2024.06.07

CARS

「車重2.5tを完璧に減速させるストッピング・パワーに舌を巻く」 モータージャーナリストの塩見智がロールス・ロイス・ゴーストほか5台の注目輸入車に試乗!

モータージャーナリストの塩見智さんが5台の注目輸入車に試乗!

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マセラティ・グレカーレ・トロフェオ「実に刺激的」

上下2分割のセンター・ディスプレイは上半分が地図表示などを担い、下半分はエアコンなどを操作するためのタッチパネルになっている。その中間にボタンが4つ横に並んでいて、P、R、N、D/Mと表示されている。グレカーレにシフトレバーはなく、ボタンで操作する。こってりした外観とは裏腹に、インテリアは先進的だ。グレカーレにはGT、モデナ、トロフェオの3グレードがあって、GTとモデナは2リッター直4ターボエンジンを搭載した今どきのプレミアムSUV、すなわち華やかなルックスとは裏腹にパワートレインは高効率でパワー控えめ(といっても実用上は十分以上)の仕様だが、トロフェオだけはスーパースポーツのMC20も搭載する3リッター V6ターボエンジンを積んだ、欲望むき出し仕様だ。なにしろ最高出力530ps、最大トルク620Nm。アクセル・ペダルを深く踏み込むと、車重2トンをものともせず、フロントをやや浮かせた姿勢でかっ飛んでいく。実に刺激的で、この日担当したクルマのなかで最も元気をもらえた。




ポルシェ・カイエンSクーペ「V8には大賛成!」

最高出力474ps、最大トルク600Nmを発する4リッターツインターボV8エンジンは最高of最高。速くて音がよい。特徴なく速いV6エンジンからワイルドで速いV8へのスイッチには大賛成だ。単純だが、6気筒より8気筒のほうが確実にフィーリングがよいという実利があるし、記号的にも強い。ポルシェのダウンサイジングからライトサイジングへのストラテジー見直しは好ましい。豹変できるのが君子だ。電動化だってそう。電動化を推進してもよいけれど、違うと思ったら戻るべき。混迷の時代、それができないと大メーカーだろうと他に飲み込まれてしまう可能性がある。VWグループを飲み込もうとした挑戦を経て、そのの一員として落ち着いたポルシェ。プラットフォームもパワートレインもグループが開発したものを用いるが、同じコンポーネンツを使う他ブランドのプロダクトに比べ、挙動も操作性も明らかに精緻だ。他のじゃなくポルシェを買う理由がある。文句はひとつだけ。ボタンプッシュでエンジンを始動させないで、ひねらせてくれ! あの儀式が好きなんだ。




ロールス・ロイス・ゴースト「ワインディングも完璧」

RRに乗ることができるという幸せを噛み締めながら、パープルのボディ・カラーにライム・グリーンのストライプが入ったパンキッシュなゴーストを1分間ほどうっとりと眺めた。この仕事をしていてもそうそうあることではない。ありがとうエンジン編集部。例によって6.75リッター V12ターボ・エンジンを始動しても、大げさな表現ではなく車内は静かなままだ。ウルトラ・スムーズな12気筒エンジンのわずかな振動は、頑健なボディと厚みたっぷりのレザー・シートによってなきものにされ、乗員には伝わってこないから、エンジンがかかっているかどうか、メーター類を確認しないとわからない。西湘バイパスを制限速度内で走らせる程度だと、風切り音とロード・ノイズが聞こえない分、日産アリアよりも静かだ。ここまでは知っていた。ただ箱根ターンパイクでのダイナミックな走行をあそこまで完璧にこなすとは知らなかった。加速力、旋回時の車両の安定感、それに2.5tの車重を完璧に減速させるだけのストッピング・パワーに舌を巻いた。幸せな50分間が終わった。

文=塩見 智

(ENGINE2024年4月号)

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