2022.12.10

LIFESTYLE

いま話題のスポット! 東京湾最大の無人島「猿島」が面白い!! 無人島の暗闇で楽しむアート・イベントに出かけてみた

HAKUTEN CREATIVE Tree says「 」大戦末期に急拵えで作られた砲台跡に木々が生い茂る。

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戦時の要塞跡が遺る猿島は、東京湾に浮かぶサンクチュアリ。ここを舞台に開催されているイベントが話題に。闇夜のインスタレーションが五感を刺激してくれる。

東京湾最大の無人島、猿島

人がいない島の夜は闇が主役だ。陽が波間に消えると、そこかしこに目に見えぬ精霊が息づくような神秘性をまとう。近代社会の成立後、冒険小説、ミステリーの書き手が無人島を繰り返し舞台に選んできたのも、こうした闇夜への畏怖や憧れと無縁ではないだろう。

横須賀市の前に広がる海に、東京湾最大の無人島、猿島がある。名前の由来は、白い猿の精霊が現れ、漂流する日蓮上人に航路を指し示して助けた故事による。その後、神社が建立されて祭礼の時以外は渡ることは難しくなった。さらに江戸後期には開国を迫る諸外国の脅威から守る要塞が築かれた。軍事的な存在価値はそのまま太平洋戦争まで引き継がれる。三笠桟橋からフェリーで10分ほどの距離にありながら、宗教的、そして地政学的な位置づけにより長く禁忌の島だった。



芸術で異世界をインストール

現在は海水浴やバーベキューなどが楽しめる身近な行楽地として多くの人が訪れるが、夜は誰もいなくなり、本来の姿を取り戻す。無人となる島内の中で開催されているのが、今年で3回目となる「Sense Island-感覚の島」だ。島内に設置された20のインスタレーションを暗闇の中で巡り観る。携帯電話は電源オフが原則。照明は最小限に抑えられ、頼りになるのは小さな懐中電灯、一部の作品から発せられる光と月明りのみ。いやおうなく五感は研ぎ澄まされ、自然にアートと向き合うことになる。

作品は映像、音をデジタルで制御しつつも、コウモリやトンビ、海洋生物や貝殻、樹木などをモチーフにしたものが多い。闇がもたらす宙づりにされたような不安によってアートと鑑賞する側の境界は曖昧となり、日常と自然、現在と過去がシームレスにつながる錯覚を抱く。

世界中の島の多くに、今もアニミズムが生き続ける。インスタレーションのほか、舞踊や音楽、ワークショップなども予定されている本イベントは、アートを媒介にして土地の精霊に触れられる異世界体験といえるだろう。都心から1時間たらず、小さな冒険がもたらす大きな興奮を堪能してみたい。

■「SENSE ISLAND-感覚の島-暗闇の美術島2022」12月25日(日)までの金・土・日・祝日に開催。



文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫

(ENGINE2023年1月号)

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