春の時計見本市や新製品発表も一段落。新作が続々と店頭に並び始めた。ダイバーシティー=多様性の時代。より柔軟・自由な”新基準=ニュースタンダード”によって、今の自分にふさわしい一本を選びたい。8名のENGINE時計委員の目利きを参考に、この夏、一生つきあえる腕時計をセレクト!
ミルス スノースター
ミルスは1919年にスイスの時計都市のひとつとして名高いビール/ビエンヌで創業し、洗練されたデザインと精密な時計技術で人気を博した。
「スノースター」は、第二次大戦中の1940年代、アメリカ軍パイロットに支給されたライフ・バーター・キット(脱出・回避物々交換キット)の一部に含まれ、人命を救った時計として知られる。
当時のデザインを現代的なアレンジで再現する新しいブレスレット仕様のモデルは、北半球の亜寒帯林ボレアルフォレストをイメージしたグリーンダイアル(右)や、アイスブルーダイアル(左)を展開。高品質素材の904Lステンレススティールや高性能の自動巻きムーブメントも特徴。直径39mm、10気圧防水。39万6000円。
トラッドな実用三針時計 数藤 健106年の歴史を持つミルス。2019年の創業100周年から、「ティソ」の創業者一族のリーダーシップのもと高度な技術とこだわりのあるデザインを融合させたモデルを展開している。
現在の旗艦定番モデルが「スノースター」。サンレイ仕上げのダイアルはグリーン、ブルー、ブラック、シルバーの4色展開。アプライドの時・分インデックス、ダイヤモンドカットとロジウムメッキ仕上げのドーフィン針が端正かつトラッドな表情をつくる。
3時位置の日付カウンターに配された鮮やかなレッドがアクセントに。ブレスレットの着脱・交換が、ボタンを押すだけで工具不要でできるのも嬉しい。豊富な交換ストラップが用意されているので付け替えて楽しみたい。
スペックと使用素材に注目! 細田雄人
時計を選ぶ基準は人それぞれ。例えばマニアックな人ならば、使用されている素材で心惹かれることもある。
ケース径39mmという絶妙なサイズ感、10気圧防水の頼もしさ、信頼性の高いCal.ETA2892A2の搭載と、優等生なツールウォッチという印象を与えるスノースター。
同作に他社と異なるスパイスを与えているのが、ケース素材に使用される904Lスティールだ。一般的に多く時計ケースで採用される316Lと比較してクロムやニッケルの含有量が高いこの素材は、耐食性が高いうえにより白い色味を持つ。しかしその半面、加工コストがかかるため、まだ一部のブランドが採用するのみという貴重なものだ。こういった視点での時計選びもまた、面白いだろう。
問い合わせ=ユーロパッション Tel.03-5295-0411
写真=岡村昌宏
(ENGINE2025年8月号)