2024.07.26

LIFESTYLE

売りに出されたフランク・ロイド・ライトの元で働いた建築家夫婦の自邸 大改修を経てこの秋から一般公開! POLA青山ビルディングの前庭に移築された昭和のモダン建築「土浦亀城邸」

家具や絨毯は1935年当時の色まで含め復原。89年前の設計とは思えないモダンな住空間に驚く。

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1935年に東京・目黒に建てられた建築家夫妻の自邸。「土浦亀城邸」として知られるこの昭和の名建築が先ごろ、POLA青山ビルディングの前庭に移築された。

白くて四角い外観

日本を代表する戦前のバウハウス様式の住宅、「土浦亀城邸」(1935年竣工)がこの春開業したPOLA青山ビルディングの前庭に復原・移築された。白い四角い外観に大きなガラス窓、居間を中心とした機能的な間取りに、スキップ・フロアーを利用した空間構成がこの建物の大きな特徴。システム・キッチンやトップライトのあるバスルームを備えるなど、90年前の住宅とは思えないほど進んでいた。設計は、建築家の土浦亀城(かめき・1897-1996)・信子(1900-98)夫妻。アメリカのフランク・ロイド・ライトの事務所で1920年代に3年近く働いた経験を持つ先進的な夫婦で、やがて訪れる車社会を予見。帰国する際はスチュードベイカーを購入し、現在のルート66で大陸横断に挑んだ。帰国後はフォードのオープンカーで、銀座の高級店へランチに出かけることもあったという。





そんな二人の自邸は、東京・目黒のお屋敷街の一角に建てられた、建築面積66平方メートルの小住宅。共に98歳で亡くなるまで、この家で暮らした。主亡き後は、縁者が管理していたが数年前に売りに出され、篤志家の手に渡ることに。建物は傷みが激しく、大改修の手が入る。依頼を受けたのは、修復にも定評のある安田アトリエの安田幸一さん。ちょうど同じ時期にPOLA青山ビルディングの設計を手掛けていた縁で、今回の移築を任される。

完成時の室内を再現

建物は2度ほど大きな改築をされているが、最も歴史的な価値が高い竣工時の仕様に戻された。内装は、白黒写真と1枚だけ残っていたカラーのスケッチ、当時のメモを頼りに復原。元々の壁厚を変えずに、現代の水準の断熱処理と耐震補強を行うとともに、それと分からないように、冷・暖房設備を追加した。



居間から続く食堂。

こうして復原・移築された土浦邸に、一歩足を踏み入れると、明るく広々とした、色の溢れる空間に驚かされる。そして、「この家なら住んでみたい」と思わせる、現代でも十分に通じる住宅としての魅力を感じた。この秋から、一般公開される予定である。

※「土浦邸」内覧申込み予約開始は2024年9月2日(月)10:00より

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=田村浩章

(ENGINE2024年9・10月号)

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