2024.01.14

CARS

ウラカンはどんなランボルギーニだったのか? 明らかにガヤルドとはまったく違う、新たなスーパーカーの走りの地平を切り開いた!【『エンジン』蔵出しシリーズ/ランボルギーニ篇】

2014年秋についに日本上陸を果たした新型ランボルギーニ・ウラカンLP610-4。

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雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている「蔵出しシリーズ」。今回のランボルギーニ篇で取り上げるのは、2014年の秋についに日本上陸を果たした新型ランボルギーニ・ガヤルドだ。この年のゴールデン・ウィークに南スペインで開かれた国際試乗会から4カ月。早くも上陸した国内初試乗会からの報告記事をお送りする。


「日本上陸したランボルギーニ・ウラカンLP610-4に富士スピードウェイで乗る! ワクワク感と安心感」ENGINE 2014年11月号

ガヤルドの後継車として11年ぶりとなる全面改変をうけたベビー・ランボルギーニは、すでに世界中で空前の大人気となっているらしい。なんと今すぐに注文しても、納車は来年末になるほどの行列ができており、国内だけですでに200台ほどのオーダーがあったのだとか。



乗り出し価格で3000万円を超える文字通りのスーパーカーがこんなに売れるのだから、日本経済もまだまだ捨てたものではないとも言えそうだが、それだけじゃない。どうせ3000万円以上出すなら、もう少し足して5000万円のアヴェンタドールを買った方がいい、と考える御仁もおられるのだそうで、なんとウラカン人気に煽られて兄貴分のアヴェンタドールの人気まで再燃しているというから、さぞかしランボルギーニは笑いが止まらないに違いない。


それはともかく、今回、日本上陸したウラカンLP610-4を改めて眺めてみて、クルマ好きでお財布に余裕さえあったら、これが欲しくなるのは至極当然だと素直に思わざるを得なかった。とにかく、老若男女を問わず、誰が見たって、これはカッコいいと思うであろう恰好をしている。街でたまたま見かけることがあったら、それだけでウキウキして、1日がちょっと幸せな気分になるのではないか。そんなスーパーカーならではのオーラを放っている。

ジェット戦闘機のそれを模したウラカンのコクピット。エンジン始動はセンター・コンソール上の赤い蓋を持ち上げ、ボタンを押して行う。その後ろのレバーはリバース・ギア・スイッチだ。ステアリング・ホイールのスポーク下部には、新兵器となる“ANIMA”の切り換えスイッチが付く。


そりゃ、私だってお金さえあったら、すぐにでも欲しいよ、コレ。でも、お金がないから、モテない男が嫉妬まじりに美人はすべからく性格が悪いと決めつけるが如く、こんなにカッコいいクルマはきっと乗りにくいに違いないとか、買ったら苦労が尽きないとか、ネガティブな文句のひとつも囁いてみたくなるのだ。

ところが困ったことに、これが乗ってみると、目からウロコがぱらぱらと落ちるように、恐ろしく乗りやすいクルマであると悟らされるであろうことを、南スペインで開かれた国際試乗会に参加した私は知っている。



610馬力を、まるで魔法の杖を手に入れたかのように自由に操ることができる快感。驚くほどの安定感。サーキットを全開で走っていても、公道を法定速度で走っていても、このクルマの走りにはワクワク感と安心感が同居していた。そして今回、富士スピードウェイを舞台にした試乗会で、改めてこのクルマの才色兼備ぶりを確認することになったのだ。



新しい走りの地平を切り開いた

試乗はインストラクターのクルマを先頭にして、数台のウラカンの試乗車がその後ろを隊列を組んで走行する形式で行われた。南スペインでアスカリ・サーキットを走った時も同じ形式だったが、違うのは、スペインではほぼ全開状態で周回を重ねたのに対し、今回はまずパイロン・スラロームなどの体験から入って、次にパイロンを取り払った後も、インストラクターがかなり抑え気味に走ってスピードを規制していたことだ。

エンジンはミドシップに縦置きされる。

正直言って、その程度では、まるで何も起こらないくらいにウラカンは安定している。状況に応じてストラーダ(公道)、スポルト(スポーツ)、コルサ(レース)のいずれかを選択し、アクティブにクルマ全体の特性を制御する新しいドライブ・モード・システムの“ANIMA”で、たとえコルサ・モードを選んでいても、リアが1cmでも滑り出すような領域にはまるで入らない。


しかし、それで退屈だったかというと、決してそんなことはなかった。カーボンファイバーとアルミニウムを組み合わせたハイブリッド・シャシーが醸しだす剛性感の高さとボディの身軽さ。直噴とポート噴射を併用する5.2リッターV10の素晴らしい吹け上がりの感触と猛獣が襲いかかるような大迫力。ランボルギーニ初のツイン・クラッチ式7段自動MTの驚くべきスムーズさとダイレクト感。電子制御油圧多板式クラッチを使った新しいアクティブな4WDシステムの魔法のような安定感とダイナミック性能の高さ。

そうしたすべてが相まって、明らかにガヤルドとはまったく違う、新たなスーパーカーの走りの地平をウラカンは切り開いたのだと実感することができた。ゆっくり流しても、全開で限界走行しても、常にワクワク感と安心感が同居していること。それこそがウラカンの走りの真骨頂だと私は確信した。


文=村上政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬


■ランボルギーニ・ウラカンLP610-4
駆動方式 エンジン・ミド縦置き4WD
全長×全幅×全高 4459×1924×1165mm
ホイールベース 2620mm
車両乾燥重量 1422kg
エンジン形式 アルミシリコン合金製直噴V10DOHC
排気量 5204cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 610ps/8250rpm
最大トルク 57.1kgm/6500rpm
トランスミッション ツイン・クラッチ式7段自動MT(LDF)
サスペンション(前)
サスペンション(後)
ブレーキ (前後)通気冷却式カーボン・セラミック・ディスク
タイヤ (前)245/30R20、(後)305/30ZR20
車両本体価格 2970万円(税込)

(ENGINE2014年11月号)

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