2023.04.30

LIFESTYLE

いま、マンション・リフォームが面白いことになっている! 若き建築家たちが自邸のマンションで「土間」に注目する理由とは?

築18年3LDKのマンションを「土間」が見違えるように変えた!

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マンション・リフォームに土間を取り入れる事例が増えている。若き建築家たちが自邸に取り入れた温故知新の魅力とは……

室内にバルコニーがあるかのような

西洋建築において、パブリックとプライベートは躯体の壁で単純明快に分けられている。一方、伝統的な日本家屋ではその境界は複雑で曖昧。縁側、濡れ縁、そして土間と、屋内と屋外がゆるやかにつながる空間が存在していた。

住環境の変化により、日本の家からこうした仕様は減少の一途をたどってきた。LDKという枠に収まらない余白は、確かに効率や資産という数字では測り切れない。だが、興味深いことに日本家屋からはもっとも遠いマンションで、こうした空間性が脚光を集めつつある。



築50年以上のマンションをリフォーム

千葉県に住む高橋大樹さんは、奥さん、生まれて間もないお子さんとの3人暮らし。住み替えにあたって築18年3LDKのマンションを購入した。三方向に開口部があることが気に入った理由。自身もゼネコンで設計を担当していることから、自ら図面を引き、大きなワンルームへの変更を提案。そして玄関のモルタル仕上げを室内まで伸ばす仕様に決める。「土間で外との境界を緩やかにしたかったんです」と高橋さんは語る。結果的に大空間が陥りがちな単調さは回避され、室内にバルコニーがあるようなメリハリと広がりを生んだ。



辻繁輝さんも建築家であり、同時に不動産事業やインフルエンサーもこなす起業家。賃貸物件への不満から中古マンションを購入してのリノベーションを考えた。選んだのは新宿の大通りに面した築50年を超えるマンション。土間を取り入れたのは、人が集まるコミュニティスペースをつくりたかったからだという。

「玄関で靴を脱いで『お邪魔します』では、気軽に訪問しづらい。そこで昔ながらの土間を取り入れることにしました」

玄関からそのまま入れるオープンキッチンにはスツールが並べられ、バーのカウンターのよう。起業家仲間がPCを持ち込んで仕事をしたり、友人同士でお酒を楽しんだりと使い方はさまざま。41.6平方メートルのコンパクトな空間に、2年余りで千人を超える人が訪れたというから驚く。

高橋さんも辻さんも30歳を超えたばかり。特に日本家屋に対する憧れはなく、それぞれライフスタイルに合わせた家づくりを模索するなかで土間にたどりついた。見出したのはその現代的な機能性と交流の場としての可能性。日本の知恵と感性が育んだ伝統的な空間は、暮らしを次の地平へ導く底力も秘めているようだ。



文=酒向充英(KATANA) 写真=傍島利浩

(ENGINE2023年5月号)

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