2025.07.09

CARS

たった70台だけが生産されるBMWスピードトップ イタリア最古の自動車コンクール、ヴィラ・デステに姿を現す!

BMWが初公開したコンセプト・カーのスピードトップ。欧州メディアが伝えるところによると、価格は約50万ユーロ(約8180万円)。

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初夏のイタリアを彩るクルマのイベント、コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステが5月23日から3日間、コモ湖畔で開催された。そこでは個性豊かなコンセプト・カーが注目を集めていた。

会場のグランドホテル・ヴィラ・デステには54台のヒストリックカーが8クラスに分けられて参加した。招待者投票によるコッパ・ドーロ賞には1957年BMW507ロードスターが選ばれた。昨年は比較的若い1995年マクラーレンF1が選ばれたことで古参のゲストたちに動揺が走ったが、今年は振り子が戻ったようだ。

ベスト・オブ・ショーを獲得した1934年アルファ・ロメオ・ティーポB(P3)。名設計者ヴィットリオ・ヤーノが設計したグランプリカーの傑作で、イタリア人ドライバーのアキッレ・ヴァルツィにニースとトリポリで優勝をもたらした。

いっぽう審査員によるベスト・オブ・ショーには1934年アルファ・ロメオ・ティーポB(P3)が選ばれた。当時セミ・ワークスチームであったスクーデリア・フェラーリの車両で、戦前に活躍した名ドライバー、アキッレ・ヴァルツィに数々の優勝をもたらした、ヴィラ・デステの格に相応しい履歴をもつ。

そういったメインの賞とは別に、私が近年、注目しているのがコンセプト・カーの部門だ。2000年代には、大手メーカーがモーターショーに展示したクルマを競って再出展し、2008年には12台が参加した。だがその後、こういった出展は予算縮小などの影響で少なくなってしまった。

アルファ・ロメオ8Cドッピアコーダ・ザガート。チーフデザイナーの原田則彦氏はオリジナルの8Cは比較的車高が高いので、今回はクオータービューで軽く見えるようにすることに苦労したと話していた。

その傍らで、カロッツェリアが顧客の注文に応えた、もしくは超少量生産を前提とした車両の出展は地道に続けられ、今日に至っている。今回も5台の興味深いモデルが参加した。特に注目したいのは、ザガートが初公開したアルファ・ロメオ8Cドッピアコーダである。ある顧客のために造られたもので、着想源は僅か17年前につくられた8Cコンペティツィオーネである。ザガートは同車の開発に関与していたことから、再解釈には当時の知見が駆使された。



また、映画プロデューサーのジェームズ・グリッケンハウス氏は自身のチームのル・マン・カーを基にした公道仕様車を初公開。こちらは24台が製造される予定だ。エントラントとは別に主催者のBMWもコンセプト・カーのスピードトップを披露。70台を生産する。昨年、同じ場所でコンセプト・カーのスカイトップを50台造ると表明したのに続くものだ。プレミアムとはいえ、量産メーカーであるBMWのクルマがコレクターズ・カー市場でどう評価されるか興味深い。

草創期のヴィラ・デステは、ミラノの富裕層が自身の好みに合わせて造らせた愛車を持ち合う“園遊会”だった。そうした意味でコンセプト・カーのクラスは、ヴィラ・デステのもともとの趣旨に合う。来年はどんなクルマが我々を楽しませてくれるのだろうか。

文・写真=大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA

(ENGINE2025年8月号)

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