2024.06.12

CARS

「ポルシェのスポーツカーに乗り慣れているひとが乗り換えても違和感なし」 モータージャーナリストの田中誠司がポルシェ・カイエンSクーペほか5台の注目輸入車に試乗

モータージャーナリストの田中誠司さんが5台の注目輸入車に試乗

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マセラティMC20チェロ「盛大な祭り」

10年くらい前のこと、現役に近いF1レースカーを改造して2人乗りにした“2シーターF1”で、アブダビのグランプリ・サーキットをドライブしたことがある。背後のV10ユニットの鋭さ・滑らかさにも驚かされたが、乗り心地が素晴らしいのが何より印象的だった。トレッドが広くサスペンションがよく動き、タイヤのハイトも高いことが奏功していたのだろう。MC20チェロで路上に繰り出して、脳裏に甦ったのはこの体験だ。シザー・ドアを備え、地を這うようなフォルムを持つ2シーターであるMC20だが、乗り心地がとてもいい。ロードカーとF1では目指すところが違うといっても、幅広く配置された4つのタイヤの中央近くに乗員が座り、優れたフットワークを目指すという大枠には共通性があるのではないか。エンジンは、5000rpmまでは低く唸って振動を伝えてくるだけに思えるが、そこから先で途端に俊敏さを増し、清流のような爽やかさを備えながら協和音とともに痛快なパワーが解き放たれる。神輿の代わりにマセラティのトライデントを担いで、盛大な祭りに参加している心持ちになる。




ポルシェ・カイエンSクーペ「スポーティネスが強まった」

ポルシェのクレストを掲げたモデルには、闘うこと、速く走ることが運命づけられている。レース史を担い続けてきた911というモデルの“呪縛”から、ずっと逃れられなかったのもそれが理由だ。

ここ20年、むしろミドシップ・スポーツのボクスター、ケイマンやSUVのカイエン、マカンがポルシェのビジネスを牽引してきたのは誰もが知る事実だ。けれども911がより高性能を極める中で、ポルシェというブランドの本質がより先鋭化したのは間違いない。

そんな中、カイエンにはクーペが追加され、一度はV6を使っていたSモデルはV8エンジンに戻された。911がスポーティネスをさらに強める中、稼ぎ頭の他モデルにも同様のイメージが欠かせないのだろう。

クーペSの最新モデルは、7000rpmまで淀みなく続く太いトルク、レスポンスに優れるトランスミッション・ステアリングとあいまって、ポルシェのスポーツカーに乗り慣れているひとが乗り換えても違和感をまったく覚えないはずだ。状況が許す限り速く走らせて、日常にカレラのムードを持ち込みたくなる。




フォルクスワーゲンID.4ライト「EVだからこそ開拓できた境地」

リアエンジン・リアドライブ(RR)のビートルことタイプIから、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)のゴルフへ一気にシフトして世界の実用車のスタンダードとなったVWは、電気自動車のID.4でふたたびRRへ転じて世界を驚かせた。ディーゼル車をめぐる不正問題を経てなんとなく元気のなかったVWだが、EV専用プラットフォームMEBには彼らが蓄えた巨大な熱量が注ぎ込まれている。大きな発進トルクを後輪で受け止め、居住スペースを前方に拡大するパッケージングの大転換を図った車体は、並外れて強固な印象を操る者に与える。小回りも得意だ。EVだからこそ開拓できた境地がそこにある。ID.4ライトはバッテリー容量とモーター出力、装備レベルを絞り込み、上級グレードのプロより2割ほど低い価格を実現。車重も1割ほど軽く、加速力は日常用途であれば充分だ。ホイール・サイズが小型化され、乗り心地が良いのも好ましい。けれどID.4が全体にきわめて高い完成度を誇るモデルであるだけに、自分なら控えめ性能のライトでは我慢できず、プロに行ってしまいそうだ。

文=田中 誠司

(ENGINE2024年4月号)

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