2025.04.13

CARS

「21世紀最強の内燃機関」と渡辺敏史(モータージャーナリスト)が驚嘆したクルマとは? 上半期注目の5台の輸入車にイッキ乗り!

渡辺敏史さんが乗ったのは、ボルボ EX40、アバルト500eツーリズモ・カブリオレ、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV、ジープ アベンジャー・アルティチュード、フェラーリ・プロサングエの5台

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今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗! 

渡辺敏史さんが乗ったのは、ボルボ EX40、アバルト500eツーリズモ・カブリオレ、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV、ジープ アベンジャー・アルティチュード、フェラーリ・プロサングエの5台だ!

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター「
哲学は不変」

Cセグメント系SUVであるXC40をベースとしたボルボ初の量産BEVは、登場から約5年の時が経つ。

当初はFWDベ ースだった 駆 動 系 はRWD系 へと移 行、2024年秋からはボルボのBEVを総称する「EX」が充てがわれての改名……と、多くの変遷を経ている。

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター

これもBEV黎明期ゆえの惑いか……と思いながらクルマをみてみると、確かに内外装にも大きな変化はない。が、それは旧態然に対するネガティブな印象でもない。基本意匠のレベルが高くて褪せた感じがない上に、適度にアナログ感のある操作系も馴染みの良さが感じられる。そしてボルボといえば放っておいても期待してしまう椅子の立て付けや掛け心地も良好だ。

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター

同様にこなれているのが走りの味付けだ。ツイン・モーターということもあって踏めば存分に速いが、動力性能や運動性能でも極端な刺激は追わず、速度調整のしやすさや加減速時の車体の動きの滑らかさ、中立的なハンドリングなど、ともあれ先立つものは安心と快適。そんなボルボの哲学はこのクルマでも不変だった。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ「示唆に富んだ1台」

リッター100ps超の小排気量ターボ・ユニットという、刺激的なパワートレインを搭載したBセグメント以下級のマイクロ・ホットハッチとして日本では人気を博したアバルト500シリーズ。ちょっとヤンチャなそのキャラクターを気の利いたシティ・コミューターとして普段使いするユーザーも多くみられた。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ

アバルト500eはBEV化の副産物である快適性の伸びしろ著しく、骨格の改変によって動的質感も向上している。従来からのセカンドカー的なニーズにはピタリとハマりそうだが、BEVの選択肢も増えた今、らしさはどこにあるのという話にもなりそうだ。

アバルト500eツーリズモ・カブリオレ

デザインや設えももとより、その最適な答えが車内をもピリピリと震わせる勢いのサウンドということになる。当然に内燃機は持たないがゆえ、スピーカーからのアウトプットだ。ギミックといえばそれまでだが、音や振動というものがいかにクルマのエモーションと直結しているのかを思い知らされるのもまた確か。BEV時代を迎えるに、示唆に富んだ1台だ。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV「なんともメルセデスらしい」

音・振動の低減とアウトプットの滑らかさを求めて多気筒化を重ねてきたラグジュアリー・カーの歴史を振り返るに、それは動力源をいかにモーターに近づけるかの試行錯誤でもあったのだと思う。ゆえにこの手のクルマがBEVとなることには個人的には全然違和感がない。むしろロールスのスペクターと同じく、一気に究極解に辿り着いた感さえある。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

EQS SUVマイバッハの企画の趣旨、その一端が新種のショーファー・ドリブンというところにあるのは間違いない。実際、乗せられる側にしてみれば後席の居住性や快適性、ユーティリティなどサルーンにない長所はいくらも見つけられる。マイバッハ・モードのヌメッとしたライド・フィールは特筆点のひとつだろう。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

一方で、いざステアリングを握ってみると、クルマの動きの素直さや懐深さがなんとも心地いい。巨体をしてコーナリングも破綻なく、軽快とはいわずとも深いところまでリニアに振る舞ってくれる辺り、なんともメルセデスらしいなと思わされる。

ジープ アベンジャー・アルティチュード「日常車としての長所アリ」

アベンジャーはジープ・ブランドでありながら、ステランティスのポートフォリオに則って生産は欧州となる。用いるアーキテクチャーはeCMP、初出はプジョー208のBEVモデルだ。それゆえサイズはBセグメント級ということになるが、車格的には全然そんな風にみえないのは高さ方面の伸びやかさに加えて、絶妙に角張った意匠的な巧みさもあってのことだろう。ことさらアメリカ出自の朴訥感をブランドに期待する向きにはちょっと掴めないところもあるだろう。

ジープ アベンジャー・アルティチュード

が、収益性の課題もあって世界的にみてもなかなか参入が難しい小型BEVというカテゴリーで先駆けて風呂敷を広げられていることは、将来的に何らかのプラスに繋がるのではないかと思う。運動性能についてはもちろんラングラー・ルビコンのようなタフさは望めずとも、緻密な駆動制御を基にした悪路モードを備えるなど、日常+αの環境には応えるものにはなっている。アップライト・パッケージによる居住性や視界の良さも日常車としての長所だ。

フェラーリ・プロサングエ「唯一無二」

21世紀最強の内燃機関であるF140系12気筒。エンツォの登場以来、四半世紀近い時を紡いできたこのユニットが、12チリンドリに乗じて継続されたことはクルマ好きにとって大きなニュースだった。

フェラーリ・プロサングエ

一方でこのV12ユニットは、プロサングエとの組み合わせでラグジュアリー・モデルとの相性という面においても侮れない素性をもつことを示した。ごく低回転域からじんわりと湧いてくる躾のいいトルクバンド然り、高速巡航などのパーシャル域でのらしからぬ滑らかなフィーリング然り、サルーンとの組み合わせでも十分に通用する品性が備わっている。もちろん、中高回転域での吹け上がりのシャープさやパワーの伸び、それに伴うサウンドの恍惚ぶりは健在だ。

プロサングエの白眉は機械式姿勢制御サスによる魔法のようなフットワークがもたらす濃密な操縦感覚だと思う。そして、これあってこそ大人4人がくつろげるスペースで最高の内燃機体験がもたらされるのもまた事実。技術と官能が相互に高みへと登りゆく、唯一無二の1台だと思う。

「柔らかな頭をもっている」渡辺敏史から見た、いまのガイシャのここがスゴい!

今の輸入車は何がすごいのか。思うに、走る曲がる止まる的な動的ハードウェアにおいて致命的なほど日本車との差異を感じる機会は減っています。無論一部の例外はありますが。



すごいのはそういうところより、むしろクルマ好きにとって本質外だったインフォテインメントやアンビエントなどの内装領域かもしれません。

前述的にいえば、見える光る動くみたいなところといいますか、そういう二の次的だったガジェットっぽいところをみんな一生懸命やっていることは、EQS SUVやミニ、スペクターあたりをみれば伝わるのではないかと思います。

まぁ多分に主要市場の嗜好に合わせているところではありますが、本来こういうことってドイツ勢に蔑まれていた昔の日本車の十八番だったわけで、やっぱり日本のメーカーもお客さんも、こういったバカバカしいことを大マジでやるような柔らかい頭をもたないとダメだなぁと感じる今日この頃です。

文=渡辺敏史

(ENGINE2025年4月号)

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