2024.09.26

CARS

窓を開け放ち、ストレート・シックスの快音を聞く! BMWZ4ロードスター  これは命芽吹くスポーツカーだ!!【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

2009年型BMW Z4ロードスターの試乗記!

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女の時代

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インテリア・デザインを担当したのも、うら若い女性のナディア・アルナウト。世界ブランドのメジャー・モデルの内外スタイリングをともに女性が担当したことに、時代があたらしくなっていることを実感するばかりだが、インテリア・テーマもまた、肉体にあった。ただし、こちらは細マッチョなアスリートのというより、スレンダーでありながら肉感的な女性の、ほどよくくびれたトルソ(胴体)。ドライバー・サイドにわずかにスラントしたダッシュボードの、上端と下端が構成する非対称のラインにそれは表現されるという。いわれてみると、たおやかな体の輪郭が見えてくるようにもおもえたが、スポーツカー・デザインにも女性の時代がやってきたわけだ。

写真ではわかりにくいが、ダッシュボードの左側半分はわずかにドライバー・サイドに傾斜している。フロントの造型は他のBMW車と共通するイメージを持ちながら、より有機的で、かつてのようなビジネスライクなムードを拭い去っている。


シャンペン・ゴールドのボディにホワイトのナッパ・レザーのインテリアというオシャレな仕立てに注目。また、このレザー・シートには太陽光線にふくまれる赤外線を反射する着色顔料が使われており、通常のレザー・シートより温度が20度C低く抑えられるという。

試乗に供されたZ4はトップ・パフォーマーの3リッター・ツインターボ直噴直列6気筒を搭載する「sDrive35i」。「Sドライブ」は、4輪駆動モデルを「Xドライブ」というのにたいして、3、5、7の各シリーズ以外のシリーズの後輪駆動モデルに与えられる共通の接頭辞的呼称である。

このSドライブ35iのパワートレインは、335iクーペやカブリオレ用のものとおなじ。306ps/5800rpmと40.8kgm(400Nm)/1300―5000rpmを発生し、ダブル・クラッチ式の7段セミAT(DCT)を介して車重1600kgの2シーターに、0―100km/h5.1秒のポルシェ・ボクスターSをしのぐ加速とリミッターで制限される250km/hの最高速を与える。695万円の価格は、いずれも4座の335iカブリオレの802万円や335iクーペの713万円より安い。同時に発売される2.5リッター自然吸気6気筒、204ps/6300rpm、25.5kgm(250Nm)/2750―3000rpmのユニットを載せる23iは523万円。こちらは通常の6段ATと組み合わされて、0―100km/h6.6秒、最高速242km/hの性能を発揮する。

ツイン・ターボの3リッター直6は、スカットル側に押しやられる。


はげしいワインディング

白い海岸といいながら、BMWが推奨する試乗ルートは、そのほとんどがワインディングまたワインディングの、登るとおもえば下り、下るとおもえば登る、路面も荒れたはげしくチャレンジングなコースだった。スポーツカーの真価をはかるのは、カーブが連続するオープン・ロードでのハンドリング性能だから、それはまたとないしつらえだった。

新型Z4では、ノーマル、スポーツ、スポーツ・プラスの3種のドライブ・モードをスイッチで選択できる「ダイナミック・ドライブ・コントロール」(DDC)が標準で備わる。これはガス・ペダルの踏み込み量とエンジン出力との相互関係、挙動安定装置であるDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の反応の程度とタイミング、そしてパワーステアリングのアシスト量やシフト・スピードなどを統合制御するもので、これにさらにテスト車が装備していた「アダプティプMサスペンション」のオプションを採用すれば、車高が10mm低くなり、ダンピング制御も加わる。



Mサスペンション付きのテスト車は、標準の17インチから19インチにスケールアップしたアロイ・ホイールに、フロント225/35、リア255/30の超扁平ランフラット(ブリヂストン・ポテンザRZ050A)タイヤを組み合わせていたが、ノーマル・モードでのまろやかで懐の深い乗り心地が強い印象を残した。もっとずっと大きな高級車のように快適で洗練された味わいだ。アルミ・サスペンションによる軽いバネ下と堅固な高剛性ボディの恩恵である。

しかしいっぽう、スポーツ・ドライビングを堪能すべくスポーツ・プラス・モードをえらんでコーナーへの挑戦を開始すると、シフトアップ時の鋭いフュエル・カットとともに発せられる切れのいい排気の炸裂音がシンボライズするように、Z4は全身をタイトに引き締めてずっと小さなクルマになる。BMWのシャシー哲学にしたがい、前後50対50の軸重量配分を有する新型Z4は、ねらい通りのコーナリング・ラインを狂いなく描いていく。コーナー途中で路面がうねっても、4輪はねばり強く接地し、コーナー脱出時に力強い前進力をうしなうことはない。

窓という窓を開け放った新型Z4のなかで、顔をなぶる風とともに皮膚感覚も粟立たせるストレート・シックスの高回転域での快音を耳にしつつ、クルマの回転運動の中心点上に座って小気味よい旋回Gの立ち上がりを楽しんでいると、僕のなかでも春の命が、この白い海岸のおかげだけでなく、たしかに芽吹いたと感じるのだった。

文=鈴木正文(ENGINE編集部) 写真=BMWジャパン

■BMW Z4 sDrive35i
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4250×1790×1290mm
ホイールベース 2495mm
エンジン形式 直列6気筒直噴DOHC 24バルブ+ツインターボ
排気量 2979cc
ボア×ストローク 84.0×89.6
最高出力 306ps/5800rpm
最大トルク 40.8kgm(400Nm)/1300-5000rpm
トランスミッション ダブル・クラッチ付き7段セミAT
サスペンション(前) ダブル・ジョイント式ストラット/コイル
サスペンション(後) セントラル・アーム式/コイル
ブレーキ 前後通気式ディスク
タイヤ 前225/45R17 後ろ255/40R17
車両本体価格 695万円

(ENGINE2009年6月号)

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