2025.04.17

CARS

モータージャーナリストの森口将之がホットハッチの始祖、ゴルフGTIの最新モデルに試乗 大事にしているのは数値に現れない「速さ感」

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI/549万8000円

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ゴルフらしさが健在だったベーシック・モデルのアクティブに続き、前輪駆動のスポーツ・モデル、GTIに試乗することができた。果たして、元祖ホットハッチもゴルフらしさに満ち溢れていたのだろうか。モータージャーナリストの森口将之が試乗した。

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アウトバーンでベンツやBMWを追いまわした

フォルクスワーゲン・ゴルフGTIがデビューして、今年で50年になる。それ以前からアウトビアンキA112アバルトなど、前輪駆動の小型ハッチバックの高性能版はあった。でもそれらとゴルフGTIが違っていたのは、アウトバーンの追越車線をメルセデス・ベンツやBMWと互角に走れるなど、全方位的なパフォーマンスを備えていたことだ。



あれから半世紀。ライバルが生まれては消えていくという時の流れを経て、このほど日本に上陸した最新のGTIに乗って感じたのは、そのキャラクターに揺るぎなしということだった。

最新のGTIは世代で言えば8.5となる。つまり基本構成はゴルフ8のGTIと大きく変わらない。

取材車の外観でもっとも目立っていたのはオプションの19インチホイールで、第5~6世代のGTIに採用されていた5ホール・タイプがアップデートされて復活した。

それ以外ではフロント・フェンダーの赤いバッジの代わりに、フロント・ドアにGTIのロゴが入ったことも新型の特徴となる。VWにとっての看板車種のひとつだからこそ、アピールしたい気持ちは理解できるが、個人的にはこれ以上のアピールは控えてほしいとも思った。

インパネは第8世代で導入されたフルデジタルメーターに、12.9インチに大型化され操作性も改善したセンター・ディスプレイを組み合わせた。

第8世代でフルデジタルのメーターが導入されたインパネは、今回センター・ディスプレイが大きくなった。先月号で報告した普通のゴルフと同じだ。スポーツドライビングという観点からは、以前のサイズでも良いような気がした。伝統のチェック柄のスポーツ・シートに腰を落ち着け、2リッター直列4気筒ターボを始動させ、7段DSG(デュアルクラッチ式自動MT)の小さなレバーでDレンジを選び、走りはじめる。

そんなインパネの仕立てと比べると、GTIのアイデンティティのひとつでもあるチェック柄のファブリック・シートはノスタルジックに映るが、そう思う人のためにオプションでレザー・シートも用意される。室内のスペースは以前と同じで、身長170cmの人間であれば後席にも余裕を持って座れる。張りの強い着座感はゴルフそのもの。

2リッターのターボ・エンジンは、最高出力がゴルフ8時代から20ps上乗せされ、265psになった。いまや2リッターターボなら300ps以上を出す車種もあるわけで、速さそのものに驚きはないけれど、豪快なサウンドとともに一気呵成に吹け上がるフィーリングは、普通のゴルフとは明確に違っていて、数値に現れない「速さ感」も大事にしていることが伝わってきた。



それでいて電子制御フロント・デフロックのおかげもあって、加速時のじゃじゃ馬的な挙動は抑えられているなど、大人っぽいマナーを備えていることも印象的だった。

セグメントのトップ

それ以上に感心したのは、乗り心地とハンドリングのバランスの高さだった。これは19インチのホイールとタイヤとともにセットオプションで装着されていた、電子制御サスペンションのDCCの効果が大きいだろう。

コンフォート・モードを選べば、普通のゴルフよりも快適に思えるぐらいの乗り心地を届けてくれるのに、スポーツモードに切り替えればGTIの名にふさわしいリニアな身のこなしが安定したロードホールディングとともに体感できる。



しかもカスタム・モードでは、DCCのチューニングは10種類以上から任意に選ぶことができるし、サウンドは車外と車内を別々にセッティングできる。先日他誌の取材で触れたドライビング・シミュレーター・ゲームのグランツーリスモを思わせる機能で、電脳化のメリットをうまく使いこなしていると感じた。

ゴルフにはRという、より高性能なグレードもあるわけで、Rが登場してからのGTIは、プレミアムなゴルフという位置づけに舵を切りつつあると以前から思っていた。最新型はその全方位性を、これまで以上に明確に示していると感じた。

たしかに速さでこれを上回るクルマはあるかもしれないが、運動性能から快適性能までさまざまな要素をトータルで見ていくと、ゴルフGTIこそがCセグメントのトップにある1台と言えるのではないだろうか。

逆に言えば2リッターターボのようなトラディショナルなスポーツ・ユニットだけではなく、プラグインハイブリッドなど次世代型のパワーユニットでも似合うような気がした。次の半世紀にGTIがどのような進化を辿っていくか、個人的にはその点も興味を持って見守りたい。

文=森口将之 写真=篠原晃一

■フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4295×1790×1465mm
ホイールベース 2620mm
トレッド 前/後 1535/1515mm
車両重量(車検証記載前後軸重) 1430kg(前910/後520kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16Vターボ
総排気量 1984cc
ボア×ストローク 82.5×92.8mm
最高出力 265ps/5250-6500rpm
最大トルク 370Nm/1600-4500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前/後 マクファーソン・ストラット/マルチリンク
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前後(取材車) 225/40R18(235/35R19 91Y)
車両価格(税込) 549万8000円

(ENGINE2025年5月号)

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