2021.07.23

CARS

完璧なコンパクト・セダン! 新型アウディS3のウルトラ・スムーズな走りに感動!!

8年ぶりにフルモデルチェンジして第4世代になったアウディA3シリーズが、ついに日本に上陸。まずは高性能モデルのS3セダンから試乗した。

アウディ・デザインの上手さに改めて感心

神奈川県の箱根を舞台に開かれた新型A3シリーズの試乗会には、1リッター直3ターボの30TFSIと2リッター直4ターボのS3のそれぞれスポーツバックとセダンが用意されており、そのうち2種類のモデルに乗ることが許された。最初に私にあてがわれたのはS3セダンだ。

ひときわ目立つタンゴレッド・メタリックのボディ・カラーを持つ新型S3セダンは、パッと見て、「おっ、カッコイイじゃん」と思わず目を見張るくらいスタイリッシュな外観を持っていた。かつてのアウディ・クワトロを想起させるフロント・フードの先端に設けられたスリットやフェンダーの派手な張り出しが、かなり効いている。グリルもずいぶんと大きくなって押し出しがさらに強くなった。しかし、それでいていささかも下品な印象を受けないどころか、むしろ落ち着いた優等生的な佇まいさえ漂わせているところに、アウディ・デザインの上手さがあるのだと改めて感心させられた。



運転席に乗り込むと、そこはこれまでよりもセンターコンソールが運転席側に傾いてドライバー・オリエンテッドになると同時に一気にデジタル化が進んだ空間になっていた。メーターが液晶パネルになっているのはもちろん、シフト・レバーまでもがクリック式になっている。

スタート・ボタンを押してエンジンをかけ、シフト・レバーをクリックしてDに入れ、アクセレレーターを踏み込んでいく。と、その走りだしが素晴しくスムーズなことに、まずは作り込みのレベルの高さを感じさせられた。エンジンの回り方も、ギアの繋がり方も、そしてステアリングを少し切った時のボディの動きも、すべてが自然で、ギクシャクしたところが皆無なのだ。こういうクルマは間違いなく速く走らせても素晴しいというのが私の経験値だ。

さらに、このS3セダンはシートの座り心地が秀逸だった。お尻と背中をフワッと柔らかく受け止めてくれながら、スポーティなホールド感も併せ持っている。オプションのファイン・ナッパ・レザー・インテリアが奢られた結果なのかはわからないが、普段はボルボのシートの良さを自慢している助手席のカメラマンもこれには大いに感心していた。

センターコンソールがやや運転席方向に傾いたドライバー・オリエンテッドなインテリアが新型A3シリーズの特徴だ。一気にデジタル化が進んだ操作系とディスプレイを持ち、シフト・レバーもクリック式となった。試乗車には18万円のオプション装備となるファイン・ナッパ・レザーのインテリアが奢られていた。





どこまでも賢くクールな走り

いや、シートだけじゃない、乗り心地自体がとても良かった。これまたオプションのダンピング・コントロール付きサスペンションと専用アウディ・ドライブ・セレクトのセットが奢られていたためかどうかはわからないが、コンフォートではとても快適な乗り心地だし、ダイナミックを選べば即座にスポーティな硬さに切り替わって、幅広いユーズに対応できる。もちろん、オート・モードにしておけば自動で快適にも硬くもしてくれるが、積極的に自分で切り換えた方が、より快適性とスポーツ性の幅は広くなるようだ。それぞれのモードのセッティングの巧みさは、これまでより格段に増していると思った。

2リッター直4ターボ・エンジンは310psのパワーを誇る。

それは足回りだけではなく、パワートレインも同様で、コンフォートではエンジンもシフトも節度感のあるソフトなフィールなのに対して、ダイナミックに切り換えるとダイレクト感あふれる切れ味のよい走りが楽しめる。ダイナミックにすると、サウンドも派手になって、わずかにボボボッというバックファイヤーのような音も響いていた。

タンゴレッド・メタリックのボディ・カラーも7万円のオプション。

このS3セダンで山道を走るのは本当に楽しかった。なにしろ、このコンパクトなボディで310psもあるのだから動力性能は十分以上。それでいて4WDシステムをはじめとする電子制御のセッティングが素晴しく良くできているから、コーナーでもパワーを無駄にすることなく気持ち良く駆け抜けることができるのだ。ひと昔前のスポーツモデルだったら、少しホイールスピンしたり、トルクステアが発生するのがハイパワー・モデルの証でもあったような気がするが、どこまでも賢くクールな今のアウディはそんなこれ見よがしな“速さ”とは無縁だ。これは完璧なコンパクト・セダンだと思ったけれど、唯一最大の欠点は価格だろう。なんと車両本体価格が661万円、試乗車はオプション込みで760万円だというのだ。ああ、これが500万円くらいだったらいいのに。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬


■アウディS3セダン
駆動方式 エンジン・フロント横置き4WD
全長×全幅×全高 4505×1815×1415mm
ホイールベース 2630mm
車両重量 1560kg(前軸940kg:後軸620kg)
エンジン形式 直噴直列4気筒DOHCターボ
排気量 1984cc
ボア×ストローク 82.5×92.8mm
最高出力 310ps/5450-6500rpm
最大トルク 400Nm/2000-5450rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) ディスク
タイヤ(前後) 225/40R18
車両本体価格(税込み) 661万円

(ENGINE2021年8月号)

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