2024.09.18

CARS

530万円はバーゲン価格だった! 159 のスポーティグレード、TIはどんなアルファ・ロメオだったのか?【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

2008年モデルのアルファ・ロメオ159TIのロードインプレッション。

全ての画像を見る
【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2008年3月号に掲載されたアルファ・ロメオ159のTIのリポートを取り上げる。159セダンに追加設定された(Tourismo Internazionare)3.2リッターV6+6ATのTI。2008年当時、同じパワートレインの159スポーツワゴン3.2が編集部に長期テスト車としてあり、その担当者がリポートした記事だ。


スポーツ・サス+19インチ

フィアット・グループが借りているタワーパーキングの扉がカタカタと音を立てながら開いた。パレット上に鎮座する159TIはアルファ・レッドだった。マット仕上げのアルミ製ドアミラー・カバーが、強めの照明を受け輝いている。アウディのS、RSシリーズ同様のドレスアップ手法だ。19インチ・ホイールのスポークの間から、赤く塗られたブレーキ・キャリパーが覗いている。

フロントの4ポッド・ブレーキ・キャリパーはブレンボ製。ディスクローターともども従来の3.2リッター車と共通の部品。


長期リポートで担当している36号車=159スポーツワゴン3.2より明らかに姿勢が低い。スポーツ・サスペンションの装着により、車高が15mmローダウンされているのである。よく見ると、サイド・ステップも張り出しの大きな専用品だ。いかにも「走りそう」でスポーティな外観に仕上がっている。カッコイイ!

アルファ好きの胸を躍らせるルックスの159TIだが、じつは156/147TI同様、エンジンとトランスミッションに特別なチューンは施されていない。最高出力、最大トルク、6ATのギア比すべてが従来モデルと共通。ブレンボ製のフロント・ブレーキ・キャリパーも、塗色は違うが基本的に同じ部品だ。よって、TIを試すにあたっての一番のおさえどころは、「スポーツ・サス+19インチ・タイヤの乗り味がどうなのか?」である。

キーを受け取り乗り込む。スポーツ・シートの着座位置は従来モデルより低い。エンジンを始動し走りだして交差点を2つ、3つ曲がると、ノーズの動きが軽快であることがわかった。車重は1770kgで、前後の重量配分は62:38なのに、鼻先の重さを感じない。さてはステアリングのギア比を変えたか? と、クルマを止めてロック・トゥ・ロックを確認した。2.25回転で、従来モデルと同じだった。固められた脚と、ハイグリップのピレリPゼロ・ネロ、そして低いアイポイントがクイック感の演出にひと役買っているようだ。

レザー・シートのバックレストには、アルファ・ロメオのエンブレムが赤い糸で刺繍される。


乗り心地は予想以上によかった。156/147には、ファットな超扁平タイヤを装着し足回りのバランスを崩した限定車があったので、159が19インチを履きこなしているかどうかちょっと心配だった。しかし159TIは、首都高速の目地段差を乗り越えても、バネ下がバタついたり鋭い突き上げをカラダに伝えたりということがない。締まっているけれどしなやかさのある、ファーム系のいい乗り味である。これなら毎日のアシにも使える。

ファン・トゥ・ドライブ!

箱根のワインディングを駆ける159TIは“ファン・トゥ・ドライブ”そのものだった。コーナー進入時にアクセレレーターを閉じると、鼻先がスッと気持ちよく内側に入る。赤いスティッチの入った握りやすい形状の革巻きステアリングを通して、タイヤの接地状況が手に取るようにわかる。コーナリング中のロールは小さく、スタビリティ、接地性が高いので安心して飛ばせる。コーナー出口が見え、ステアリングがほぼ直進状態になったところでアクセレレーターを床まで踏む。と、4本の235/40タイヤがムリムリムリッと地面を掻き、強烈な加速Gがカラダを襲う。“Q4”は、基本トルク配分が前43%、後57%なので、後輪の蹴りを強く感じる。

ステアリング位置は右のみで、スポーク裏にパドルがつく。右がシフトアップ、左がシフトダウン用だ。ステアリングやインパネに張られる金属パネルはスパイダー、ブレラと同じブラッシュド・アルミで、ペダルとフットレストもアルミ製。メーター類もTI専用デザインになっている。シフトゲート回りのプラスティック・パーツはマット・ブラックに塗られる。価格は6MTの“Q4ディスティンクティブ”より10万円安い530万円


あまりにも楽しくて2時間も山岳路を走ってしまった。少し疲れたので帰りの東名はゆったり流した。長期リポート車の159ワゴンで80~100km/h巡航をすると、荷室床下からの透過音や排気系のボーボーというコモリ音が結構耳につく。しかし、トランクのあるセダン・ボディの159TIは室内がワゴンより静かだった。

じつは、価格を確認せずに試乗をしていた。「これイイけど高いんだろうな」と想像しながらサービスエリアに車を止めて、資料を見てビックリ!! 530万円と、159の3.2リッターモデルの中で1番安いのだ。6速AT仕様=Qトロニックで、19インチ・アルミ+タイヤにスポーツ・サス、革張りスポーツ・シートとパドル付きステアリングも備えるのに、なぜ? 159TIは俊敏性の高さで人気を博した156/147から159への乗り換えをうながす、戦略モデルなのかもしれない。

文=数藤 健(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹



(ENGINE2008年3月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement