2025.04.23

CARS

「ロードスターとモーガン、同時に楽しみたいならコレしかない」とお勧めする外車とは? 小沢コージ(自動車評論家)が5台の注目輸入車に試乗!

小沢コージさんが乗ったのは、BMWアルピナB3 GT、モーガン・プラス・フォー、ケータハム・スーパーセブン600、ミニJCWカントリーマンALL4、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUVの5台

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今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗! 

小沢コージさんが乗ったのは、BMWアルピナB3 GT、モーガン・プラス・フォー、ケータハム・スーパーセブン600、ミニJCWカントリーマンALL4、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUVの5台だ!

BMWアルピナB3 GT「
シェフの感性」

同じ一皿、素材でも料理人次第で「え?」ってほど味が変わる場合がある。それがいわばBMWとアルピナの違いだ。

BMWアルピナB3 GT

B3 GTも基本3シリーズで、エンジンはM3譲りの3リットル直6ビ・ターボだが、Mとは明らかに味の深さと柔らかさが違う。走り出しから足がしなやかでキモチいい。特に専用コンフォート系モードは素晴らしく、ステアリング・センターのしっとり感が違う。

S58ユニットは専用マネジメントで495psから529psに高められ、フロントに分厚いバルクヘッド補強、専用タービン、インテーク、エキゾーストが付き、8段ATもV12エンジン用の高トルク型。タイヤもピレリPゼロのアルピナ専用品だ。

BMWアルピナB3 GT

これでも職人技術は減ったのだ。かつてのエンジンは精密なバランス取りやポート研磨などがなされていた。ただ、職人作業はなくとも選びや配分で上質化は生み出せる。B3 GTはそのお手本だ。結局はシェフの感性なのだ。ちょっとした火入れや素材選びで味は変わる。確かにアルピナ自社開発生産は消えるが“アルピナ的味わい”はどこかに残せる気がする。

モーガン・プラス・フォー「クルマは基本道具であり、かつ走りや良質を買う」

嗜好品。だがあえて快適を嫌い苦労を買う禅寺修行が如きクルマがある。“走る大英博物館”たるモーガンだ。

創業1909年と100年以上も前で、今も変わらず戦前テイストのクルマを手作りし続ける激レア・ブランド。年間生産たった850台でトヨタやVWはもちろん、フェラーリやマクラーレンともビジネスモデルが全く違う。

モーガン・プラス・フォー

中でもプラス4は元々1950年生まれの“走るシーラカンス”だったが、約5年前に名がプラス・フォーとなり一気にモダン化。

鉄フレームに木板張りのボディはアルミ・シャシーに、板バネ・サスは4輪ダブル・ウィッシュボーン、エンジンもBMW製直4になり、「もしも今の技術で戦前オープンを作ったら」というコントも驚くモデルになった。

モーガン・プラス・フォー

結果見た目は古めかしいが、乗ると予想以上にボディがしっかりしていてエンジンも回る。だがステアリングは鈍く、道の継ぎ目で跳ね、風の巻き込みは修行さながら。クルマ古典主義をトコトン愛する究極の達人向けである。

ケータハム・スーパーセブン600「現代スポーツの比じゃない」

徹底的に人馬一体、人がクルマと同化して走りたいならマツダ・ロードスター、1960年代の英国人になりきりたいクルマ文化人にはモーガンがあるが、どちらも同時に得たいならコレしかない。スーパーセブンだ。

ケータハム・スーパーセブン600

正直、衝突安全的に今の世界じゃ作れない。歴史を重んじるイギリスだから作れるオキテ破りの古典ピュア・スポーツで、空力的洗練はモーガン以上にない。

全面フラットガラスのウィンド・スクリーンは乗り降りで手をかけると歪み、細めのノーズで足元は超狭い。厚底靴だとブレーキとアクセルを同時に踏みそうだ。クラッチは重めでシフトはカッチリしているが動きは渋くストロークが短すぎるので馴れがいる。

ケータハム・スーパーセブン600

パイプ・フレームはロードスターに負けるが高剛性で、スズキ製658ccターボは85psなので非力だがなんせ440kgという非合法ギリギリの軽さ。速さと臨場感は現代スポーツの比じゃない。タイヤ太めでステアリング重めでフィールこそ粘るがまるで裸で町を走るが如き一体感。しかもコレが軽なんてちょっとヤバい。

「特にミニ味が濃い」小沢コージ
 
今じゃ8年連続でVWゴルフを抜き「日本で一番売れる輸入車」となったBMWミニだが、最大の矛盾は「ミニじゃなくてデカ」とぼやかれるSUVモデル。

クロスオーバーと言われていた初代ですら、ミニ初の全長4m超えの4ドアで4駆アリ。この3代目ではさらにデカく、先代比で13cm長く1.5cm広く6.5cm高くなって全長4.5m弱。ホンダ・ヴェゼルより全然デカくなった。

ミニJCWカントリーマンALL4

それでもミニっぽいのがミラクルで、中でも最速JCWカントリーマンは特にミニ味が濃い。

フォルムは特徴的なショート・オーバーハング&ショート・ボンネット&ロング・ホイールベースで、新世代8角形グリルや6角形ライトがいかにもデジタル・キャラクターっぽい。

ミニJCWカントリーマンALL4

インパネも世界初の丸型24cmの有機ELディスプレイがミニ的でオシャレ。

極め付けは走り。316ps/400Nmの2リッターターボは下から力強くガチでミニらしい速さで、ハンドリングはサイズを感じさせないクイックさ。生々しいダイレクト感は薄れたが半分BMW風味のゴーカート・フィールあり。これは現代の奇跡でしょ。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV「意外に民主的かも?」

そもそもメルセデス超えのグレートすぎるマイバッハで、しかもEV専用サブ・ブランドとして産まれたEQシリーズの、さらにSクラスSUVに相当するEQS SUVベースのEV。

その権威の重ね着っぷりにまずビビるが、正直見た目はサイズ以上に可愛い。全長5.1mに全幅2m超えだが、太めの超空力フォルムがデカさを和らげる。セダンじゃなくて逆に良かった、である。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

ただし乗ると全面キルティング加工されたホワイト本革内装に圧倒され、超巨大ディスプレイと相まって走る宇宙船の如し。しかもベースのEQS SUVと違い、広大な室内を4座に割り切った超贅沢空間。対抗するとしたらレクサスLMぐらいだが、冷静に見るとこっちの方が民主的で疲れないかも。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

まずリア席からの壁のない開放感は気楽。LMのパーティション付きはドライバーが下僕っぽくなってしまう。なによりサイズの割にフラットな走りは衝撃的。LMは意外にピッチング激しく酔いそうになるがそれは皆無。きっとこれを買える人は少ないはず。だが全員がきっとキモチいいのだ。

「母国で求められる考え方」小沢コージから見た、いまのガイシャのここがスゴい!

昔ほど技術や質感の差は当然無く、すべては母国(メインマーケット)で求められる性能、考え方の差だ。

高速150km /h以上の安定感、ステアリングやパワーフィールの良さはドイツの主にベンツ、BMW、アウディ、楽しさと安心感のバランスはアルピナ、ポルシェがいい。今もぶっちぎり。



ジープに代表される力強いデザインや骨太なタッチはアメリカ車ならでは、モーガンやスーパーセブンのシーラカンス的モノ作りもイギリス車でしかありえない。

逆にスマホライクな使い勝手とコスパならBYD、ヒョンデなどが優れている。アジア車に抵抗ある人も多いだろうがコレは本当。ヒョンデ・アイオニック5Nのデジタルエンタメ度はどのメーカーも「やられた」と思っている。

日本車のメリットは端的に燃費とコスパと耐久性。差というより「考え方の違い」「歴史の差」だ。ラーメンは日本がブッチギリ、牛ステーキならアメリカが旨いのと同じなのだ。

文=小沢コージ

(ENGINE2025年4月号)

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