2021.10.22

LIFESTYLE

南米コロンビアの内戦からインスパイア! 10代ゲリラ戦闘員の狂気を描く『MONOS 猿と呼ばれし者たち』の衝撃

コロンビアの内戦をベースにしたパワフルな劇映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』。まるでドキュメンタリーを見るかのような狂気の世界を目撃する。

息を呑むほどの映像美

眼下に雲海が広がる山岳地帯。そこで無邪気にブラインド・サッカーに興じているのは、10代と思しき8名の男女である。その屈託のない笑顔からは想像がつかないが、彼らはゲリラ組織の兵士たち。身代金目的で誘拐したアメリカ人女性の監視・世話役を任されているのだ。



南米コロンビアで撮影された劇映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』のオープニングである。カメラが捉えた標高4300mの山岳地帯と未開のジャングルの映像は息を呑むほど美しいが、一方で集団生活を行う子供たちが次第に狂気へと駆り立てられていく様は、どこかドキュメンタリー映画を観るような、生々しい凶暴性に満ちている。



本作の物語は、2016年の和平合意まで50年以上も続いたコロンビアの内戦からインスパイアされたもの。実際にゲリラ戦闘員の多くが、貧しい農家出身の子供たちだったという。そんなコロンビアの暗い歴史が、作品で描かれる世界をリアルなものとしている。

本作で描かれる強烈なイメージの数々(とりわけ3人の兵士が荒れ狂う川に流される場面が凄い!)は、鑑賞後もしばらく脳裏から離れないことだろう。

『MONOS 猿と呼ばれし者たち』
監督はエクアドル人の父とコロンビア人の母を持つアレハンドロ・ランデス。本作が長編劇映画2作目となる。監督自身、ウィリアム・ゴールディングの小説『蠅の王』と、映画『地獄の黙示録』のベースにもなったジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』に影響を受けたと語っており、それらの作品へのオマージュが映画の随所に見受けられる。ちなみに出演俳優の多くがオーディションで選ばれた演技未経験者で、中南米最大のゲリラ組織「FARC」の元戦闘員も出演している。世界各国の映画祭で絶賛され、30部門で受賞を果たした。102分。配給:ザジフィルムズ。10月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2021年11月号)

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