2022.12.16

LIFESTYLE

「デザインとITの力で、防災業界に変革を起こす」いまや防災グッズもおしゃれでスマートな時代!

白一色が潔く美しい消火器とインテリアブランドのダルトンの防災バッグ。

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日本は世界でも有数の自然災害国のひとつ。身近で身を守りながらも忘れがちな防災グッズをデザインで進化させたセレクトショップが話題に。

箪笥の奥に眠る家庭用防災グッズ

天災が極めてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の転覆を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう──寺田寅彦が、関東大震災後に防災対策不備の要因を指摘した一文だ。これが「天災は忘れた頃にやって来る」という警句となった。

複数のプレートの複雑な重層の上に浮かぶ日本列島は、大昔から地震の災厄にたびたび見舞われてきた。また、アジアンモンスーンの東端にあることから台風は毎年爪痕を残す。世界的に防災意識は高いほうであり、耐震性の強化や避難場所の充実など、インフラの改良と整備は確実に進んでいる。とはいえ、備えは決して万全ではない。例えばより身近な家庭用の防災グッズ。職場や役所から配布されたものが、いつの間にか箪笥の奥に眠っている家庭も少なくないだろう。



防災用品に特化したECサイト

そうした状況のブレークスルーとして2020年にオープンしたのがSAIBOU PARK。防災用品に特化したECサイトだ。手がけたのはサイボウデジタル株式会社代表取締役CEOの奥村祥国氏で、「デザインとITの力で、防災業界に変革を起こす」という熱意が源だった。ファッション業界でキャリアを積んでいたが、東日本大震災で義母が住む地域一帯が壊滅的な打撃を受けたことがきっかけで、関心を持つようになった。その後、総合防災企業の代表を務める知人との再会から、“防災×IT×デザイン”という起業の絵図を描き始める。

「もっとライフスタイルに合ったものをつくり、販売したいと考えました」と語る奥村氏。おしゃれで持ちやすく、環境に負荷をかけないこと。さらに収納しなくてもインテリアになじむことをセレクトの基準に、ユニークなアイテムをラインナップしている。たとえば初めて自社で開発したフロートライフリュックは、見た目はタウンユースタイプだが、再生ポリエステルを使用し、救命胴衣の新基準を上回る強度と浮力を備えている。他にも壁に飾るアートと組み合わせたサニタリーグッズなど、平時の生活に溶け込みながら、有事に備えるアイテムが揃う。

先に挙げた寺田寅彦は「人間も何度同じ災害に会っても決して利口にならぬものであることは歴史が証明する」と嘆いた。それでもわれわれは少しずつ進化している。日本発のイノベーティブな防災グッズが、小さくとも見逃せないその一歩であると思いたい。

文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫

(ENGINE2022年12月号)

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