2024.11.10

CARS

【後篇】エンジンHOT100ランキングの1位と2位のスポーツカーが激突! 日本代表マツダ・ロードスター vs アルピーヌA110 少しでも長く存在し続けて欲しい!

2015年の現行(ND)型デビュー・イヤー以来、9年振りにエンジン・ホット100で1位に返り咲いたマツダ・ロードスターと、登場から昨年まで、5年連続でその座を守り続けたアルピーヌA110。1位と2位の頂上決戦!

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2015年の現行(ND)型デビュー・イヤー以来、9年振りにエンジン・ホット100で1位に返り咲いたマツダ・ロードスターと、登場から昨年まで、5年連続でその座を守り続けたアルピーヌA110。1位、2位を争い続けてきたこの2台に自動車評論家の斎藤慎輔が乗って、その持ち味を改めて考えたリポート。【前篇】のロードスターに続く【後篇】では、A110Rチュリニを取り上げる。

シャシー・セッテイングの妙

対するアルピーヌA110も、初代A110が持つ軽量さとトラクション性能の高さ、旋回の自在性を、限られたコストの中で実現可能な素材による車体構成と、ミドシップ・レイアウトに注ぎ込んできている。



なにより初代A110に通じると強く思わせたのは、とくに初期モデルにおける直進安定性は潔く諦めたかのような、徹底して旋回性能に振ったと思える走りの在り方にあった。

ロードスターほどに数多く乗り込んでいるわけではないので、時期ごとの、さらにモデルごとの差異を子細に述べられるほどの経験はないのだが、それでも分かっていることは、アルピーヌはルノー・スポールとも同様、エンジン・パワーを段階的に高めてきている点。現実的には使用しているDCTの耐トルク容量が制約となっており、無闇には高められないのだが、スポーツカーとしての魅力を保ち続けるための手段を、ひとつは分かりやすくエンジン・パワー、速さの進化(ただし劇的ではなく)で示すということになる。



ただ、ここはロードマップに基づいているのか、技術的に可能になったからそうしたのかはともかく、これは他のスポーツカーも変わらないのだが、A110は同時に乗り手の使い方に合わせたシャシーのバリエーションを、わかりやすい形で用意している。公道における走りでいうなら、多少のエンジン・パワーの差よりも、こちらのシャシー・セッティングの方が違いが大きい。

これはロードスターも同様だが、スタビリティを高めていく方向になればなるほど、持ち味であり魅力である「すんなり曲がる」感が薄れていくのは仕方なくもある。そうした面で、A110の中でもRは空力性能を含め高速度域での安定性重視であり、スタビ径も特にリア側は明確に太くされている。ある意味、初期モデルの、安定性よりも軽快さを求めた特徴を打ち消すような高速度域重視の在り方だ。これを好むかどうかがRの走りの評価に大きく関わる。



実際、日本に多い低中速ワインディングでみるならば、A110シリーズにおいて、もっともアンダーステア感が強いのがR。初期の操舵応答性自体は高いので、「曲がる!」と思わせるが、追い込むにつれアンダー感が顔を出すようなことになる。

Sあるいはノーマルのような、ひらり、さらり、くるりと追操舵の必要などなく、思いのままにイメージしたラインをトレースするコーナリングとは少しばかり違うのだった。



RにはZF製の減衰力調整式ダンパーが標準で備わるが、アルピーヌ・ジャポンによると、広報車では通常は前後とも20段階中の10にセットしているというので、これがデフォルトにおけるRの動きといえそうだ。

さらに言えば、車高も標準状態でSよりも10mm低いそうだから、それだけでも高速旋回での姿勢も安心感も変わるのは当然で、ともかく公道ではまず経験できない速度域での旋回において本来の力を発揮するというべきようなセッティングなのだ。



そんなRに驚かされたのは、シートは薄いウレタンフォームを備えただけのカーボン製のフルバケット式でありながら、日常域でこれは辛いという乗り心地をもたらさないこと。これまで、Rでは1000kmほど走らせてもらったが、こと乗り心地に関して勘弁してくれと思った記憶はない。足は固められていても、必要な分は素直にストロークするからだ。

もっとも、浅溝のミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2では、少しの雨でハイドロプレーニングを頻繁に生じるのに参ったが、ラディカルの意を示すRとは、そういうキャラだと思って乗るべき存在である。



こうした速さに特化した象徴的モデルに人々の目は集まるのは当然ではあるけれど、本質はノーマルやSにあるという思いは強い。日常使いが出来、その環境でもドライビングに心地よさを感じられ、スポーツ・ドライビングでは意のままに操れるかのような仕草を見せつつ、最後の一線はスキルを問う。ミドシップ故にロードスターまでの寛容さはないが、よくぞここまで調教したと思わせてくれる。ロードスターとともに似たものがない貴重な存在である。

迫る新たな法規の壁は容易には超えられないだろうが、少しでも長く現役でいて、より成長を遂げて欲しいと思うのはあまりに贅沢だろうか。

文=斎藤慎輔 写真=望月浩彦


■アルピーヌA110R チュリニ
駆動方式 エンジン・ミドシップ横置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4255×1800×1240mm(エアロキット付き)
ホイールベース 2420mm
車両重量(車検証) 1100kg
トレッド(前/後) 1555/1550mm
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1798cc
最高出力 300ps/6300rpm
最大トルク 340Nm/2400rpm
トランスミッション 7段ツイン・クラッチ式自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク(前後)
タイヤサイズ (前)215/40R18(後)245/40R18
車両本体価格(税込) 1550万円~

■マツダ・ロードスターRS
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 3915×1735×1235mm
ホイールベース 2310mm
車両重量(車検証) 1040kg
トレッド(前/後) 1495/1505mm
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHC
排気量 1496cc
最高出力 136ps/7000rpm
最大トルク 152Nm/4500rpm
トランスミッション 6段MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤサイズ 195/50R16(前後)
車両本体価格(税込) 374万5500円

(ENGINE2024年11月号)

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