2025.04.26

CARS

【海外試乗記】マセラティGT2ストラダーレにエンジン編集部の村上がスペインのアスカリ・サーキットで試乗 とにかくGが凄い! コーナリング中は黙って横Gに耐えるしかない


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身の丈にあった練習ができる

試乗はすべてインストラクターと一緒に乗り込む方式で行なわれた。一周5.2kmほどのアスカリ・サーキットに、まずはインストラクターの運転する助手席に乗ってコース・インした。「ここは走ったことがあるか」と訊かれたので、「何度も走っているし、去年は新型ポルシェ911の国際試乗会でも走った」と答えたら、「それなら良くわかっているな」とばかりにフンフンと頷いて、スポーツ・モードで慣熟走行した後、いきなりコルサ・モードで全開走行が始まったのには、正直たまげた。



とにかくGが凄い。コーナーから立ち上がってアクセレレーターを踏み込むと、ドーンと背中から押し出されるように加速し、シフト・アップするたびにガコン、ガコンとショックが襲ってくる。ブレーキングでは3点式ベルトでは足りないくらいに身体が前に持って行かれ、コーナリング中はシートの両脇を掴んで、黙って横Gに耐えるしかなかった。終いには、お尻を少し流しての限界走行まで披露してくれたのは有難かったというべきか、どうか。3周の走行を終えてクルマから降りた時には、足元が少しフラついていた。



少し休憩した後、今度は自分でステアリングを握る順番がやってきた。まずはスポーツ・モードで走る。先ほどの印象があるので、恐る恐る走り出したのだが、これが呆気ないほどスムーズに動き出したのに、まずはビックリした。レーシングカーを走らせる時のような低速時のギクシャク感はまったくない。そのままスーッと走り出して速度を上げていくと、ステアリングもペダル類も、すべての操作系がギュッと引き締まった印象で、入力に対して遊びが少なく、極めてシャープかつリニアに反応することがわかってきた。足回りもかなり固められているのだろう。コーナーでのロール感が少なく、スッと向きを変える印象がある。まるで路面に吸いつくように走るから、安定感は抜群で安心感もあるけれど、間違って急な操作をしようものなら、どこかに飛んで行ってしまいそうなピーキーな感じも漂わせている。



2周目からはかなり速度を上げて走ったが、速度を上げれば上げるほど路面に吸いついて安定していく感じは、レーシングカーに近いものなのかも知れない。そして、カーボンモノコックの剛性感というのはこんなに高いものかと思えるくらいに、硬いものに包まれている感じがある。

2セット目ではコルサ・モードで走った。スポーツ・モードより明らかにステアリングの操舵力が重くなり、足も硬くなる。パドルを操作するたびにシフト・ショックが襲ってくるし、ブレーキング時にもデリケートな操作をしてやらないとギクシャクしてしまう。あまりにクルマの持っているポテンシャルが高いので、そのまま走っているとどんどんペースが上がってしまうのだが、そうなると急激に運転の難しさが増してくる。ちょっとブレーキを残しすぎたり、ステアリング操作が遅れただけでも、お尻がムズムズする感じになるし、とにかく常に正しい入力を極力丁寧にしてやらないとうまく走らせられないのだ。その意味ではアマチュア・レーサーが運転の練習をするのに最適のクルマだと言えそうだ。ドライブ・モードがコルサの中でも4段階あり、自分の運転レベルに応じて制御の程度を選べるから、身の丈にあった練習ができるだろう。

クーリング・ラップで隣のインストラクターと話していたら、面白いことを言い出した。実は彼はフェラーリでGT3レースに出ているレーシング・ドライバーだというのだ。そこで「フェラーリとマセラティの違いは?」と質問したら、「マセラティにはどこかエレガンスがある」という答えが返ってきて、なるほど、と私も大きく頷いた。レーシングカーとスポーツカーだけを一筋で作ってきたフェラーリと違い、ラグジュアリーなGTや4ドアも長年つくってきたマセラティには、レーシングカーでさえも、どこかエレガンスの香りがあるということだろう。

サーキットからホテルまで、公道をGT2ストラダーレで帰りながら、マセラティの持つエレガンスについて考えていた。ただし、公道で長く乗るには、このクルマの足はいささか硬すぎるように思ったけれど。

文=村上 政 写真=マセラティS.p.A.

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