ランチアが、イプシロンにスポーツ・モデルのHFとHFラインを設定した。
オレンジと白はどちらも往年のラリー・マシンのイメージ色
HFとはHigh-Fidelityの意で、ランチアのスポーツ・モデルに設定されてきたグレードである。HFそのものの復活自体はすでに発表されていたが、HFの文字と、赤い象の懐かしいエンブレムがプロダクション・モデルに掲げられるのは、デルタ以来となる。

まずイプシロンHFは、最高出力/最大トルクが280ps/345Nmの高出力モーターを積むハイ・パフォーマンスBEVだ。

0-100km/h加速は5.6秒、最高速度は180km/hで、WLTPサイクルの航続距離は、標準タイヤを履いた状態で370kmに達する。バッテリーは容量は54kWhで、400Vシステムを装備して、10分で最大100km分の電力を補充できる。駆動系にはトルセンLSDを備え、旋回時のトラクションを最適化するとともに、低グリップ時の安全性を改善する。

シャシーは20mmロー・ダウンしたサスペンションを組み、トレッドは30mm拡幅。スタビライザーはフロントを67%、リアを153%強化している。ホイールは18インチで、アルコン製ブレーキは4ポット・モノブロック・キャリパーと355mmディスクを装着する。
エクステリアは、HFロゴの入る専用フロント・バンパーやリア・ディフューザーを装着し、ホイール・アーチもアグレッシブなデザイン。これはランチアの新たなデザイン言語であるPu+Ra(ピュア+ラディカル)に基づくもので、ストラトスにインスパイアされた丸型テールライトや、無駄を削ぎ落とした彫刻的なフォルムの現代解釈も盛り込まれている。

ボディ・カラーは、ブラックやホワイトのほか、伝説的なフルヴィアやストラトスのラリー・マシンへのトリビュートとしてオレンジも用意される。

インテリアも、スポーティなランチアの血統を感じさせる。レーザー・カットの再生ナイロン素材を用いたシートは、デルタ・エヴォルツィオーネに着想を得たもので、パーフォレート・レザーを巻いたステアリング・ホイールはHFロゴが誇らしげだ。
インフォテインメントや空調、照明などを操作するS.A.L.A.システムのインターフェイスに用いる新たなグラフィックや、ブルーとオレンジのグラデーションが鮮やかなダッシュボードも、没入感とハイテク感を生み出す。

いっぽうHFラインは、1.2リットル直列3気筒に48Vシステムを組み合わせたマイルド・ハイブリッドで、エンジンは110psを発生し、0-100km/hは9.3秒、最高速度は190km/h。EVのHFと同様、フロント・バンパーは赤い象を記したロゴを掲げるスポーティなスタイル。ホイールは17インチだ。
インテリアには、レーシーなランチアを意識したカネロニ・パターンにオレンジのスティッチを入れたシートを装備。そのほかは、HFと同様のステアリング・ホイールやアルミ製のペダル、エレクトリック・ブルーのダッシュボードとドア・トリムなどを採用している。ボディ・カラーも同じく3色で、ホワイトとオレンジにはブラック・ルーフのデュオ・トーンも用意される。

今回、HFとHFラインの発表は、欧州でも屈指のテクニカルでエキサイティングなテスト・サーキットであり、ランチアの開発の場にもなったバロッコのプルービンググラウンドで実施。本国では、HFラインはすでにショールームに並び、HFは夏以降に発売される予定だ。
このほか、215psの1.2リットル3気筒ターボと、競技車両用トランスミッション・メーカーであるサデブ製の5段MT、次世代型の機械式LSDを積んだラリー・マシンの「ラリー4 HF」や、最高出力/最大トルクが147ps/240Nm+6段MTのエントリー層向けモータースポーツ・ベース車である「HFレーシング」もリリース。

ラリーの舞台へも復帰したランチア。その走りが公道で味わえるHFとHFラインは、ぜひとも日本市場へも投入してもらいたい。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)