2024.08.13

CARS

インドネシアならWRX S4のMTが買える インドネシア・モーターショーのスバル・ブースを探索

2024年7月18日~28日の期間で開催された、インドネシアの国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024」(GIIAS2024)。日本車が大きなシェア持つインドネシア市場には、スバルも参入しており、日本の乗用モデルに近い充実のラインアップを誇っているのも大きな特徴だ。そこで見えてきたアジアでのスバルの立ち位置とは、いかなるものなのだろうか。

2022年に再参入

意外なことに、スバルは2014年に一度、新車販売から撤退している。その後、既存客へのサポートのみを行っていたが、2022年に再参入を決断。現在のモデル展開はかなり積極的で、「クロストレック」、「フォレスター」、「アウトバック」のSUVラインに加え、FRスポーツ・クーペの「BRZ」、スポーツ・セダン「WRXセダン」、スポーツ・ワゴンの「WRXワゴン」(日本名:レヴォーグ)といったスポーツ・モデルが導入されている。



電動モデルは一切ナシ

日本仕様との違いのひとつが、パワートレインだ。e-BOXER(ボクスター)搭載車を含め、電動車は非導入なのだ。このため、クロストレックとフォレスターには日本には存在しない自然吸気仕様の2.0リッター水平対向4気筒エンジン車を導入。アウトバックも、日本仕様の1.8リッター水平対向4気筒ターボではなく、2.5リッター水平対向4気筒エンジンを搭載しているのだ。さらにWRXセダンに関しては、エンジンこそ日本の「WRX S4」と同じ2.4リッター水平対向4気筒ターボであるものの、日本仕様にはない6段MTモデルまで設定しているのだ(羨ましい……)。また、WRXワゴンの名で販売されるレヴォーグはWRXを名乗るだけあって、エンジンは、WRXセダン同様、2.4リッター水平対向4気筒ターボ仕様のみを導入している。

インドネシアにおけるスバルの販売台数は、2023年で561台と限られたものであり、ほかの日本ブランドと比べるとシェアは小さい。そこで販売戦略を、先進国のような電動化の推進ではなく、顧客満足度を重視したものとしており、スバルらしい性能を備えたモデルをラインアップしているのだ。その結果、復活の初年となる2022年は214台に留まったが、1年で2.6倍という驚異的な伸びを見せている。そのユーザーの中心は、30代の若い世代というから、インドネシアの裕福な若いクルマ好きの心をしっかりと捉えていることが伺える。



しかも、アイサイト付き

ショーの目玉のひとつは、WRXセダン(日本名:WRX S4)MTモデルへのアイサイトの搭載だ。なんと、MT導入だけでなく、MT版アイサイトの設定まで実現させているのだ。これはスバルの先進性のアピールと共に、ブランド・スローガンである「安心と愉しさ」を伝えるメッセージでもあるのだろう。

また、WRXシリーズをチェックして気が付いたのが、「tS」のエンブレムだ。なんと、インドネシアのWRXには、tSが存在するのだ。tSといえば、STIがチューニングを手掛けたスバルのコンプリート・カーが思い出されるが、インドネシアでは最上位モデルのグレード名として使用されている。



日本仕様と異なる内外装

セダンとワゴンの両モデルに設定されるtSは電子制御ダンパーやSTIエグゾースト・マフラーを装着。外装やシート表皮などは日本で販売されている「STIスポーツ」とは仕様が異なる。シートに触れてみると、おそらく米国仕様と同じ表皮にはウルトラスエードが使われており、ヘッドレストにも北米仕様と同様に「WRX」の赤い刺繍が施されていた。さらに、ハーマンカードン・サウンド・システムも標準となる。アイサイトは、最新の3眼式ではなく2眼式となっていた。

注目の価格だが、WRXシリーズで、エントリーとなるセダンMTアイサイトが、8億7450万ルピア。最も高価なワゴンtSアイサイトが、10億2950万ルピア。日本円換算だとそれぞれ、約805万円と約948万円という超高級車だ。

今回のショーでは、フォレスターとクロストレックに特別仕様車「アドベンチャーエディション」を設定。さらにBRZには限定5台のSTIパフォーマンスパーツ装着車が展示されていた。



フォレスター・アドベンチャーエディション

2.0iSアイサイトをベースに、SUVらしいアクティブさを高める特別仕様を追加したモデル。ウィンドウモールのクロームをブラックに変更。ピアノブラックのリア・ドア・ガーニッシュや235/55R18インチにサイズ・アップしたオールテレイン・タイヤとBRAID製18インチ・アルミホイール、専用となる「アドベンチャー」のエンブレムとサイド・ストライプを追加している。価格は、ベースモデルの2,000万ルピア高の6億7950万ルピアだ。日本円だと680万円ほどだ。



クロストレック・アドベンチャーエディション

こちらもベースモデルは2.0iSアイサイトで、タフギア感と機能性を高める装備を追加している。最も目を引くのが、専用のルーフラック。MAXFORT製による専用品で、なんと、サイドにクロストレックのロゴがデザインされた特別感を強調したもの。足元には、235/55R18にサイズ・アップされたオールテレイン・タイヤにMethod Race MR502 RARRYアルミホイール、専用となるアドベンチャーのエンブレムとサイド・ストライプを追加している。価格は、2500万ルピア高の6億5950万ルピアだ。日本円だと607万円ほどになる。



BRZ with STIパフォーマンスパーツ

インドネシアのBRZは、モノグレードとなっており、6段MTと6段ATの選択が可能。こちらも日本同様に、どちらにもアイサイトが標準化されている。装着されるSTIパフォーマンスパーツは、前後リップ・スポイラー、サイド・スカート、リア・スポイラーなどのフルエアロに加え、内装では専用デザインのシフト・ノブとエンジン・スタート・スイッチ、サイドシル・プレートを追加。さらに排気系にパフォーマンス・マフラーを装備した仕様となっている。

価格は、ベース車の1億3500万ルピア高となるMTが10億2千万ルピア、ATが10億3千万ルピアとなっている。日本円だと、900万円台となる超高価格であり、5台限定とするのも頷けるところだ。

すべてが日本から輸入していることもあり、超高価格となるスバル車だが、少数だが、インドネシアには熱心なファンがいて、ブランドを象徴するSUVと高性能を車中心のラインアップも好評を得ている。その一方で、ほかのアセアン地域でも新車販売を行っているが、近隣諸国への供給を含めたフォレスターの生産工場があるタイで販売台数が減少しており、今年でフォレスターの現地生産を中止。2025年以降は、再び輸入へと切り替えるとしている。台数で利益を上げることが難しい現状では、再進出で好調なスタートを切っているインドネシアに、アジア地域でのスバルの生き残りのヒントがあるように感じた。



文・写真=大音安弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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