接触れる肘掛けにファブリックを貼るなど、五感に訴える演出をさらりとやってのけているのが上手い。

実は、ソファーや椅子など家具の世界で、座り心地だけが言及されることは極めて少ない。大事なのはデザインとのバランスである。また、人は頻繁に座る姿勢を変えるので、殆どの椅子で座り心地を悪く感じることは少ない。


ところがクルマだと同じようにはいかない。長時間同じ姿勢で座るという点で、クルマのシートはオフィス・チェアに近いのかもしれない。vanilla宇都宮ではアーロンチェアを始め、ハーマンミラー社の高機能オフィスチェアをフルラインで扱っている。


ハーマンミラー社の数種類のオフィス・チェアを座り比べられるvanilla宇都宮。椅子によって使用目的が異なるので、同じメーカーでも座り心地は大きく異なる。

「同じメーカーのオフィス・チェアでも、それぞれの椅子で思想が違うんですよ。例えばアーロンチェアは、座り方を矯正する考えでデザインされています」


色々なモデルを座り比べて個人的な感想を言わせてもらえば、C3の座り心地は、高級なオフィス・チェアに引けをとらないほど、お尻や腰に優しいもの。長距離ドライブも、苦にならないことだろう。


前衛好きなフランス人

続いてシトロエンC3で、田中さんの那須の別荘を訪れることに。日本を代表する建築家の宮脇壇が1975年に設計したもので、数年前に田中さんが手に入れ一昨年に改修工事が終わったものである。竣工時は、専門誌で紹介されたほどの名建築。修復して大事に使っていくことが建てたオーナーから譲り受ける一つの条件だった。それを大切に使い続けていくことは、新オーナーの重要な役目である。


この別荘をバックにシトロエンC3を撮影すると、なんとも良い雰囲気だ。もっとも完成当時、この建物は相当に前衛的だったに違いない。実はフランス人は、前衛的なものが大好き。芸術の分野で、時代を変える革新的なものの多くがフランス、特にパリの町から生まれている。


そんなパリは今でも伝統的な街並みが続いているが、国や市の大事な新しい施設は、力のあるフランスの建築家が驚くほど斬新な建物を設計している。やがてその前衛的な建築も、歳月を重ねると段々と町の景色に溶け込んで、市民の誇りとなっていく。


入り口の前の狭いコンクリートのスペースにC3を止めてみた。建物の裏側には雰囲気のある木製扉の玄関がある。
別荘のリビング・ダイニングは、現代の基準からすると少々狭い。しかし、暫く身を置いていると、窓が多く視界が開けているので、これで十分な広さだと分かる。

それはクルマでも同じこと。1919年に登場したシトロエンは、よく「10年進んでいる」と言わるほどの前衛だったが、21世紀の今ではマニアでなくても振り返る、愛すべき存在になっているように思う。


さて、リビングダイニングのある別荘の2階からシトロエンC3を眺めると、また違った発見があった。小動物のようで愛おしさを感じる形をしているのだ。


「高速道路を追いかけていったら、後姿も顔のようでしたよ。最低地上高が高いのに、車高を低く抑えているので、小動物が四つ足で踏ん張っている感じでした」と田中さん。


宮脇壇が設計した別荘は、2階部分が片持ちとなった、相当に挑戦的な構造。これから木々が茂ってくると、2階からの眺めは森の中に浮いているよう。

そう、独創的だがよく見るとC3は、愛嬌のある姿なのだ。発表当時は時代を先取りした外観に、衝撃を受けた人も多かっただろう。ところが時代はこのデザインに追いつき始めている。撮影してよく分かったが、シトロエンC3はレトロな建物や最新の建築、そして田舎道などにも、自然と溶け込むようにデザインされているのだ。


2021年にリニューアルした新しいシトロエンC3も、やがて多くの人々に愛される存在になるのではなかろうか。将来名車の仲間入りをする、長く語り継がれていくデザインだと思う。


レトロな建築との相性もバッチリ。旧黒磯銀行本店(1916年竣工)を利用した、カフェ・ド・グラン・ボワの前で。残念ながらこの日はお休み。

シトロエンC3 SHINE

試乗車のボディカラーはブランバンキーズでルーフはエメラルド。内装はエメラルドインテリア。フロント横置きエンジン前輪駆動。全長3995mm、全幅1750mm、全高1495mm。ホイールベース2535mm。車重1160kg。1.2リッターの直列3気筒DOHC12バルブ・ターボは110psの最高出力と205Nmの最大トルクを発揮。トランスミッションは6段AT。車両本体価格は259万5000円(税込)。


特別仕様車のC3 C-Seriesも登場

カジュアルなSHINEをベースに、大胆に色使いを変えることでシックな雰囲気を演出。フロントのフォグランプベゼルとボディサイドのエアバンプなどのアクセントカラーにディープレッドを採用。ツイード調の生地を使ったシートにも同じくディープレッドをあしらい、ルーフステッカーやC-Seriesのタグなどを随所に使って、C3の通常モデルとはちょっと違ったファッショナブルな仕立てになっている。価格は269万9000円(税込)。


→シトロンC3 SHINEと特別仕様車 C3 C-Series の詳細はこちらから
https://www.citroen.jp/car/new-c3

ジョー スズキ デザインプロデユーサー。ENGINE本誌で、連載マイカー&マイハウス、巻頭のENGINE ビートで、デザイン、建築を担当。デザインイギャラリーも運営し、倉俣史朗の家具を復刻。独立前のサラリーマン時代、1990年から3年間パリで暮らした。25年前に東京で乗っていたホンダNSXを窃盗団に盗まれ現在はクルマを所有していないが、ENGINEで仕事をするようになり、自分に相応しいのはスポーツカーでなく、お洒落系のクルマとようやく気づく今日この頃。


田中昇 ノンヴァーサス社長。福島県会津若松市生まれ。サラリーマンから転身し、1998年、郡山市でイームズの家具を扱うインテリアショップ、vanilla郡山を開業。2011年の3.11で被災したのを契機に、vanilla宇都宮をオープン。那須はこの両市の中間に当たり、宮脇壇の別荘を取得した目的の一つは、敷地にオフィス棟を建設すること。現在宇都宮に3か所、郡山に1か所の、合計4店舗を運営する。https://vanilla-kagu.com/


(ENGINE WEB オリジナル)


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文=ジョー スズキ 写真=山下亮一