2024.10.16

CARS

ワクワクしたくて買うならどっちだ? 日本代表、トヨタGRヤリス vs 世界選抜、ヒョンデ・アイオニック5Nに国沢光宏が試乗 クルマ好きのハートを熱くする2台の戦闘機!

ラリー好きで知られるモータージャーナリストの国沢光宏さんに出されたお題は、どちらもラリーに関係するGRヤリスとヒョンデ・アイオニック5Nに乗って、その魅力を探るというものだった。そんなお題にモータージャーナリストの国沢光宏さんは「終わり」と「始まり」というワードで答えた。はたしてその心やいかに。

最後の武闘派

この2台のクルマを並べ、私が超短いタイトルを付けるとすれば「終わりと始まり」にしたい。説明するまでもなくGRヤリスというクルマ、世界規模で考えても「最後の武闘派」と言って良い。いわゆる競技車両として使うためのホモロゲモデルです。古今東西(といっても東は日本だけ)、ホモロゲモデルは自動車好きにとって憧れの存在だ。



有名なのはオークションで最も高い値が付くフェラーリ250GTO(グラン・ツーリスモ・オモロゲート)。競技で勝つには普通のクルマと違うスペックを持たせたいのだけれど、ワンオフ・モデルでOKなら尖りすぎてしまう。一定の台数を市販するというレギュレーションを作っておけば、誰でも買えるし過激にならないというのが理由だ。

GRヤリスはWRCのホモロゲを取るために開発されたモデルで『ラリー2』(人気沸騰で数年待ち)というカテゴリーの競技車両ベースになっている。標準のヤリスと比べスポット溶接の数を800打点増やし、接着構造も採用。剛性を確保するなどボディ骨格からして違う。生産も工程毎にレーザー測定するほど精度管理をしている。



現在販売しているモデルはベアリング・ターボの採用などで初期型の272馬力から304馬力に10%もパワーアップされたエンジンや、シフトフィールの向上をさせたミッション、ボディ剛性のアップ、冷却性能の向上など3年間の競技参戦で出てきた多くの課題に対し可能な限りの対策をしている。腕自慢のドライバーでも納得いく仕上がりになった。

世界唯一&最後の「エンジンだけで走るホモロゲモデル」ということは海外のクルマ好きの皆さんも知っており、今や絶大なる人気車になっている。販売されていないアメリカから「早く売って欲しい」というリクエストが毎月のように届くらしい。文頭に書いた「最後」は、文字通りエンジンで始まった自動車文化のファイナルを意味する。

羊の皮を被った狼

アイオニック5Nは武闘派電気自動車の最初である。こう書くと「テスラやタイカンだって高性能電気自動車でしょう」と思うだろうけれど、アイオニック5Nと比べたらGTカーレベルです。いや、スポーツグレードくらいか? 使い古された表現なのだけれど正真正銘の「羊の皮を被った狼」だったりする。

相当なクルマ好きであっても、乗る前は過小評価している人であっても、アイオニック5Nのコクピットに座り、ハンドルの右側にある『N』ボタンを押した瞬間から「なんだこりゃ!」が始まり、やがて夢中になっていくと思う。かくいう私はクルマ好きのステレオタイプであり、試乗するまで過小評価してました。



もう凝りに凝っている! 興味深いことに開発に関わったエンジニアと話をしていると、アタマの中は『イニシャルD』だった! 「秋名で溝落とし走行するのが見果てぬ夢です」という人までいる(笑)。日本人のクルマ好きはベテラン世代だとサーキットの狼、若手だとイニシャルDによってスイッチを入れられる。それがヒョンデの場合は、イニシャルDとワイルド・スピードなのだった。ちなみにアイオニック5Nは赤いNOSボタン(NGBと表示されている)まで付けちゃった。押すと10秒間だけ600馬力が650馬力になるのだけれど、残念ながらドカンとは加速しない。ただ気分を味わえます。一時が万事で、乗っていると「ソウキタカ!」の連続。

まずエンジン音がする。ニュートラルでブリッピングするとキチンとタコメーターが跳ね上がり、回転が落ちてくると「パンパンッ!」というアフターファイア音まで付く。Dレンジで加速していくと、エンジン車と同じように回転数が上昇し音が高まり、スポーツカーのツインクラッチのような「トン」というショックと同時にシフトアップする。



フェラーリやマクラーレンなんかに近い変速フィールだ。Dレンジで乗っていると高性能エンジンを積んだスポーツモデルなのかと錯覚するレベル。もちろん変速ショックやエンジン音の無い電気自動車モードも選べる。Nモードを止めると「普通の電気自動車じゃん」になります。やっぱり静かでツマらないということがハッキリ解って興味深い。

マニュアルモードを選ぶとパドルシフトになる。ここからが一段と「そこまでやる?」。1速のままアクセルを踏み続けるとレブリミッターにあたり、加速しなくなる。60km/hくらいから6速ギアのままアクセルを全開にしても、エンジン車の6速ギアと同じような加速しかしないのだった。徹底的に遊んじゃってる。テスラやポルシェだってやってなかった。

ヒョンデの凄さはこういった“演出”の裏打ちにWRCのノウハウが詰まっていることにある。アイオニック5Nの開発にあたり様々なドライバーから意見を聞いたという。当然ながら開発の主体は欧州のテストラボであり、ティエリー・ヌービルなどWRCのトップドライバーもかかわっている。日本人ドライバーの意見まで取り入れたそうな。



繰り返しになるけれど、現在販売されている電気自動車の中でブッチギリに面白い! すでに多くの自動車メーカーがアイオニック5Nを購入し「やられた!」と思っていると聞く。走りを楽しむ電気自動車の歴史はここから始まるだろう。電気自動車に乗って「面白くない!」と感じたクルマ好きも「これならいいか」になることを保証しておく。

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