2024.07.24

CARS

新型トヨタGR86はどんな進化を遂げたのか? 国沢光宏氏が土砂降りの富士スピードウェイ・ショートコースで試乗した

2024年7月に一部改良が行われたトヨタの後輪駆動スポーツカー、「GR86」にモータージャーナリストの国沢光宏氏が試乗。300万円で買える貴重なスポーツ・モデルはどのような進化を遂げているのだろうか。

希少な200馬力超の後輪駆動MT

今やGR86のような純エンジン車のスポーツ・モデルは世界規模で絶滅危惧種となってしまった。というより、現時点で購入可能な200馬力以上のエンジン積んだ後輪駆動のマニュアル・ミッション車に限定すれば、すでに数車種しかない。ということで、このタイプのクルマを考えているなら、早めに動いて損はないと思う。

新型GR86

大きな改良は4つ

そんなGR86が発売以来4回目になる年次改良を行った。兄弟車のスバルは「D型」と呼んでいるので、新型GR86も以下D型としておく。開発チームからアナウンスされたC型(従来モデル)からの変更点は4つ。

1)ダンパーを改良。スポーツカーらしいダイレクトなハンドリングレスポンスはそのままに接地感を向上させた。

2)「ドライバーと対話できるクルマ」を目指し、電動パワーステアリング特性を改良。限界域におけるステアリング・フィールを向上。

3)ヒール&トゥ操作をしやすくするためのスロットル制御を採用。

4)ATのシフトダウン可能回転数を1500回転上げた。

新型GR86

流れ出しのコントロールがしやすい

答え合わせ試乗と行きましょう! ダンパーの改良だけれど、今までGR86はドリフト競技車のような挙動を目指していた。ドリフト競技車、コーナー手前で前輪に荷重掛け、同時にアクセル全開! するとリア・タイヤが滑る限界値をイッキに超え、流れ始める。そいつをカウンターステアでコントロールするという乗り方だ。

C型の場合、技量のあるドライバーなら十分コントロールできるものの、中級くらいだとリア・タイヤの滑り出しがややトリッキー。中途半端な荷重移動や、アクセル開度しかできないと車体のコントロールが難しかった。具体的に書くと「唐突に滑る」傾向。そこでリアをもう少し粘るようにしている。

今回は限界が掴みにくいヘビー・ウエットという路面でC型とD型を乗り比べたのだけれど、明らかにD型は流れ出しのコントロールをしやすくなっていた。私くらいの”中の上”か”上の下”というビミョウな技量だと、D型なら高い速度域でもテールを流して飛び込んでいけるのに対し、C型はリスクを感じてしまう。広報車だと「やめておこうか」になる(笑)。

新型GR86

違いはリニアリティ

2)の電動パワーステアリングの変更はトヨタの技術だ。2020年デビューの現行ハリアーから電動パワステを大きく変更した。その技術を逐次投入しており、やっと後輪駆動のGR86に順番が回ってきたということ。大きく違うのはリニアリティ。路面感覚を的確に伝えてくれるようになった。ハンドルの切り始めと、カウンターステア当てている時の路面感覚が良い感じ。

大雨の中だと「切り始め」の違いは分からないレベルながら、ドライ路面に比べ路面から入ってくる情報が少なくなるウエットでのドリフトコントロールで「いいね!」。すっかり楽しんでしまった。今までのトヨタ車で言えば、普通に街中を走っているときのステアリング・フィールの違いは誰でも分かると思う。

新型GR86

限界時に効果を発揮

3)電子スロットルの味付け変更はサーキット走行のような「気合い入れた走り」をする時のレベルで分かる。今回のようなヘビー・ウエット状態でクルマを大暴れさせながら「こりゃ楽しい!」だと、全く分からず。滑りまくり&カウンター当てまくりだと、全てが大きな操作になりますから。サーキットでの限界走行時だと分かるそうな。

4)今回の試乗車は6段MT車だけだったので試せなかったものの、今までシフトダウン操作しても無視されてしまった回転域で下のギアに落ちるようになったというから確実に乗りやすくなるだろう。機会あったら試してみたい。

いずれにしろ年次改良で一段と乗りやすくなった。最後の純エンジン車&マニュアル・ミッションを考えているなら、そろそろ購入を考えもいいんじゃなかろうか。

新型GR86 RZ“Ridge Green Limited”(リッジグリーン・リミテッド)

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

(ENGINE WEBオリジナル)

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