モータージャーナリストの田中誠司さんが5台の注目輸入車に試乗
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モータージャーナリストの田中誠司さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! BMW i5 M60 xドライブ、シトロエンE-C4シャイン、マセラティMC20チェロ、ポルシェ・カイエンSクーペ、フォルクスワーゲンID.4ライトに乗った本音とは?
感性が呼び起こされる“ガイシャ”という言い方は正しくない、と長く勤めていた出版社では教わった。“日本車メーカー”という表現もNGだった。“外国車”もしくは“輸入車”、“日本メーカー”、“海外メーカー”という区分が正解とされた。むろん、僕が本当にクルマに興味を持った10代終わり、輸入車を“ガイシャ”と呼ぶのは当然だった。順当に日本の自動車会社に就職した結果、決まったブランドのクルマにしか乗れないなんてつまらない。人生を捧げてもいろんなクルマに乗ってみたい……と雑誌屋になったのは、紛れもなく多彩な個性を備える“ガイシャ”の影響だ。お腹一杯乗り尽くしたから、と雑誌屋稼業を離れて10年。大試乗会で一堂に会したクルマを次々に走らせると、豪華なコース料理を食すように各車の味わいが際立っているのを感じ、眠っていた感性が呼び起こされるようだった。BMW i5 M60 xドライブ「ドライバーが中心のクルマ」半年ほど前、BMW i7 M60 xドライブを試乗する機会があった。巨大な体躯、強力かつ静粛極まるパワートレイン、自動開閉式のドアをはじめとする豪華絢爛の装備群には完全に圧倒された。しかし車内外騒音の遮断性があまりにも高いせいかスピード感覚がつかみにくく、適切なタイミングでステアリングを切れなくて難儀したり、車体の重さが気になるシーンを何度か経験し、自分の中の “BMW像”とは小さくないズレを意識させられたものだ。i5 M60 xドライブは、あと200万円足せばi7 M60が入手できる1548万円の高額車。満艦飾の装備や広大な空間という点ではi7に譲るが、いざ走らせてみればその足まわりは前後アクスルへの電子制御スタビライザー採用などにより精緻さを極め、442kWというシステム出力を寸分も持て余すことがない。「おもてなしするクルマ」であるi7に対し、i5は「ドライバーが中心のクルマ」に仕立てられている。エグゼクティブを相手とするクルマなら、こうしてヴィジョンやターゲットを明白にしておかなければ選ばれない、というBMWの主張と危機感が見えた。シトロエンE-C4シャイン「最も合理的なEVのカタチ」フランスの実用車といえば、その昔から速すぎも贅沢すぎもせず、多少チープなところが見え隠れするのがチャームポイントで、さりとて操縦し積載するのに肝心な部分に手抜きはないことが特徴だった。シトロエンE-C4は電気自動車に生まれ変わりながら、その文脈に完全に従って作られているように見える。車幅は1.8m、全高は日本の立体駐車場の多くが利用できる1.53mとされており、フロントマスクの存在感は強いものの全長は4.4m足らずに収められている。バッテリー容量を50kWhに留め、前輪を駆動するモーターも136ps/260Nmと控えめで、加速も航続距離も平凡ながら車両重量は1630kgと比較的軽く、時折郊外へ赴く程度のシティカーとしての使い勝手は申し分ない。フランス人が考える、現時点で最も合理的なEVのカタチ、なのだろう。一番気に入ったのは操作に対する応答性が優れるステアリングと、シトロエンらしく安定感ある車体の挙動だ。助手席でドライブを楽しんだアルピーヌA110オーナーであるEPC会員も「これなら安心できるハンドリングですね」と感心してくれた。
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