2021.08.31

CARS

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これぞまさしく究極のドライバーズカー ベントレー・フライングスパーの洗練された走りを堪能する

 
新型フライングスパーも先に登場した2ドア・クーペのコンチネンタルGT同様、フォルクスワーゲン・グループのプレミアム後輪駆動用「MSB」プラットフォームを採用していることは言うまでもない。特徴は従来型に比べてホイールベースが130mm延長されていることだが、いっぽうで全長は30mmしか伸びていない。要するに伸びた分のほとんどはフロント・アクスル(前輪軸)を前方に移動したことによるものだ。おかげで重量配分が改善された上に、いかにも後輪駆動車らしい(実際にはAWDだが)ショート・オーバーハングに加え、コンパクトで上下に薄いキャビン部分(もちろん相対的なもので室内が窮屈なわけはない)と巨大なホイールが相まって、威風堂々かつ現代的でクールなプロポーションを生み出している。

滑らかだけれども、驚くほど俊敏

2基のツインスクロール・ターボをVバンク内に詰め込んだ4.0リッターV8ツインターボも同グループの高性能モデルに共通するもの、635psと900Nmを誇る6.0リッターW12ツインターボほどではないが、こちらも550ps/5750-6000rpmと770Nm/2000-4500rpmの強大なパワーとトルクを生み出しながら、軽負荷時には4気筒を停止する気筒休止システムとコースティング機能も備える。トランスミッションは同じZF製ながら先代モデルのトルコン式8段ATから換装されたデュアルクラッチ式8段自動MT(DCT)。駆動方式はアクティブAWDで、通常は後輪駆動で必要なときにだけ前輪へ駆動力を流し4輪を駆動する。0-100km/h加速は4.1秒、最高速は318km/hを誇る。8段DCTを搭載した初期のコンチネンタルGTは微速で稀にシフトショックを感じさせることもあったが、新型フライングスパーのマナーは模範的でわずかな加減速時もきわめて滑らかで、しかも右足にグッと力を込めたときの出足はベントレーにしては鋭すぎるのではないかと感じるほど鋭敏だ。





スタビリティがドライバーズカーの証

乗り心地も素晴らしい。街中などの低速でも当たりが滑らかで、滑空しているような浮遊感がある。パワートレインの振る舞いも圧倒されるほどスムーズ。それなりに車重は重いし、DCTであるにもかかわらず、ドライバーの意図とそれこそ1ミリもずれずに思ったとおりにゆっくり走れる。繰り返すが、300km/hを軽く超える超高性能車でありながら、微速をコントロールできるのは本当にスゴイこと。ササクレ立ったギクシャク感は一切ないから、いつ動き出して、いつ止まったかを同乗者にまったく感じさせない運転ができるのだ。

いっぽうで、速度が増してもヒタヒタと路面に張り付くような安定感と重厚感もある。空いた一般道から高速道路まで、フラットさを維持しつつ滑るように走る身のこなしは最近のベントレーの中では一番洗練されていると思う。実際にはヘビー級なのだが、なぜか軽快。可動部のすべてが設計通りに精密に動くのでねっとりとした重さを感じさせないのだ。3代目で新たに採用された、ダンパーだけでなくエアボリュームも可変制御する3チャンバー式本格的エア・サスペンションの面目躍如である。







大人しく後席に座っているだけではもったいない

コーナーが次々と迫ってくるワインディング路でも、腰の位置が微動だにしない能役者のように、しなやかに動きながらもロールを感じさせることなく、水平を保ったまま曲がっていく。目を吊り上げて山道を攻めるクルマではないが、4WD特有のフロントの重さを感じさせないどころか、あまりにスルスルと難なくコーナーをクリアしていくので、最も注意すべきは知らず知らずのうちにとんでもないスピードに達してしまう点だ。

V8エンジンと新しい機構を取り入れたサスペンションの巧みな制御ゆえ、「スポーツ」、「B」(ベントレー・モードでこれがデフォルト)、「コンフォート」、「カスタム」と4種類用意されているドライブモード・セレクターには事実上触る必要がない。オートモードたるBモードに入れっぱなしにしたままで、高速道路でも山道でもまったく不足はない。コースティング機能も積極的に作動する。これならどこまでも遠く、速く、安心して快適に走れる。そう感じさせるクルマこそグランドツアラーである。

V8仕様はW12モデルより車重はおよそ100kg軽いという。それでも2.4トンを超える大型サルーンを“軽快”と評するのは奇妙な感じだが、実際にそう感じるのだから仕方がない。さらにV8ツインターボそのものも清々しく軽快に回る。どんな場合も不足を感じない逞しさはW12と変わらないが、大波が押し寄せるような重厚な滑らかさのW12に対してV8はより緻密で優雅な感触である。この精度の高さが軽快感を生み出し、軽やかさがスポーティさを強調する。

この10年でフライングスパーのステアリング・ホイールを自ら握るオーナーが増えたとベントレーは言うが、確かにいかに快適とはいえ大人しく後席に座っているだけでは何とももったいない。ベントレーは100年も前からドライバーズカーなのである。





ベントレー・フライングスパーの詳細はこちらから

文=高平高輝 写真=郡 大二郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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