2022.09.29

CARS

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フェアレディZの日産がEVのアリアにこめたメッセージとは? アリアB6にモータージャーナリストの島下泰久さんが試乗!!

新時代の到来を象徴する日産の電気自動車、アリア。革新的なデザインで、洗練された走りを予感させるアリアに、モータージャーナリストの島下泰久が試乗した。

Zにも感じた”日産ならではのパッション”がある!

いよいよ街を走り出した日産のBEV=電気自動車、アリア。最初にそのステアリングを握った際、安堵に似た気持ちとともに思ったのは「これは、まさに自動車メーカーが、日産が作った電気自動車だ」ということだった。



折しも同じようなタイミングで日産はフェアレディZのフルモデルチェンジを行なったばかり。最新鋭の電気自動車が、高出力内燃エンジンを積むピュアスポーツカーと同時に並び立つ辺りは、日産というメーカーの持つ多様性が象徴的に示されていると言っていい。

しかも、そこに違和感が無いのは、正反対かに見える両車の根底に、まったく同じパッションが漲っているからだろう。アリアB6に改めて乗ってみて、強くそう感じたのである。

アリアとほかのBEVとの違いとは?

ワンモーションのフォルムに大径タイヤを組み合わせた、未来的でありまた繊細なアリアのフォルムは、ひと目で新しい時代のクルマだと意識させる。キーを持って近づくとドアが自動的にアンロック。そしていざ室内に入れば、大型タッチディスプレイの採用もあり物理スイッチの数が減らされたインテリアは、全体的にはとてもスッキリとした印象で、自然と運転に集中させてくれる。



早速、セレクターレバーをDレンジに入れて、静かにクルマを発進。ここでまず嬉しくさせるのはタイヤの転がり出すその瞬間がきわめて滑らかなことだ。BEVには、アクセルペダルを踏み込むとトルクが一気に湧き出して蹴飛ばされるように加速していくというイメージ、きっと少なくないだろう。実際、そういうクルマは無いわけではないのだが、アリアの場合は右足の力加減に応じて、欲しい分だけの力がじわりと発揮されるから、スムーズに、それでいて力強く走り出すことができる。



この振る舞いの良さは、街中での走りをとても上質なものにしている。もちろん、それには騒音、振動がきわめて小さいことも貢献しているのは言うまでもない。アリアが使う巻線界磁モーターは、まさにこの点で特に有利なのだ。

高速道路に入り、更にアクセルを大きく開けていくと、やはりとてもリニアリティの高い加速感に気分が昂揚してしまう。電気モーターの特性そのままだと、加速の立ち上がりは鋭い一方、その先の勢いがないという走りになってしまうが、アリアはその辺りのドライバビリティの煮詰めが、とても入念に行なわれていると感じる。



特にいいのが、息の長い伸び感。内燃エンジン車で言えば、高回転域に向かってパワーがますます高まっていく感覚で、まるで速度上昇がどこまでも続いていくかのようなのだ。もっとアクセルを踏んでいたくなる。そんな走りが実現されているのである。

◆日産アリア特別ページ CLUB ARIYA

フェアレディZをつくる日産だからできること

改めてスペックに目をやると、アリアB6のフロントに積まれた電気モーターは最高出力218PS、最大トルク300Nmを発生するとされる。正直、これを超える出力を持つBEVはいくらでもあるが、その数字の大きさは必ずしも気持ちよさとイコールではない。人間の意に沿った気持ち良い加速感は、必ずしも絶対的な速さとイコールではない、ということだろう。



電気モーターは制御によってどのような特性も作り出せるが、それはつまり、いかに制御するかが問われるということもである。日産にはそれこそフェアレディZのような生粋のスポーツカーの長い経験と実績があり、何がクルマの気持ち良さ、楽しさなのかを熟知している。アリアの走りにも自然と、それがにじみ出ているわけだ。

電気モーター駆動のメリットを活かしたe-Pedal Stepも装備されている。アクセルオフで回生ブレーキによる減速が行なわれて、ペダルの踏み換えの少ない走行が可能になるのだが、その制御も絶妙で、アクセルを戻した途端に前につんのめるように減速感が立ち上がったりすることはない。電気モーターのメリットは活かしているが、ネガは徹底的に排されている。

街中、そして高速道路での緩やかな加減速が続き時々完全停止に至るような渋滞の中では特に、このe-Pedal Stepの有り難みは、大きかった。ラクだというだけではない。クルマとの一体感が高く、そこに小さな歓びを感じられるのが嬉しい。



スポーツカーの話を引き合いに出したが、あるいはそのエッセンスをもっとも強く感じられるのは、いわゆるハンドリングだろう。BEVのアリアは駆動用バッテリーを床下に搭載するため重心が低く、前後重量バランスも54:46と優秀。身のこなしにはその素性の良さが表れていて、同じ前輪駆動でも内燃エンジン車では絶対出せない、軽やかな旋回性を味わえる。

素性が良いから、というだけではないだろう。路面やタイヤの状況を丁寧に伝えるステアリングフィールは上々だし、操舵していった時の適度なロール感も心地良い。クルマとの優れた対話性は、仮に目をつぶって乗っても「これは日産車だね」と伝わるものがある。

◆日産アリア特別ページ CLUB ARIYA

人に寄り添う日産のプロパイロット2.0とは?

ステアリングを握る歓びとは対極にあるようにも思えるプロパイロット2.0にすら、そんな日産車らしさは濃厚だ。高速道路や自動車専用道で、クルマが車速や前走車との車間、車線維持をアシストして、ハンズオフでの走行を可能にするのがその機能のハイライトだが、実際に使ってみてわかるのは、場当たり的ではない、熟練ドライバーが操縦しているかのように、的確に先を読み手前からじわりと操作していく、流れるような走行感覚を実現しているということだ。人に寄り添い、不安感を抱かせることなく、まさにこちらが思う通りにクルマが走っていく。そんな感覚と言える。



もちろん、それはパワートレインやシャシーといったハードウェアの高い完成度があり、その上で制御が緻密で正確だということなのだが、何より重要なのはクルマをどう走らせるべきかという理想が明確であること。それがあるからこそ、まさにハンズオフで走らせていても尚、プロパイロット2.0はそこに日産車らしさを感じさせるのだ。

アリアが、日産という自動車を作り続けてきたメーカーが生み出したBEVだというのは、要するにそういう意味である。日産にしてみれば、パワートレインが何であれクルマとして目指す姿に変わりはなく、BEVだからといって特別なこと、過剰な演出などをする理由はない。ただぞれぞれの利点や美点を活かして、理想のかたちを追求する。それだけのこと。クルマの電動化、知能化といわれる中、その最先端に居るアリアだが、根底にはそれこそフェアレディZと変わらない思いが通い、同じパッションが漲っているのである。

文=島下泰久 写真=望月浩彦

◆日産アリア特別ページ CLUB ARIYA


■日産アリアB6
駆動方式 フロント・モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 4595×1850×1655mm(プロパイロット2.0搭載車は1665mm)
ホイールベース 2775mm
モーター最高出力 218ps/5950-13000rpm
モーター最大トルク 300Nm/0-4392rpm
定格電圧/電池総電力量 352V/66kWh
一充電走行距離(WLTC) 470km

◆日産アリア特別ページ CLUB ARIYA


(ENGINEWEBオリジナル)

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