2025.04.15

CARS

初代Gクラス、しかも軍用仕様のW461型 六本木が似合わないオフロードで本領が発揮できる1台

今年で10回目を迎えたオートモビル・カウンシルは旧車を軸に自動車や自動車趣味に関わるもの多数展示、販売されるイベントである。自動車メーカーやインポーターだけではなく、自動車関連ショップの出展も多い。ここでは旧車のスペシャル・ショップに並べられた注目のクルマを紹介。最初の1台はのちにGクラスと呼ばれるようになったメルセデス・ベンツのオフローダー、ゲレンデヴァーゲンだ。

ジムニーではない

「おっ、ゲレンデ(ヴァーゲン)のショート(ボディ)って、やっぱりカッコイイなぁ。5ナンバー・サイズか。久しぶりに見たな」と心の中で思っている横で、若いカップルの彼のほうが「これ、ジムニーかな?」と言っていた。「あのね、このクルマは……」と教えてあげようかと思ったが、彼女の前で彼に恥をかかせるわけにもいかないので自重しておいた。



軍用のW461型

オートモビル・カウンシル2025の会場で若いカップルが確認することなくスルーしていった車両説明プレートには、1997年式のメルセデス・ベンツ290GDと書いてあった。初代ゲレンデヴァーゲンだが、民生用とも呼ばれる一般向けに販売されていたW460型をベースにした軍用モデルのW461型なのだという。会場での税込車両販売価格は1095万円。車名の末尾がGDということはディーゼル・エンジンなのだな、と思いつつ、このクルマを販売するマツシマクラシックカーのスタッフにいろいろ伺ってみた。

「フロント・グリルのエンブレムをはじめとするさまざまなところがシュタイア・プフ社のPUCHになっていますが、これは前オーナーの趣味でこうなっています。ということで、クルマとしてはメルセデス・ベンツです」



プフ仕様にアレンジ

車両説明プレートの車名がメルセデス・ベンツなのにエンブレムがゲレンデヴァーゲンをメルセデスとともに共同開発し、以前はゲレンデヴァーゲンを自らのブランドのクルマとしても販売していたプフになっている理由が分かり、少しほっとしていたら再びスタッフが話し始めた。

「1997年8月に生産され、まずイタリアで登録されたという記録が残っています。エンジンはOM602 942と呼ばれる5気筒ディーゼルで、2874ccのターボ無し。最高出力は95psです。トランスミッションは5段MTで、副変速機付きですね。12V仕様で、官公庁での使用や産業用として特化したモデルになっています」



ジムニーみたいなもの!?

この話を先ほどの若いカップルにも聞かせてあげたかったな、と思いながら、ふと、ターボ無しの5気筒ディーゼルを5段MTで操ったら、最高速度こそ期待できないものの、スゴ~イ悪路でも走破できるのでは? と考えた。そのことをスタッフに伝えてみたら、このように説明してくれた。

「はい、このクルマはW461型の中で最も機能性と機動性が研ぎ澄まされたモデルです。道具としての価値が非常に高い1台だといえますね。メルセデス・ベンツ純正クーラーも装着されています。ボディが5ナンバー・サイズでホイールベースが短いこともあり、もうジムニーみたいなもんですよ。どこにでも行けます」



重厚なつくり

まさかメルセデス・ベンツ 290GDの取材がジムニーの話題で始まりジムニーの話題で終わるとは思っていなかったが、スタッフの許可をもらい、ジムニーのことが頭から離れない状態で撮影していたら、民生用の日本製SUVでは実現することができないW461型の重厚さに驚いてしまった。官公庁向けや産業用の12V仕様だが、各部の造りが骨太なのだ。

「そういえば、仕事でGクラスを整備しているメカニックさんがブースにやってきて290GDを見ながら、やはり、W461型はひとつひとつのパーツが頑丈にできていると言っていました」

高級車化が進んだ2代目となるW463型Gクラスとは異なる、タフなゲレンデヴァーゲンを手にしてみるのも一興だろう。



文・写真=高桑秀典

(ENGINE WEBオリジナル)

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