2024.07.04

CARS

【試乗速報】まったく新しくなった電気自動車のミニ3ドアにモータージャーナリストの渡辺敏史が試乗 余裕ある大人が選ぶならこっち!

非常によく似たスタイリングながら、BEVと内燃エンジン車を別のプラットフォームで造り分けることになった4代目のミニ。その先鋒となるBEVの3ドアのクーパーSEに渡辺敏史が試乗した。

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オリジナルへの敬意を表した3ドア


21世紀に入るや、BMWのオペレーションによるミニの新たな歴史が幕を開けた。以降、バリエーションを多様化させながら四半世紀近くの時が経たわけだが、いつでもその中核に据えられてきたのは、オリジナルへの敬意を表した3ドアだ。



この春、四世代目として日本でもお披露目されたミニ3ドアの最も大きな変化といえば、新たにBEVモデルが設定されたことだろう。しかもそれは、車台が前型のリファイン版となる内燃機モデルと異なり、BEV用に最適化された専用車台を採用している。

実はミニとBEVとの関係は浅からぬところがある。2009年には二代目ミニをベースとしたミニEがリサーチ用に作られ、カスタマーに貸し出されたほか、欧州では先代にも内燃機モデルをベースとしたBEVモデルを設定。日本では航続距離等の課題から導入が見送られていたが、この新型では専用設計によって航続距離が延長したこともあり、晴れて日本上陸を果たしたわけだ。

BEV版ミニのグレードはEとSEの2つが用意される。その差異はEが40.7kWh、SEが54.2kWhと、搭載する電池容量に顕著だ。航続距離はWLTCモードでEが344km、SEが446kmとなっている。対して動力性能は0~100km/h加速がEは7.3秒でSEは6.7秒、最高速はEが160km/hでSEが170km/hと、歴然というほどの差はない。コミューターと割り切るか、ファーストカーに近い使い勝手を求めるかによって選択が変わってくることになるだろう。また、日本仕様はCHAdeMO規格に対応していることもあって家との電力融通を可能とするV2Hに対応している。地域によっては補助金の類なども差が出てくるだろう。

BEV版ミニは前述の通り、専用プラットフォームで内燃機版ミニとはジオメトリーからして異なるも、外寸は酷似している。内燃機版より30mm長いホイールベースは居住空間にも活かされていて、181cmの筆者のドラポジのまま後席に回っても前後席間に窮屈さはない。一方でキャビンは後端に向かっての絞りがやや強く、左右側にはさすがに狭さを感じる。が、この形状によって外観的には後部の張り出しが強調されており、特にリアからの眺めはちょっとルノー5ターボ辺りを思い起こさせるほど、どっしりと据わりよくみえる。



内装は240mm径のOLEDタッチパネルを軸に、主だった操作ものを残して機能を内包したおかげで、オリジナル・ミニにも相通じるすっきりとした見た目に仕上がった。シフトやドライブ・モードの切り替えはトグルスイッチに寄せたレバー式としたり、センターのイグニッションは捻るアクションを残したりと、敢えてオリジナルに寄せたディテールを加える一方で、タッチパネル化によりエアコンやオーディオ等の操作の手数が増えたという側面もある。ちなみにインフォテインメントのBMW OSは9.0に相当する最新世代のもの。Andoroidをベースとしており、サードパーティの参入も容易化しているため、今後は様々な発展性が望めそうだ。



試乗車はハイスペックのSE。快適性はミニのイメージを大きく覆すものだった。放っておいても高くなる静粛性は、一方でロード・ノイズや風切り音などを際立ててしまうが、その辺りも丁寧に処理されており、車格に比してなぞらえれば小さな高級車とも称せる質感がある。

それに応えるのが足まわりの柔軟性の高さだ。ミニといえばその車格ゆえの細かなバウンドが気になるところだが、BEV版ミニは自重や重心高も手伝って低速域からの乗り味は歴然とフラットさを高めている。高速域での据わりの良さもミニのイメージとは一線を画するところだ。

が、さすがにゴーカート・フィールは内燃機モデル同然というわけにはいかない。マスが増したそのぶん、操舵の初動が鈍った感はある。が、自分自身が齢を重ねたこともあってか、毎日使うものとしてはこのくらいのアジャイルさが心地いいと思うところもあったのが偽らざるところだ。生活様式とクルマとの付き合い方を含めて鑑みれば、BEV版ミニは時間や心身に余裕のある大人のための選択肢なのかもしれない

文=渡辺敏史 写真=ミニ



■ミニ・クーパーSE
駆動方式 フロント1モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 3858×1756×1460mm
ホイールベース 2526mm
トレッド(前/後) 1538/1535mm
車両重量 1605kg
電池容量 54.2kWh
システム最高出力 160kW/7000rpm
システム最大トルク 330Nm
一充電航続可能距離 446km
トランスミッション 1段AT
サスペンション(前) マクファーソンストラット+コイル
サスペンション(後) マルチリンク+コイル
タイヤ・サイズ(前後) 195/60R16
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
車両本体価格 531万円

なお5ドアもラインナップに新たに加わったがICE車のみで、1.5リッター3気筒のクーパーCが408万円、2リッター4気筒のクーパーSが477万円。全車前輪駆動&右ハンドルのみで、ICEは7段デュアルクラッチ式自動MTとの組み合わせ。


(ENGIN2024年8月号)

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