2025.05.23

CARS

目指すのは完璧さよりも楽しさと驚き!? 新しいミニ・ジョン・クーパー・ワークスの走りはまさに痛快だった!

新しいミニ・ジョン・クーパー・ワークスの走りはまさに痛快だった!

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1979年登場のM1にはじまるBMWのハイ・パフォーマンス・モデル、“M”シリーズ。F1に革命をもたらし、クラシック・ミニを競技の世界で一躍有名にしたジョン・クーパーの名を冠し、現行ミニのトップ・モデルとして位置づけられている“ジョン・クーパー・ワークス”。今や同じグループに属するスポーティなこの2つのブランドの違いとは? ミニの国際試乗会に参加し、エンジニアと話してみた。

目指すゴールが違う

ミニにとっての“ジョン・クーパー・ワークス(JCW)”とは、BMWにとっての“M”のような存在である。というようなことをエンジニアに伝えてみたら「うーん、近いけれど同じではないですね」と言われ、「Mはすべてにおいて完璧を目指します。JCWはファン(Fun)やサプライズを目指しています」とやんわり修正された。

ミニJCWシリーズ。

ベース・モデルに対して内外装のみならず、パワートレインやサスペンションにも手を加えるやり方自体は似ていても、MとJCWでは目指すべきゴールが微妙に異なるようだ。

そして、実際JCWはファンとサプライズが満載なクルマに仕上がっていた。

ミニは現行モデルから、3ドアと5ドアとコンバーチブルの車名が“ミニ”から“ミニ・クーパー”へと変わった。これにより、ミニ・クーパー(3ドア/5ドア/コンバーチブル)、ミニ・エースマン、ミニ・カントリーマンの3車種5ボディとなり、すでに発表済みのミニJCWカントーリマンALL4に加え、あらたに残りのすべてのモデルにJCW仕様がラインナップされた。

厳密には3ドアだけは電気モーター版と内燃エンジン版で車体構造が大きく異なるのだが、今回はその中から、エンジン搭載モデルのミニJCWとミニJCWコンバーチブルを紹介する。

エンジン搭載モデルのミニJCW(3ドアのみ)。

ミニJCW(3ドアのみ)とミニJCWコンバーチブルのエクステリアは、前後のバンパーやホイールが専用の意匠となるほか、ボンネットにはオリジナルのストライプが入る。

エンジン搭載モデルのミニJCW(3ドアのみ)。

また、ミニJCWのほうにはリア・スポイラーが装着され、よりスポーティな見た目になっている点が特徴だ。オーバー・フェンダーなどにはなっておらず、控え目だけどノーマルとは明らかに異なる雰囲気のまとったデザインでまとめられている。

いずれのモデルにも搭載される2リットルの直列4気筒ターボ・エンジンはノーマルと同型だが、ソフトウェアをJCW用とすることで、ミニ・クーパーSの最高出力/最大トルク204ps/300Nmに対して231ps/380Nmにパワーアップされている。トランスミッションもノーマルと同一の7段DCTのみとなる。

エンジン搭載モデルのミニJCW(3ドアのみ)。

足まわりにも手が加えられていて、ばね/ダンパー/スタビライザー/パワー・ステアリング/スタビリティ・コントロール(DSC)などがJCW専用のセッティングとなっているそうだ。

「まずばねを決めて次にダンパー、そしてスタビライザー、パワステ、DSCというこの順番がとても重要です。こうすることで、ほぼニュートラル・ステアに近いハンドリング特性を実現することができました」というのはエンジニアの弁。

順番にこだわるあたりがなんともBMWのエンジニアらしい。さらにミニJCWは、リアのサブ・フレームに補強を追加したという。これは前輪駆動でフロントに荷重が寄り、リアの接地感が悪くなる事への対策だろう。やっぱりBMWらしい。

面白いように向きを変える

ノーマルのミニの3ドアは、乗り心地が少し硬めに感じる。これは2.5mに満たないショート・ホイールベースのせいであり、これではフラット・ライドを目指しても物理的に不可能だ。

エンジン搭載モデルのミニJCW(3ドアのみ)。

ミニJCWはそれよりもさらに硬くなっている。ばねレートも減衰力を上げているのだから、これも致し方ないだろう。ただ、ボディはしっかりしているので、ばね上の振動は減衰が速く残存もないので不快ではない。

この乗り心地と引き換えに手に入れることができたのは痛快なハンドリングである。ノーマルのミニでも“ゴーカート・フィール”などと評されるけれど、こっちのほうがまさしくそれに近い。

エンジン搭載モデルのミニJCW(3ドアのみ)。

曲がるというよりは横方向へ水平移動するようなイメージで面白いように向きを変える。この時、エンジニアの言うようにニュートラル・ステアに近い状態を保つから、安定感もあって安心してステアリング操作に集中できるのである。

エンジン搭載モデルのミニJCWコンバーチブル。

いっぽうのミニJCWコンバーチブルは、開口部の大きなボディにより剛性感はミニJCWよりもやや落ちる。しかし、この適度な“ユルさ”が屋根を開け放って楽しむオープン・ドライブにはちょうどいい塩梅になっていた。

エンジン搭載モデルのミニJCWコンバーチブル。

屋根を閉めれば剛性感はミニJCWに近づくからスポーティなドライブも存分に楽しめる。リラックスとスポーツの二刀流であるミニJCWコンバーチブルは、見方によってはお買い得かもしれない。いざとなれば、後席には大人ふたりがどうにか座れるスペースもあるし。

価格はミニJCWが536万円、ミニJCWコンバーチブルは585万円。

文=渡辺慎太郎

(ENGINE Webオリジナル)

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