2025.01.05

CARS

ホンダの未来を支えるのは、こういうファンの熱い想いだ! S2000、S660、シビック・タイプRを愛するオーナーの「パワード・バイ・ホンダ!」

多くの人が夢中になった第2期ホンダF1。そのスポーツ・マインドを受け継ぐモデルに情熱を注ぐホンダ愛好家のこだわりのカーライフを紹介。

ひとつのブランドにこだわって複数台を所有する愛好家は少なくない。そのなかでも特に熱量が高いと感じるのがホンダのファンである(筆者調べ)。今回ご紹介する野村光秀さんもそんな熱心なホンダ愛好家のひとり。一見すると謹厳実直な印象ではあるが、お話を伺ってみると、その情熱の度合いはかなり高かった。

もっとも入手できるパーツも減ってきていることから「少しいたわってあげたい」と語る野村さん。日常では状況に応じてタイプRとS660を使い分けるという。


野村さんのガレージを訪ねたのは、澄んだ空気が心地よい冬晴れの休日。ガレージには青空に映える鮮やかなボディ・カラーをまとったS2000とシビック・タイプR、S660の3台が肩を並べていた。いずれもホンダを代表するスポーツカーである。

なかでもひと際目を引いたのが、ニューインディーイエロー・パールのS2000である。その色の鮮やかさだけでなく、大型のエアロ・パーツや大径タイヤ&ホイールで武装した迫力あるスタイルが印象的だ。許可をいただいたので明かすが、このオープン・スポーツが掲げる登録ナンバーは「2200」である。その仕様やパッと見の程度の良さ、そして登録ナンバーから最終型に近いものだろうと予想したが、実際は違った。



「このS2000は2004年式の中期型、鈴鹿工場製の2リッターモデルです。それまでの高根沢工場から鈴鹿に生産が移管された際に型式が200になったんですね。じゃあS2000の200型だということでナンバーを2200にしたら後期型として2.2リッターモデルが出ちゃいまして(苦笑)。リア・ウィングはトランクフードも含めて2.2リッターのタイプSのものに交換してありますし、ロールバーの部分も同じような仕様だから余計に間違えられやすく、ちょっと捻ったのが裏目に出てしまいました。ミーティングなどでいつも同じ説明をしています。鉄板ネタですね」



きっかけはホンダF1

愛好家らしいマニアックかつお茶目なエピソードを教えてくれた野村さんは、免許取得からずっとホンダ車と過ごしてきた。きっかけは1980年代後半から90年代初頭にかけてのホンダF1の活躍だったという。

「当時のホンダF1に憧れましたね。だから免許を取って最初に選んだのも2代目インテグラ。“かっこインテグラ”のあれです。F1を真似て“POWERED by HONDA”のステッカーを貼っていました」

さらにホンダ独自のVTECも野村さんを引きつけた要素だという。

「工業高校の機械科出身なのでVTECの動弁機構には強い興味がありました。インテグラに初採用されたとき、複雑な構造でもちゃんと機能するのかって懐疑的ではありましたが、実際に乗ると4000rpmあたりで回転感が変わって、サウンドも心地よくなって。その後にNSXが出て、それがルマン24時間レースで勝って、VTECの信頼度も増して、やっぱりホンダは凄い!って」



野村さんのホンダ愛はS2000を手に入れてからさらに深まった。

「仕事関係の方に『S2000を買わないか』って勧められまして、以来20年、ずっと手元にあります」

今回、野村さんのガレージに伺ってすぐにS2000に目を奪われたのは、このクルマにたっぷりと注がれてきた愛情が、オーラのように輝いて見えたからかもしれない。



「クルマの素性の良さを生かしながら、自分好みに仕上げていきたくて、足回りやエアロ・パーツ、シートなどはもちろん、ウォッシャー・ノズルやワイパーなど細かい部分にも手を入れてあります。海外仕様のノズルは噴霧エリアが広かったり、ワイパーはエアロ・タイプになっていたりするので、高速でも有効なんですよね」

国内外のパーツリストを入手しては品番をチェックし、その違いを調べるという凝りよう。有効なものは取り寄せて自身で交換するこだわりは、まさにホンダ愛そのものである。

自分色に染め上げる楽しみ

文字どおり手塩にかけたS2000とともに、他の2台のホンダにもたっぷりと愛情が注がれている。

「セカンド・カーにフィットやCRZなどを選んではきたんですけど、実際は妻がそれほど運転することもなく、2ペダルにこだわる必要もなくなったんですね。そんなときに出合ったのがシビック・タイプRです。5ドアで使い勝手がよくてほんと便利。実は乗り心地も悪くないんです」

チャンピオンシップ・ホワイトが誇らしげな野村さんのシビック・タイプR。タイプRとしては5代目に当たるモデルで、久しぶりにカタログ・モデルとして復活し、多くのファンを喜ばせた。


現在、野村家で最も稼働率が高いのがこのシビック・タイプRだそう。一見するとノーマルのようだが、ホイールやタイヤなどは交換済みだ。

「走行会のルールにもよりますが、たとえばもてぎのサーキットでは基本的にS2000はロールバーがないと本コースを走れません。でもタイプRはこのままでOK。ダンパーはそもそもアダプティブ・タイプなのでモード切り替えでセッティングが変更できますし、グリップ力や制動力を鑑みてタイヤやブレーキ・パッドも替えてあります。パワーのあるタイプRは、もてぎの本コースに合っていると思います。ほんと楽しいですね」

日常で便利な5ドア車といえども、そこはやはり最高出力320psを誇るスポーツカー。さほど手をかけずともサーキットも存分に楽しめるのがポイントだそう。

2021年に手に入れたS660は下駄がわりというが、これもかなりお気に入りの一台のようである。

取材当日の青空のようなプレミアムビーチブルー・パールのボディ・カラーが目を引くS660は、こちらもクルマ仲間の紹介で出合った1台。


「660ccの64psではパワー不足を感じることがあったのでECUのマッピングを変えてありますが、おかげでパワー感に不満もなく、思い切って踏めます。やはり軽いって正義ですよね。S660はいわゆるタルガトップなので開放感は控えめですが、軽快な走りも含めてS2000に通じる楽しさがあります」

ベーシックなβグレードだが、シートはインテリア・トリムの色に合わせた小型のバケット・シートに換装。着座位置も低くなりスポーティな雰囲気が増している。


これら3台には運転する楽しさがベースにあり、それをさらに自分色に染め上げることができるのが特徴であり魅力だと語る野村さん。そんなクルマたちを通じて人のつながりが生まれ、クルマに対する情熱を共有できることが、この3台のホンダとの趣味生活を続けられるモチベーションにもなっているという。

「イベントなどに参加すると、本当に好きな人が多いんだなって実感しますね。そこにはこれらの開発に携わられたエンジニアの方たちもいらっしゃって、裏話とかを聞くのもほんと楽しいんです。やはり彼らもホンダへの熱い想いを持って携わっていらっしゃる。だからこそ、たとえばS2000のパーツ供給やイベントへの後押しなどでも、メーカーにはもっと頑張ってほしいとも思います。そうなればファンとしては嬉しいですし、さらにみんなでホンダを盛り上げていけますから」

野村さんのようなファンの熱い想いや声が、ホンダの未来を支える力になるのは間違いないのである。

文=桐畑恒治 写真=茂呂幸正

(ENGINE 2025年2・3月号)

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