コブラの生みの親でありGT40の育ての親でもあるキャロル・シェルビーは晩年、こう語っている。「シェルビー・アメリカン設立には3人のキープレイヤーがいた。その3人とはピート・ブロック、フィル・レミントン、そしてテストドライバーのケン・マイルズだ」
1918年11月1日、ケン・マイルズはイギリス・バーミンガム近郊で生まれた。レーサーを夢見ていた彼は、16歳からメカニックとして働き出すが、第二次世界大戦の勃発や資金不足で、その夢を叶えられずにいた。
ところが、友人の勧めで51年に妻子とともにカリフォルニアへ移住したことが転機となった。メカニックをしなが らMG TDを改造したオリジナル・マシンR1でSCCAに挑戦した彼は、数多くの勝利を記録。その腕を買われてフェラーリ375MM、ポルシェ550スパイダーなど当代一流のマシンを充てがわれ、活躍するようになる。
その時レーサー仲間として出会ったのが、キャロル・シェルビーだ。レーサー引退後に自身のコンストラクター、シェルビー・アメリカンを設立すると、テスト兼ワークスドライバーとしてマイルズに声をかけたのである。
65年からシェルビーがフォードのワークス活動を請け負うようになると、46歳のマイルズもチームの一員としてGT40をドライブ。開幕戦デイトナ・コンチネンタル2000kmではGT40に記念すべき初勝利をもたらした。
そんなマイルズのキャリアがピークを迎えたのは66年のことだ。開幕のデイトナ24時間で圧勝、続くセブリング12時間でも逆転優勝を飾った彼は、前人未到の3大耐久レース完全制覇の期待を背負ってル・マンに臨むこととなる。
迎えた決勝レース。デニス・ハルムと組んだマイルズはレースの折り返しから主導権を握りトップを独走する。しかしながら3台並んでのフィニッシュにまつわる混乱で2位とされ、偉大な記録が達成されることはなかった。
失意のマイルズはレースを離れ、Jカーと呼ばれたGT40の後継車の開発に専念する。しかし66年8月17日、リバーサイドでのテスト中に突如コースアウト。炎上するマシンの中で47年の生涯を閉じた。
そうした経緯もあり、ケン・マイルズの名は輝かしいGT40の影に隠れ、あまり語られることはなかった。しかし死後から半世紀以上が過ぎた今、『フォードvsフェラーリ』を通じて彼の数奇な人生にスポットが当たったことは、素直に喜ばしく思う。
文=藤原よしお
(ENGINEWEBオリジナル)
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