2025.01.08

CARS

もう一度襟を正さないと 高平高輝の自動車10大ニュースの3位は日本車の信用を揺るがしたあの出来事

2024年も話題が豊富だった自動車業界ニュース。その中から、モータージャーナリストの高平高輝氏が気になった話題を10つ選び、ランキング形式でお伝えしている、「高平高輝の自動車10大ニュース」。3位にランクインしたのは、日本車の信用に関わるあの出来事だ。

第3位 型式指定をめぐるトヨタの認証不正事件

2024年3月期決算で営業利益5兆4000億円を達成(5兆円超えは日本企業初)し、圧倒的な強さを見せるトヨタだが、同時に2024年は型式指定の認証不正という不祥事に揺れた一年でもあった。



日産と三菱以外の4輪と2輪メーカーが関与

発端は2023年春、子会社のダイハツ工業の海外向けモデル4車種について、側面衝突試験の認証における不正行為が内部通報によって判明したことだった。続いて国内向けのロッキーおよびライズ(トヨタブランド)でも同様の型式指定に関する認証不正が発覚、さらに年末に公表された第三者委員会の調査結果によると、不正はすでに生産が終了した車種も含めたほぼすべての64車種に拡大、ダイハツは全車種を出荷停止することになった。トヨタの完全子会社となった2016年ごろから件数が増加していることも指摘された。

明けて2024年1月、国土交通省は特に悪質だとしてダイハツ・グランマックスとそのOEM車であるトヨタ・タウンエース、マツダ・ボンゴ(すべてトラック)について型式指定を取り消す異例の処分を下した。騒動はダイハツのみにとどまらず、トヨタ本体でも人気車種のヤリス・クロスやカローラを含めた計14車種について試験の際の不正行為が判明、さらに日産と三菱を除いたほとんどすべての4輪と2輪メーカーが何らかの不正行為を行っていたことが明らかになった。



ルールの意味をもう一度再考

ちょっと問題と感じるのは、トヨタ本体の不正が明らかになってからは「あのトヨタが不正行為に手を染めるほどだから、認証制度のほうに問題があるのではないか」、「官が民をいじめるのは昔からあったこと」などという論調が見られたことである。

確かに不正とされた試験方法には手間を惜しんだがための軽微と思われる違反もあったが、エアバッグをタイマーで強制的に着火するなどの悪質なものもあり、なにより定められた細則を自分の判断で都合よく解釈してはルールの意味がない。試験に手間暇がかかることは当然、そのルールが現実に則していないならば、ルール違反する前にそれを改善すべきである。

こういうと、だから日本は「ガラパゴス」のままなんだ、という反論があるが、日本の自動車産業は今やガラパゴスどころか、その生産の8割以上を海外で売って稼いでいる。日本国内市場だけでは乗用車メーカー8社を支えることなどできない。そのために国連のWP.29の下、国際的な相互認証制度に加わっているのだ。

保護主義的な動きが台頭する中で、隙を見せて日本車の信用を落とさないためにももう一度襟を正さなければならない。



文=高平高輝

(ENGINE WEBオリジナル)

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