新型フェラーリ「アマルフィ」がついに発表された。1960年代の映画「甘い生活」の世界を現代に甦らせたGTクーペ、フェラーリ・ローマの後継となるドルチェ・ヴィータ第2弾のモデルだ。イタリアのアマルフィで行われた発表会から自動車ジャーナリストの西川淳がリポートする。
発表会の地名から車名を予想
フェラーリの新型車発表が近くなると、そのスジのクルマ好き界隈では“車名予想”で盛り上がる。今回は多くのアクティブ・カスタマーが本社からアマルフィ海岸で開催されるワールドプレミア・パーティに招聘されていたため、みんな“アマルフィ”だと予想した(商標登録を調べ上げる強者もいる)。

フェラーリがマラネッロ以外で新車を発表するということは、それがライフスタイル系モデルであることを示す。つまり、2+2のFR系GTカーだ。となると、ローマの後継モデルである。そしてローマはローマで発表され、ポルトフィーノはポルトフィーノで披露された。ちなみにカリフォルニアはパリ・モーターショーだったけれど、それはモーターショーがまだ元気だった時代の話だ。

アマルフィで開催されるお披露目パーティのおよそ1週間前、新型車のプレビューと称して、世界のメディア関係者はこっそりマラネッロに招かれた。2カ月前の296スペチアーレもそうだったし、昨年5月のドーディチ・チリンドリもそうだった。それがマラネッロの最近の流儀だ。招待状にはF169MMとあった。F169とはローマである。つまり、新型車はローマと車台を共有することまでは事前に推測ができた。問題はその中身(と名前)だ。

その舞台は、いつものようにマラネッロ本社工場の中でも秘中之秘というべき場所、チェントロ・スティーレの3階だった。通常、カスタマー・ファクトリーツアーで見学できる場所といえばエンジン工場とアッセンブリ工場のみ。チェントロ・スティーレに入ることが許されるのは特別なオーダープログラムのアトリエかテーラーメードが可能な顧客のみである。
ちなみに、その建物はいかにもデザインセンターっぽい洒落た外壁で、1階にモデリングセンター、2階がデザインセンターとテーラーメイド・ルーム(つまり顧客はデザイナーと共に仕様を悩むことができる)、3階がアトリエ(軽めのスペシャルオーダー)とバーチャル・ルーム、そして我々メディア関係者には馴染み深いプレゼンテーション・ルームがある。

プレゼンテーションもまたお馴染みの3名、エンリコ(マーケティング代表)とジャンマリア(開発代表)、フラビオ(デザイン代表)で行われた。まずはエンリコが「フェラーリらしいドライビング・ファンとライフスタイル的な楽しさやエレガンスを併せ持つ、つまりローマの後継モデル」であると宣言する。それを受けてジャンマリアは「ローマよりも加減速やハンドリングで上回る」と力説。スペックや見た目以上の進化を内包すると胸を張った。そして、「ビューティ&シンプル路線をさらに磨き上げた」とフラビオ。再びエンリコにマイクバトンが戻ると「車名はアマルフィ」と声高らかに告げた。
ドルチェ・ヴィータ第2弾。そう、アマルフィ海岸もまたユネスコ世界遺産であり、ヘラクレスとアマルフィ(妖精)という愛の物語を有する土地である。つまりローマに負けず伝統と文化の場所というわけだ。