2024.05.19

CARS

唯一無二の世界 これもまた、間違いなく走りの歓びのひとつのかたち モータージャーナリストの島下泰久がロールス・ロイス・ゴーストなど5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの島下泰久さんが5台の注目の輸入車に試乗

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ミニ・ジョン・クーパー・ワークス「これはこれで未だ魅力アリ」

実はほんの数日前に、ポール・ウェラーが娘のリア・ウェラーと並んで、おそらくはミニ・クラブマンの前に立つ写真を見て、そのブリティッシュ・アイコンとしての魅力を再確認していたミニ。おかげで試乗は、とてもテンションの高まるものとなった。室内に乗り込むと、ミニはインテリアが刷新されて、ドライバーの正面に楕円形の液晶パネルが備わっていた。しかしながらアップデートされても、独特の雰囲気は健在。太いリムのステアリング・ホイール、分厚いダッシュボードに、ガッシリしたピラーなどによる、ちょっと重々しい感じも変わらない。走らせても、やはり剛性感たっぷりで骨太。しかも試乗車はJCWだけにサスペンションは締め上げられ、エンジンは低音のエグゾースト・ノートを響かせる、まさしくオールド・スクールの走りっぷりだ。デザインも走りも、ここまで独自のスタイルを頑固に貫いてきたミニ。新型は雰囲気がちょっと変わってミニマリズムを前面に出してくるようだが、これはこれで未だ魅力アリ。そう思えたのである。




ポルシェ・カイエンSクーペ「まさに原点回帰!」

数多あるクーペSUVの中でもポルシェ・カイエン・クーペほどその姿がしっくり来るモデルは無い。何しろブランドの支柱である911がクーペなのだから、むしろこれこそが本来あるべき姿だとすら思えてくる。試乗したカイエンSクーペは、実際に走らせても、やはり“らしさ”濃厚だった。ボディ、シャシーの剛性感は半端なく、これまたガッチリとした手応えのステアリングホイールを切り込むとクルマ全体がひとつの塊かのようなソリッドなコーナリングを披露する。そしてエンジンはなんと、2.9リッター V6ツインターボから4.0リッター V8ツインターボに格上げされている。かつてならカイエン・ターボのスペックである。全域に力がギッシリ詰まっていて、しかも回せば吠える!この迫力に、やっぱりこうでなくっちゃと思わずニヤニヤしてきてしまうのだ。衝撃的だったデビューから気づけば20年以上が経過したカイエン。次作はBEVにと言われる中で登場した最新作は、まさに原点回帰のポルシェらしさが改めて際立つ1台になっていたのだ。




ロールス・ロイス・ゴースト「唯一無二の世界」

最初は思わず二度見してしまったが、よく見ると派手な中にどこか漂うノーブルなカラー・コーディネートに、すぐに魅入られてしまった。こういうパーブルの着こなしは、やはり英国車ならではだ。走り出すと、そこにはまさにロールス・ロイスの世界。静謐、滑らか、けれどどこからでも力が湧いてきて、まさにゴーストよろしくスーッという音が聞こえるかのように移動していく。あらゆる入力を柔らかくいなす丸い乗り心地も、絶品と言うほかない。さすがなのは、それなら自動運転にすればなどとは思わせないことだ。つまり、ドライバーズ・カーとしての快感もちゃんと備わっている。スピリット・オブ・エクスタシーを遠くに見やりながら、鷹揚なそのクルマの動きを味わっていると、高い位置から見下ろすようなドライビングポジションも相まって、それこそクルーザーでも操っているかのよう。心が開放される。これもまた、間違いなく走りの歓びのひとつのかたちである。唯一無二の世界にひととき、存分に浸ることができたのだ。

文=島下 泰久

(ENGINE2024年4月号)

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