2025.01.09

CARS

自動車ジャーナリスト高平高輝が選んだクルマ業界の2025年の動向を捉えるための10大ニュース なんと2位も清水草一氏と同じEVを巡るあの話題がランクイン

2024年に自動車業界で起こったニュースの中から、高平高輝氏の心に残った話題を10つ選び、ランキング形式でお伝えしている「高平高輝の自動車10大ニュース」。1位に続き、2位のニュースも清水草一氏が選んだ10大ニュースと同じ順位になりました。

第2位 EVシフトは減速するか

EU委員会のいわゆる「2035年ZEV法」(2035年には新車登録をゼロエミッションビークルに限る)を受けてEV化を急速に推進していた欧州メーカーが揺らいでいるようだ。EV販売が予想した通りには伸びず、足元の経営を圧迫していることが理由である。



EUの電池メーカーが相次いで破綻

いち早く「2030年までに新車販売を100%EVにする」と発表していたボルボが今年9月に方針を修正し、「30年にEVまたはPHEVを90%」とした。またメルセデス・ベンツも“市場が許す限り”という条件付きながら、2030年に新車をすべてEV化するという目標を今春に取り下げ、「2020年代後半までにEVとPHEVのシェアを50%に引き上げる」と修正した。

さらに鳴り物入りで設立されたスウェーデンの電池メーカー、ノースボルト社も量産開始前に経営破綻した(英国のブリティッシュボルトも2023年に経営破綻)。同社にはVWも出資、BMWは電池納入の優先契約を結んでいたがそれも水泡に帰し、その設備と人員は中国のCATLが買収するという噂がある。



事はそう単純ではない

「ほーら、言わんこっちゃない」と得意げな顔を抑えきれない人もいるだろう。EV化に遅れを取っている、といわゆるEV推進派から指摘されていた日本のクルマ好きがそう思うのも分かるが、事はそう単純ではない。どっちが正しい、で済む問題でもない。我らが日産はいち早くEVに軸足を置いているし、ホンダも2040年までにEVおよびFCEVに移行することを明らかにしているのだ。

EUも決して一枚岩ではない

温暖化抑止のために脱化石燃料を推進しなければいけないことは変わらないが、EUのリーダーを自認するドイツとフランスがそれぞれに内政と経済に苦しんでおり、EU委員会が何と言っても自国の利益を損なうわけにはいかない。そもそもEU各国で電源構成や人口、主要産業は異なり、特にドイツはVWが創業以来初の工場閉鎖が噂されるほど苦境に追い込まれている(労組との交渉の結果、工場閉鎖ではなく3.5万人規模の人員削減になりそうだ)。中国製EVに追加関税を課すという方針も、中国との関係が深いドイツメーカーにとっては痛し痒しといったところだろう。EUも決して一枚岩ではないのである。

性急とも言えるEUのEV推進政策はおそらく今後も少しずつ修正されていくはずだ(既に合成燃料を使用するエンジン車を認める方向だ)。将来への投資は不可欠だが、それで会社が傾いては元も子もない。自動車産業に限らず、簡単に白黒つけられたら苦労はない。中国勢との競争の中でどうやって生き延びるか。それはEUメーカーだけの話ではない。



文=高平高輝

(ENGINE WEBオリジナル)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement