2024.12.08

CARS

992.2型こと新型ポルシェ911カレラ日本初試乗 ハイブリッドじゃない方の進化を確かめる

992.2型と呼ばれる後期へ進化した水冷になってから4世代目を数える新型ポルシェ911がいよいよ日本に上陸。その初試乗が叶った。試乗コースは残念ながらナンバーの関係で公道ではなく、クローズド・コースのポルシェ・エクスペリエンス東京(PEC東京)だったが、その印象をモータージャーナリストの藤原よしお氏がリポートする。

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ついにこの時がやってきた

日本に上陸したばかりの992.2と呼ばれる新型911に試乗できる! と聞いて、正直浮き足だった。実物は2024年6月のル・マン24時間の会場で見ているものの、果たしてどのような進化を遂げているのか、ずっと気になっていたからだ。



GTSではく、普通のカレラ

しかし、会場となったPEC東京で待っていたのは、3.6リッター水冷フラット6に電動シングル・ターボと電気モーターを組み合わせた話題の「T-ハイブリッド」を備えた911初のハイブリッド・モデルとなった「911カレラGTS」ではなく、3リッター水冷フラット6を搭載したピュア内燃機のベーシック・モデルである「911カレラ」であった。

「なんだ、ハイブリッドじゃないのか」。そう正直に思ったことを告白しておく。なぜなら、新型911カレラは2024年5月に発表されたプレスリリースを読む限り、リア・リッド・グリル直下に配置したインタークーラーを備える先代911カレラGTS譲りの3リッター・フラット6ツインターボは、992.1カレラに比べ最高出力で9psアップの394ps/7500rpmを発生しているだけで、最大トルクに至っては450Nmで同値。ハイブリッドになったGTSと比べると進化の度合いが小さいように思えたからだ。ちなみに0-100km/h加速タイムは4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)で、0.1秒アップ。最高速は294km/hと1km/hアップしている。



ひと目で新型とわかる

あまり変わり映えしないのではと思っていた新型911カレラだが、外観はGTSのフロント・バンパー・グリルの奥に備わるアクティブ冷却エア・フラップのようなキャッチーな特徴はないものの、明らかに新型だとわかるくらいに変わっていた。

まず目に止まるのがフロントまわりだ。マトリックスLEDヘッドライトにすべての機能を統合したことにより、ヘッドライト下にあったウインカー・レンズがなくなりスマートな顔立ちになったほか、リア・ガーニッシュまわりやナンバー位置の上がったバンパーなど、より凝縮感が増した印象だ。



911らしさが薄まる

インテリアはパッと見の印象こそ変わらないものの、アナログのレヴ・カウンター(エンジン回転計)がなくなってメーターナセルがオール液晶ディスプレイとなったり、エンジン・スターターがキー・タイプからボタン式となるなど、911らしいアイコンが姿を消している。

なお、試乗車はブレーキやタイヤこそスタンダードではあるものの、スポーツクロノパッケージ、ガラス・サンルーフ、軽量遮音ガラスなどのオプション装備を装着した個体だった。



明らかに軽快

まだナンバーの登録ができていないため、今回はPEC東京のトラックモジュール内での試乗となったのだが、9psのパワーアップや0.1秒の加速タイムの差をはじめ、その進化を感じ取れるのか不安だった。ところがコースインして最初のコーナーでその不安は消え去った。ステアリングの入力に対するノーズの反応が明らかに軽快になっていたのだ。

991型から992型に変わったときに最も印象的だったのは、ワイド・ボディを採用し前後トレッドが拡大したことで、とくにリアのスタビリティが大幅に向上していたことだった。そのおかげでより自信をもって速くコーナーを駆け抜けることができるようになった反面、前輪のも安定感が高まり、お尻でトラクションを感じながらスウィート・スポットを探すようなRR(リア・エンジン後輪駆動)独特のエッジの効いた挙動が希薄になった印象も受けた。

それはRRの欠点を克服しようとしてきた911にとって、決してネガティブな進化ではなかったのだが、992.2型では、リアのしっかりとしたグリップ感はそのままに、クルマ全体が衣を1枚脱ぎ捨てたかのような軽やかで、シャープな動きが新たに加わっていたのだ。そして走行モードを「ノーマル」から「スポーツ」、そして「スポーツ・プラス」に変えると、グッとファーカスが合って解像度が増したかのように、その印象はさらに強く、濃厚になっていく。ちなみに、車重は1520kg(DIN)と変わっていない。



コントロールの余地を残す

オフィシャル的に992.2型のシャシーに関する変更点についてのアナウンスはなく、一体何が変わったのか、その明らかな要因を突き止めることは叶わなかったが、場所をドリフトサークルに移し、低ミュー路面で定常円旋回を試みると、ESC(姿勢安定制御装置)がオフの場合は軽くスロットル・ペダルを踏みこむだけで、あっという間にスピン・モードに入ってしまうのに対し、ESCをオンにするとガチガチに制御が介入するのではなく、ある程度テールが滑ることを許容し、ドライバーがコントロールする余地をきちんと残してくれるのには驚いた。その際の電子制御の介入の仕方も「オレ、スライドコントロールが上手くなったかも」と錯覚してしまうほど実に自然でスムーズなのだ。おそらく、このあたりにも992.2のドライバビリティの秘密があるのかもしれない。

このように、997時代に戻ったかのような軽快な挙動と、992型になって手にいれた盤石のスタビリティが絶妙なバランスで同居している992.2型の進化の伸び代は、こちらの想像以上に大きく、そして好ましい方向に進んでいた。



3台の新型911を導入

今回の試乗で感じられた以上の深淵については、公道での試乗までお預けといったところだが、限られた時間のなかで、992.2型に関してこれだけの情報量を得られたのは、さまざまな状況でのドライビングに特化、集中できるPEC東京という環境に拠るところが大きいと思う。

そんなPEC東京ではすでに3台の992.2カレラがドライビング体験用の車両として用意されており、予約が可能になっている。気になる向きには、ぜひ一度ご自身の手で体感することを強くお勧めする!



文=藤原よしお

(ENGINE WEBオリジナル)

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