新興ブランドにはない歴史という財産を持つランボルギーニ。そのヘリテージを守り伝える部門「ポロストリコ」で、筆者はカウンタックの認証業務を体験。ブランドの誇りに触れた。モータージャーナリストの西川淳がリポートする。
ランボルギーニ自身がオーダーした個体
新参が古参に太刀打ちできないポイントは何か。ヘリテージだ。それゆえ既存のブランドは自社のヘリテージを大事に活用する。ミュージアムを整備したり、レストレーションに力を入れたりすることで、豊かなヘリテージをアピールし付加価値を得ようとするのだ。

ランボルギーニは今年で創立62年。その歴史もいよいよ味わい深いものになってきた。その“ランボの伝統”を守り後世に伝える重要な役割を担っている部門がポロストリコである。
彼らの仕事は主に4種類。(1)アーカイブ整理(2)サーティフィケーション発行(3)レストレーションとパーツ供給(4)クラシックカーオーナーのケア、だ。(4)の例を先に挙げておくと、過去にはミウラの50周年ドライブツアーや、クラシックモデルだけのブランド60周年記念ツアーやコンクール・デレガンスなどを開催してきた。
ヘリテージこそブランドの力
部門創設10周年を迎えた今年、彼らは先に記した(1)から(3)までの業務をメディアに疑似体験させるというイベントを催した。私が担当したのはカウンタック25thアニバーサリー。個体を前に認証作業やレストア準備に必要な情報(車体番号やエンジン番号など)を収集し、コンディションを見極める作業から始まった。

次に3万点に及ぶアーカイブから該当する資料を引っ張り出す。製造記録シートによるとこの個体は、1990年6月13日にオーダーされ、7月4日に工場をラインオフしたとあった。エンジン番号もマッチングしていたし、そのほかも全てオリジナル。それもそのはず、オーダー主はランボルギーニ自身で、有名なカウンタック最後の個体である。
キャブレターの構造や整備方法を学んだのち、実際にカウンタックを走らせダイナミック性能を確認。問題点があればそれをチェックシートに記載、エンジニアに提出して対応してもらう流れとなる。
担当したカウンタックは1990年式と比較的新しかったため、新車時の様子を確認できる資料(カタログや当時の雑誌など)も多く作業は順調に進んだが、60年代の400GT2+2あたりを担当したチームは年式によって違うパーツの判定や数ページに及ぶ製造シートの把握などに苦労したようだった。
文=西川 淳 写真=アウトモビリ・ランボルギーニ S.p.A.
(ENGINE2025年9・10月号)