2023.02.03

CARS

クルマ好きの心を捉えて離さないスポーツカー、アルピーヌA110はどう変わるのか? パリ〜レ・ジュリス〜ディエップを回って見えてきたアルピーヌの未来【前篇】

アルピーヌのコンセプトモデル、アルペングロー

全ての画像を見る
F1とWECというトップ・カテゴリーのレースに参戦しながら、市販車メーカーとしても孤高のスポーツカー、A110を生産するアルピーヌ。その生れるところを訪ねて、フランスを旅してきた。エンジン編集長のムラカミがリポートする。

advertisement


パリ・モーターショーから旅は始まった

2022年はENGINE、そして私にとってアルピーヌとともに過ごした年だった。それもクルマ、というよりブランドとしての。というのも、春から年末にかけて、日本全国に19拠点あるアルピーヌ・ディーラーのすべてを回るトーク・ショー・ツアーを繰り広げてきたからだ。

パリ・モーターショーのアルピーヌ・ブースに展示された4台。未来のWEC用マシンかと見紛うプロトタイプの名は“ALPENGLOW”。モノポストのコクピットの両側に水素燃料タンクを持ち、ミドシップに搭載された水素パワートレインで後輪を駆動する。将来の市販車とレーシングカーのイメージをちりばめたコンセプト・カーだ。

これはそもそも、2019年から21年までの3年間、本誌恒例のホット100ランキングでアルピーヌA110が3連覇を成し遂げたことを記念して始めたものだった。ところが、その途中で22年のホット1にも輝いて、4連覇という前人(車?)未踏の快挙を達成。あたかもアルピーヌ祭りみたいな年になったのだ。

そんな中で実現したのが、パリ・モーターショーを皮切りに、アルピーヌの生れるところを訪ねる旅だった。世界には現在、ヘッドクォーターのあるパリ近郊のブローニュ=ビヤンクールを除いて、アルピーヌの生産拠点が4カ所ある。そのうち、F1チームのシャシー工場がある英国のエンストーンを除くフランス国内の3カ所、すなわち、今もA110の生産工場があるアルピーヌの聖地ともいうべきノルマンディ地方のディエップ、市販車のイノベーション・センターがあるパリ郊外のレ・ジュリス、そして、F1チームのエンジン工場がある同じくパリ郊外のヴィリー=シャティヨンに行った。そこで見て、聞いたことを、空気感も含めてそのまま書くことにしたい。

輝く山の頂きと彗星

まずはパリ・モーターショーのアルピーヌ・ブースから。4台展示されたクルマのうち、なんと言っても一番目立っていたのが、まるで未来のWECマシンのような外観を持った「アルペングロー」だ。水素を燃料とするパワートレインを搭載した、将来の市販車とレーシングカーのスタディとしてつくられたプロトタイプで、車名は造語ではなく、「山の頂きが朝日や夕日を浴びて一瞬赤く輝く様子」を指す登山用語だという。



横に立つのはチーフ・デザイナーのマルク・プーラン氏。デザイナー仲間のイラストを使って仕立てたというTシャツもオシャレなスマート・ガイである。

もっとも、担当したチーフ・デザイナーのマルク・プーラン氏によれば、「コメット(彗星)をイメージしてデザインした」のだそうで、だからフロント部分は赤く燃え、リアには長くたなびくような尾があって、そのリア・エンドは冷たく凍っていることを透明の素材を使って表現したのだとか。この若手デザイナー、服のセンスもなかなかで、才能あふれる人物とみた。で、経歴を訊いてみると、なんとアルピーヌに来たのは今年で、これが初仕事なのだとか。前職は? と訊いたら、これまた驚きの「フェッラーリ」だって。なにをデザインしたの? と畳みかけると、「君たち日本人だよね。ならばJ50はよく知ってるでしょ」という答えが返ってきた。なるほど、あのフェラーリの日本上陸50周年を記念して10 台のみがつくられたスペシャルなロードスターをデザインしたのが彼だったのなら、このアルペングローがスーパーカーみたいにイケてる理由もよくわかる。次のA110は君が手掛けるのか? と訊いたら、「ぜひ、やりたいね」とニッコリ笑ったから、これは大いに期待できるゾ、と早くも楽しみになってきた。

で、そのA110の未来像に繋がると思われるのが、F1マシンや、今年、日本で世界ローンチされたA110Rとともに飾られていた「A110エテルニテ」と名づけられたプロトタイプだったが、その詳細については、次に行ったレ・ジュリスで聞くことができた。

◆「パリ〜レ・ジュリス〜ディエップを回って見えてきたアルピーヌの未来」この続きは後篇で!

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=アルピーヌ・ジャポン/村上 政



(ENGINE2023年1月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement