『ENGINE』8月号では「2023年、推しの1本はこれだ!」をテーマに時計を大特集(前篇)。編集部が信頼する時計ジャーナリストと目利きたちでエンジン時計委員会を結成し、時計好きとしての原点に立ち戻り、2023年のイチオシの時計について、その熱い想いを打ち明けてもらった。
今回はシャネルから数量限定で発売された、ブラックとホワイトが粗い画像のピクセルを思わせる「J12 サイバネティック」を紹介する。
世代を超えた名作だ
柴田 充(時計ライター)「J12」にはいまも故ジャック・エリュの精神が宿る。アーティスティック・ディレクターとして半世紀以上にわたってシャネルのCFや広告ビジュアルを手がけ、プライベートではベントレー・コンチネンタルS1を所有し、カスタム・バイクやヨットをこよなく愛した。そして自らの着けたい時計に思いを巡らした時、高耐性セラミックに着目し、不変の美を「J12」にもたらしたのである。そうした新素材の可能性を開拓する意思は受け継がれ、新作はSFの世界観に着想を得て、ケースの右側はホワイト・セラミックをピクセル状に変形させた。大胆な発想と実現する卓越した技術力には脱帽だ。そして名作こそ世代を超えて作り上げていくことをあらためて感じさせる。さすがシャネル様!
高木教雄(時計ジャーナリスト)説明など、不要! 見た瞬間、これほど衝撃を覚えた時計は久しくなかった。アイコンである「J12」をポリゴン化するなどという極めて大胆な表現は、実にシャネルらしいし、シャネルにしか許されない。実際に他のブランドのPR担当者たちから「うちでは出来ない」「さすがシャネル」「シャネルは、これくらいやってくれなきゃ」という声が聞かれた。まさに、同感である。ブラック&ホワイトのセラミックの無機質感は、レトロ・デジタルな表現にまさに向く。カットしたブラックケースと、それとは別に設えたポリゴン状のホワイトのケースピースとを、寸分の隙もなくピッタリとつなぎ合わせられる成形技術の高さに敬服! まさにすべてのテクニックは美に殉ずる、である。ピクセル模様が楽しい
本間恵子(ジュエリー&時計ジャーナリスト)「J12」はアクティブに使えるタフなエブリデイウォッチの決定版だ。軽いし、頑丈だし、バックルがよくできているので装着しやすい。2019年にリニューアルされ、ディテールが格段に向上したのもいい。このモデルを実際に着けてみると、袖口からテトリスみたいな白いピクセル模様が顔を出し、何とも楽しい見映え。AIやメタバースが世界を席巻し、デジタル環境が急激に変化していく今の時代を象徴しているかのようなデザインだ。10数年後、誰もが脳にチップを埋め込むのが当たり前になった頃「あー、こういう感じ懐かしい!」と再び火がつくのではないかと予測。それにしてもセラミックの白と黒の接合部分、よく継いだなあ。難しいよね、これ。シャネル/J12 サイバネティック
SFの世界、宇宙、時間旅行から着想したという「シャネル インターステラー カプセル コレクション」のひとつがこのブラックとホワイトが粗い画像のピクセルを思わせる新作。ケースはブラックとホワイトの高耐性セラミックケースをカットして組み合わせたもの。ダイアルとサファイアクリスタルのベゼルにも同じピクセルパターンを用いる。自動巻き。パワーリザーブ約70時間。ケース直径38mm、50m防水。201万3000円。数量限定。問い合わせ=シャネル(カスタマーケア) Tel.0120-525-519写真=宇田川 淳
(ENGINE2023年8月号)
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