【全2回(前篇/後篇)の後篇】
追浜と湘南の工場閉鎖にはじまり、GT-Rが終焉を迎えつつあるなど、往年のファンとしては寂しいニュースが飛び交ってばかりの日産。いっぽうでエクストレイルやルークス、エルグランドなどなど、再興へ向けて新しいクルマの情報も出はじめている。ただ、実はほかにも注目すべき隠れた日産車もある! その名は「NV200バネット」! 2009年の登場時からその魅力を見定めていた自動車ライターが、クルマ好きも納得のその仕立てとお薦めのグレードについて、歴史を紹介した前篇に続き、詳しく報告する。
タウンエースにもフリードにもシエンタにも負けていない隠れた純国産コンパクト・ミニバン
一時は世界を席巻していた日産NV200の成り立ちとは? 【前篇】はこちらタクシー事業は成功とはいえず、世界展開も想定よりは上手くいかなかったが、日本でのNV200の人気は根強い。


もうひとつの日産LCVであるステーション・ワゴン型ライトバンの「AD」はトヨタ・プロボックスに歯が立たず、この2025年10月に生産終了が決まっているが、NV200についてはライバルである「トヨタ・タウンエース」にまったく負けていないどころか、販売台数ではリードしているのだ。
ちなみに、タウンエースは厳密にはダイハツが開発し、インドネシアで生産されるOEM車で、オリジナルのダイハツ版である「グランマックス」、さらには「マツダ・ボンゴ」としても売られている。
いっぽう、NV200は前記のとおり、正真正銘の湘南製の日本車で、今は日産ブランドのみとなっている。

宿敵タウンエースがわずか2グレード(ともに2WDと4WDはあるが)なのに対して、NV200は通常のバン・グレードだけでも5種、さらにキャンピング仕様の“DXマイルーム”や車中泊仕様の“GXマルチベッド”、そして車いす仕様の“チェアキャブ”も用意される充実ぶりだ。

これら商用バンの計8グレードのうち6グレードには、2WDのほかに4WDもある。
また、タウンエースにはない5ナンバー・ワゴン登録車が手に入るのもNV200の特徴で、その“16X”グレードには通常の2列5人乗りの“2R(254万7600円〜)”と、同マルチベッドに加えて、3列7人乗りの“3R(268万6200円〜)”も健在である。
日本の交通環境で最も使い勝手がよく多用途性もあるコンパクト・ミニバンは、今や「ホンダ・フリード」と「トヨタ・シエンタ」の一騎打ち市場と思われがちだが、じつはNV200の“16X-3R”も隠れたコンパクト・ミニバンなのである。
NV200、さらにエンスージァスト好みのグレードはコレだ!
……といったNV200の魅力に気づいている賢いエンスージァストは、じつは少なくなく、街中を注意して見渡すと、かっこよくカスタマイズされたNV200もときおり見かける。

日産車体の子会社であるオートワークス京都によって見事に架装された純正キャンパー仕様の“DXマイルーム(475万3100円〜)”などは、まさにそうしたエンスー心をくすぐるためのグレードだ。

かつては電気自動車もあったNV200だが、日本仕様のエンジンは2009年の発売当初から一貫して1.6リットル自然吸気のHR16DE型である。変速機も当初あった5段MTはなくなり、現在はCVTと4段ATである。1.2トン〜1.3トン台の車重に1.6リットルだから、ご想像のように走りは小気味いい。
また、商用バン最上級の“GX(264万9900円〜)”などはプライバシー・ガラスや吸音効果で静粛性も引き上げるラゲッジ・カーペットなど、個人ユースも想定した仕立てとなっている。
シャシー・チューニングが一枚上手のワゴン仕様
ただし、あくまで個人の乗用車として乗るなら、個人的にはワゴンの“16X”系がオススメ。機能装備はバンの“GX”と大差ないのだが、リア・シートがヘッドレスト付きのしっかりしたものになるだけでなく、過積載を想定しないシャシー・チューンもワゴン専用になる。空荷に近い軽荷重での乗り心地やハンドリングは、バンより明らかに一枚上手の感がある。

冒頭のように2026年度をもって生産終了するNV200だが、その根強い人気と需要を受けて、日産は同時に「NV200の後継モデルは2027年度に導入する予定」とも公表した。
普通に考えると、その次期NV200はルノーとの共同開発によるCMF-Bプラットフォームをベースとして、日産の九州工場で生産されることが予想される。同じCMF-Bベースの日産ノートやノート・オーラ、あるいはルノー・ルーテシアやキャプチャーなどの走りの良さを考えれば、新しいNV200(車名は変わるかもだけど)にも期待しかない!
一時は世界を席巻していた日産NV200の成り立ちとは? 【前篇】はこちら文=佐野弘宗
(ENGINE Webオリジナル)