そこで一転、0-100km/h加速が5.3秒というモンスターSUV、GMCタイフーンに乗り換えた。「4.3リッターV6+ツインターボを積むタイフーンは1992年、93年の2年間だけ作られたSUVで、これはカッコイイなと。中古を2000年に購入しました。ダッシュは強烈で、ド・ドドンパ(富士急ハイランドのジェットコースター)みたいだと思いました」タイフーンも2台乗り継いだ。「乗り継ぐっていうか、最初に買ったやつは前のオーナーが4WDからFRに改造してたんです。乗り始めてすぐになんか違うな? と」購入した店は非を認め、全額返金してくれたという。
「2台目はちゃんと4駆だったんですが、よく壊れましたね」2005年にフォードが初代を彷彿とさせる新型マスタングを発表すると、心が動いたという。アメリカ映画で憧れたマスタングの面影を見たのかもしれない。「これは03年にネットで写真を見たときから、惹かれました。04年には並行輸入屋さんに予約して、05年の発売と同時に手に入れました。ブラック・ボディにリア・ウィングを付けて、内装は真っ赤なレザー。これは一生乗りたいなと思うほど気に入っていました」ところが、マスタングに乗り始めた頃、特にプライベートが残念な感じになったのだという。「自分の歴史のなかで最もデート向きだと思うクルマを手に入れたのに、恋愛が全然うまくいかない。なんで? みたいな。クルマのせいじゃないんですけどね。2010年頃から乗り換えようと思い始めました」漆黒のモパー10「無駄のなかにこそ美学がある」 モパー10を2012年に購入、現在まで乗っている。「ずっとネットで検索してて、2年落ちで走行450kmというのを見つけたんです」こだわりの人ゆえ、購入してからも手を入れた。「ヘッドライト周りをシルバーにして、ステッカーを貼り、車高をちょっと上げてあります」モパー10を自分で運転して移動している。車内ではセリフを大声で言ったり、ミュージカルのときは歌の練習をすることもあるという。いまもモパー10 の走り、スタイル、どれも気に入っているという。

「5.7リッターV8なんて無駄って言えば無駄じゃないですか。でも、このクルマは無駄に対して全然遠慮がないところがいい。無駄のなかにこそ美学があると思うんです。また、いずれなくなる文化に触れていることで“いまを生きている”という実感も持てる。将来、孫に“おじいちゃんが乗ってたクルマはガソリンの爆発で動いてたの? カッコイイ~”なんて言われたら面白いじゃないですか」武田さんにとってクルマとはなんですか?「う~ん、自分の馬かな。乗りこなせないとカッコ悪い。子供と大人の境目でもある。人目に触れる所有物だから、どのクルマにどんな状態で乗っているかで、その人の趣味や主義がわかる。男がそこに精一杯の贅沢しなくてどこにするんだ?って、僕は思います」
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文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭 スタイリング=伊藤伸哉
武田真治、1972年北海道出身。1989年「ジュノンスーパーボーイコンテスト」でグランプリを受賞し、翌年俳優デビュー。「NIGHT HEAD」や「南くんの恋人」など話題作に出演し、注目を集める。1995年、蜷川幸雄演出の舞台「身毒丸」では舞台初主演。映画「御法度」(大島渚監督)では日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞をダブル受賞。ドラマ、映画、舞台と多方面で活躍。また、サックスプレイヤーとしても「Blowup」でデビュー後、数多くの作品をリリース。近年ではNHK「みんなで筋肉体操」が話題になり、2018年、2019年と2年連続で「NHK紅白歌合戦」に出場。2020年は芸能生活30周年を記念してアルバム「BREATH OF LIFE」を9月9日にリリース。
(ENGINE2021年11月号)
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