2025.05.28

CARS

エンジン版より一枚上手! デンキ版のミニ・ジョン・クーパー・ワークスこそが本当のゴーカート・フィールの持ち主

これぞゴーカート感覚なミニJCWとミニJCWエースマンに試乗!

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ミニのジョン・クーパー・ワークス(JCW)仕様は、内燃機(ICE)だけでなく、電気自動車(BEV)にも及ぶ。ICEに続きBEV版のJCWである、3ドアのミニ・クーパーと5ドアのエースマンにも、渡辺慎太郎が試乗した。

英、独、中という3つの国籍を持つ

現在、ミニのラインナップにはミニ・クーパーの3ドアとエースマン、カントリーマンにBEVが用意されているが、正確に言うと、エースマンはBEV専用モデルである。BEVのミニ・クーパー(3ドア)は、ICEと見た目がそっくりではあるものの、プラットフォームもボディも別物で、Aピラーの角度やらドア・ハンドルやらが異なる仕立てとなっているのはご存知の通りである。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)シリーズ。

ちなみにBEVのミニ・クーパー(3ドア)とエースマンは、中国で生産されている。いっぽうICEのミニ・クーパー(3ドア/5ドア/コンバーチブル)はイギリス産。カントリーマンだけがドイツ産なのは、BMW(のX1/X2))とプラットフォームを共有しているからとのこと。

つまりミニのBEV仕様は、イギリス発祥のミニなのにドイツの設計開発で中国で作られるという、まるで多重国籍みたいなことになっていた。でも今後、こういう出自のクルマはますます増えていくに違いない。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)E。こちらは3ドア。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)エースマンE。こちらは5ドア。

ミニJCW EとミニJCWエースマンEの足まわりへの手の入れ方は、ICE仕様と同じである。ばね/ダンパー/スタビライザーなどが、主にばね上の動きを抑える目的でJCW専用のセッティングになっている。ただし、駆動用バッテリーを搭載する両車は、ICEよりも約300kgも重くなっているため、その車重に合わせたチューニングも施したそうだ。

ノーマルのエースマンには“E”と“SE”のグレードがあって、それぞれ最高出力/最大トルクは184ps/290Nm、218ps/330Nmを発生する。実はこの2種類、使用しているモーターの型式が異なる。JCWではエースマンだけでなくミニ・クーパー(3ドア)も、SEのモーターをベースに258ps/350Nmまでパワーアップされた。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)E。こちらは3ドア。

重量増の割には出力とトルクの上乗せ分が少なく、数値だけ見るとこれでアグレッシブな走りが出来るのかと試乗前には思ったけれど、実際に走ってみるとそんな不安は一瞬にして消え失せた。トルクの立ち上がりが速いモーターの特性を存分に活かしたパワートレインの設定になっているので、ミニJCW EでもJCWエースマンEでも想像以上の加速感が味わえる。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)E。こちらは3ドア。

加速感よりも印象的だったのは、アクセル・ペダルに対するレスポンスのよさだ。右足のわずかな動きも見逃さず、瞬時に前輪へしっかりとしたトラクションがかかるのである。こうしたレスポンスが、ステアリング操舵に対する挙動の応答性と見事に呼応する。

ICEのミニJCWを「まさしくゴーカート・フィール」と書いたけれど、ミニJCW Eに乗ると「これこそ本当のゴーカート・フィール」と唸ってしまう。

ステアリングを切ると同時に真横へ動くように向きを変える操舵特性そのものに、ICEとBEVで大きな差はない。しかし、アクセル・ペダルを踏んで加速しながら旋回するような場面では、ICEだとどうしてもエンジンの反応がわずかに遅れてしまい、加速よりも曲がるほうが先に行ってしまう。

いっぽうのBEVでは、加速と曲がるがシンクロするので、運転のリズムが乱されることなくコーナリングを楽しむことができるのだ。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)E。こちらは3ドア。

「ゴーカート・フィール」という表現は、ミニの代名詞のように使われることが多いけれど、それをもっとも正確に体現しているのはミニJCW Eだろうと、個人的には感じた次第である。

家族を乗せても大丈夫なマイルドな味つけ

ミニJCWエースマンEは、今回試乗した中で実はもっともマイルドな乗り味だった。車重が増えた分は乗り心地の向上に役立っているし、全高と重心の高さは、3ドアの真横へ動くような挙動を、わずかにロールを許すクルマらしい挙動に変える一助になっていた。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)エースマンE。こちらは5ドア。

サスペンションのセッティング次第では、ばね上の動きをもっと抑えることもできただろうが、エンジニア曰く「エースマンはJCWでもフェミリー・ユースが想定されるので、あえて現状のセッティングにした」とのこと。

ミニJCW(ミニ・ジョン・クーパー・ワークス)エースマンE。こちらは5ドア。

ミニ・カントリーマンよりひと回り小さいボディ・サイズは、欧州や日本の市街地での取り回しがよく、でも室内には余裕あるスペースが確保されている。カントリーマンがずいぶん大きく育ってしまったので、エースマンの存在が今後際立ってくるかもしれない。

価格はミニJCW Eが616万円〜、ミニJCWエースマンEが641万円〜。

文=渡辺慎太郎

 ■ミニJCW E
全長、全幅、全高はそれぞれ3858mm、1755mm、1460mm。ホイールベースは2526mm。フロントに搭載された最高出力258ps/5000rpm、最大トルク350Nm/50-5000rpmを発揮するモーターで前輪を駆動する。バッテリー容量は49.2kWhで一充電走行可能距離は421km。0-100km/h加速は5.9秒で、最高速度は200km/h。

 ■ミニJCWエースマンE
全長、全幅、全高はそれぞれ4079mm、1754mm、1514mm。ホイールベースは2606mm。フロントに搭載された最高出力258ps/5000rpm、最大トルク350Nm/50-5000rpmを発揮するモーターで前輪を駆動する。バッテリー容量は49.2kWhで一充電走行可能距離は403km。0-100km/h加速は6.4秒で、最高速度は200km/h。

(ENGINE Webオリジナル)

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