2021.08.07

CARS

これぞアルピナの味! 新型B7に乗って絶品ライドを堪能!!

軽井沢で行われたBMWアルピナの試乗会では、B5に乗った後、同じ4.4リッターV8ツインターボを積むロングホイールベースのB7にも試乗することができた。果たして、その違いはどうだったか?

B5とは違う味付け

最新のB5から乗り換えたのは、2019年6月にフェイスリフト版がドイツで発表され、その年の秋から日本でも発売されているB7だ。こちらはロングホイールベース版のみの設定となるが、4.4リッターV8ツインターボをフロントに縦置きに搭載し、ZF製の8段ATを介して4輪を駆動する基本パワートレインはB5と同じだ。ところが、走り始めてすぐに、B5とはまるで味つけが違っていることに驚かされた。

ほぼすべての個体がオーナーの好みによってビスポークされて出荷されるというB7。広報車には326万円のエグゼクティブ・パッケージ“プレジデント”がオプション装着されていた。

ひとことで言ってしまえば、「これぞアルピナの味!」と太鼓判を押したくなるような、しなやかさと柔らかさに溢れた感触が、ステアリング・フィールからも足回りの動きからも伝わってきたからだ。B5のコイルに対して、こちらはエア・スプリングを奢られているのだから、乗り心地がいいのは当然かも知れないが、それ以上の味つけの方向性の違いがあるように思えた。すなわち、B5がまずスポーツありきで基本的なセッティングをして、そこにコンフォートな味を加えているのに対し、こちらはなによりもコンフォートであることが基本で、その快適性をどんな速度域でも、あるいはどんなワインディング・ロードでも実現するようにセッティングを詰めていった結果、自然にスポーティな足になったという感じがするのである。



軽井沢インターに向かうバイパスの荒れた路面を、フラットな姿勢を保ちながら軽くいなして行ったのはもちろん、高速道路に入ってからの走りも絶品だった。どんな速度域でも、あるいはいささか乱暴な加減速を試みても、顔色ひとつ変えることなく、常に最適な姿勢を保って室内の平穏を保ち続けている。こういう極めて高いレベルのコンフォートを見せてくれたのは、最近、私の試乗した中で言えば、新型ロールスロイス・ゴーストと新型メルセデス・ベンツSクラス、そして、このアルピナB7ということになる。

旧碓氷峠をひとっ走り

B5と同じエンジンは、志向に合わせてチューニングを変えてあるようで(むろん変えたのは後から出たB5の方だろうが)、最大トルクが同じまま最高出力が13ps低いだけでなく、全体的に中低速トルクを重視した設定になっているように感じた。回した時の気持ち良さではB5の方が上だが、こちらはその分、どこから踏んでも2.2トンもあるボディを顔色も変えずにスッと前に押し出していく力強さがある。



リア・シートが左右完全に分割された2座となり、ベンチレーションやマッサージ機能に加えて、エンターテイメント・システムも装備される超豪華仕様だ。

荷室容量は515リッター。

それではスポーティさではB5より劣るかというと、私はまったくそういうふうには思わなかった。なにしろ、あまりに走りが気持ちいいもので、ついつい調子に乗って、5メートルを遥かに超えるロング・ボディを持つこのB7で、旧碓氷峠の狭いワインディング・ロードを攻めに行ってしまったのだから。

もちろん、ライトウエイト・スポーツカーみたいにスイスイとコーナーを駆け抜けるなんてことはなかったけれど、後輪操舵システムも持つ4WDのB7は、実にニュートラルにアンダーステアもオーバーステアも出さずに、適度なロールを伴いながら賢く堅実に、といった趣でコーナーをクリアして行く。こういうスポーティさが私は好きだ。気持ちのいい走りを味わいながら、気がついたら184のコーナーをクリアしていた。これまた最近で言うと、ロールスロイス・ゴーストで奥日光の金精峠を、メルセデス・ベンツSクラスで箱根峠を走った時と同じスポーティな走りを満喫することができた。

そのほか、試乗車には21インチの鍛造ホイールとタイヤが装着されていた。

走っているうちにちょっと身体が汗をかいてきたので、シート・ベンチレーションのスイッチを入れた、つもりだった。すると、しばらくしてドアとセンターコンソールの肘掛けに乗った腕が、なんとなく熱くなってきたのにビックリ。間違ってシート・ヒーターのスイッチを入れていたのはともかくとして、なんと肘掛けにまでヒーターがついているとは、超高級車というのはかくも至れり尽くせりのものだったのね。

それはともかく、今回、B5とB7の2台に乗ることができて本当に良かったと思う。味つけの方向性を変えようとしているアルピナの〈いま・ここ〉をそのまま体感することができたのだから。私は個人的にはB7の方が好きだけれど、時代が常に変化を求めているのも真実なのだ。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■BMWアルピナB7リムジン・ロング・オールラッド 
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 5270×1900×1520mm
ホイールベース 3210mm
車両重量 2210kg
直噴V型8気筒DOHCツインターボ エンジン形式
排気量 4394cc
ボア×ストローク 89.0×88.3mm
最高出力 608ps/5500-6500rpm
最大トルク 800Nm/2000-5000rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前) 255/40ZR20
タイヤ(後) 295/35ZR20
車両本体価格(税込み) 2597万円

(ENGINE2021年8月号)

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