2024.12.14

LIFESTYLE

冬の夜は、ヴィオラとチェロの響きが心に染みる いま注目はこの3人のアーティスト 低弦の調べを愉しもう!

1995年ロンドン生まれのヴィオラ奏者ティモシー・リダウトは、歴史に名を残すイギリスのヴィオラ奏者ライオネル・ターティス(1876~1975)を子どものころから敬愛し、彼の名を冠したコンクールで優勝を果たした。

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ヴィオラとチェロは「人間の声にもっとも近い響き」を備えている。その低弦の音色は聴き手の心身を癒し、活力をもたらし、音楽を聴く歓びを与えてくれる。

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フランス人の両親のもとカナダに生まれたジャン=ギアン・ケラスは、バロック音楽から現代作品、ワールドミュージックまで多岐にわたるレパートリーを誇り、録音もチェロの主要レパートリーはほとんど網羅している。超絶技巧をごく自然に聴かせるテクニックと、叙情性に富み豊かな歌心に満ちた音色が高い評価を得て、世界中から引っ張りだこの人気だ。 



2002年には気の合う仲間とアルカント・カルテット(弦楽四重奏団)を結成。彼らは来日公演も重ね、バラエティに富んだ選曲で、もぎたての果物のような新鮮な演奏を披露。ケラスは「カルテットで演奏するようになり、自分が自由で解放的になった感じがする」と語る。 

そんなケラスが2度目のバッハ「無伴奏チェロ組曲」全曲録音を完成させた。自由闊達で深遠さと洒脱さが増し、舞曲への強い共感も印象的。音楽は天空へと飛翔するような空気を生む。今回はダンスカンパニー「ローザス」とのコラボが映像収録され、各舞曲がダンサーの動きとともに生命力を放ち、胸に迫る。 

フランスのチェロ界を牽引するゴーティエ・カピュソンのモットーは、「聴き手と音楽で幸せを分かち合うこと」。これまでチェロの多様なレパートリーを録音してきたが、いよいよエルガーとウォルトンというイギリスの2大傑作に着手。愛する楽器、1701年製ゴフリラーとともに深々とした音色、緊迫感と集中力に富む演奏を行っている。



「これはひと目惚れした楽器で、よき相棒。音色は官能的で温かみがあり、内的な強さも備えている。キャラクターと魂をもち、一緒に音楽を奏でていると日々新しいことを発見する感じ」

エルガーは悲壮感ただよう冒頭からチェロの叫びのような音が胸に突き刺さる。ウォルトンは思慮深さと情熱が全編を覆い、凛とした歌を聴かせる。

ヴィオラの新星に期待 

1995年ロンドン生まれのヴィオラ奏者ティモシー・リダウトは、歴史に名を残すイギリスのヴィオラ奏者ライオネル・ターティス(1876~1975)を子どものころから敬愛し、彼の名を冠したコンクールで優勝を果たした。ターティスはイザイ、ティボー、クライスラーら名手と共演し、演奏家のみならず編曲家、作曲家としても活躍、ヴィオラの独奏楽器としての地位を確立した。 

 


そのターティスが愛奏した作品を集めた「ライオネル・ターティスに捧ぐ」はリダウトの若き才能があふれた演奏で、みずみずしく熱くひたむきな音色が満載。「ヴィオラを人間の声のようにうたわせたい」と願うリダウトの低弦の響きが胸の奥に深々と、心地よく響いてくる。ヴィオラ界の新星に期待したい!

文=伊熊よし子(音楽評論家)

(ENGINE2025年1月号)

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