2025.09.21

CARS

【アルファ・ロメオ沼】にハマった趣味車11台持ちオーナー 最後に残す3台とは?

終活を始めたら最後に残したいと思っているのが、この3台だとオーナーの剱持さんは言う。

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【全2回の(前篇/後篇)の前篇】

バイクで親しんだイタリア車の世界に魅了されて20余年。劔持睦彦さんが、数多のイタリアン・スポーツカーから「最後に残したい」と選んだ3台とは?

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ガレージに並ぶ往年のイタリアン・スポーツカー

早朝の軽井沢から嬬恋に向けて北上する国道146号線は絶好のドライブコースだ。中軽井沢の街中を抜けると針葉樹で覆われた浅間山のすそ野を駆け上がる。道が直線的になってしばらくすると、道路脇の看板に「北軽井沢」の文字を見つけた。

入口方向から見た劔持邸。左のガレージ棟と右側で「く」の字に曲がったのが住居棟。

指定された場所に目を向けると、一本の小径と広がる木立しか見えなかった。目指す家は、その奥で静かな佇まいを見せていた。

駐車スペースから見ると、向かって右側の建屋が住居スペースで左側がガレージになっている様子。そこで我々を出迎えてくれた人物が、オーナーの劔持睦彦さんだった。

挨拶もそこそこに目に飛び込んできたのはガレージに収められた3台のイタリア車。2台のアルファ・ロメオ・スパイダーと、左端はディーノ246GTだろう。ガレージの壁を飾るアート作品のような看板やミニカーのディスプレイ、そしてパーツ類もセンス良く並べられている。

1970年式のディーノ246GT。スカリエッティの工房でハンドメイド仕上げされた流麗なボディライン、無色透明のガラス類、そしてアルフレード・フェラーリ設計のV6エンジンなど、このヒストリック・モデルならではの魅力を余すところなく備えている。劔持さんのディーノ246GTは、シリーズの中でも高い人気を誇る初期モデル「ティーポL」。

たとえ街中でマニアックなクルマを見かけても、オーナーの趣味嗜好を窺い知ることは難しい。だがガレージはその逆で、主の好みだけでなく、その人となりまでを雄弁に物語ってくれる。ガレージの雰囲気からして、劔持さんは相当にマニアックなクルマ好きと考えて間違いないだろう。

ジュリエッタの背後の壁に幾重にも噴きつけられた、排気の黒いススなどはそのいい例かもしれない。劔持さんはコレクターというよりも、実際にステアリングを握って愉しむ実践派なのである。

ガレージ内には様々なアイテムが整然と並ぶ。

「この家は建ててから、ちょうど10 年目を迎えます。この場所を選んだ理由は、私の生まれ故郷がすぐ近くだったからです。昔からよくこの家の近くの道を通って軽井沢方面へ行っていましたから。敷地は1000坪ほどあります」

劔持さんの家の特徴を端的に言い表すなら、“佇まいの良さ”。周囲を覆う森の景観を崩すことなく、すっきりと溶け込んでいる。

「この建物は建築家の先生に設計を依頼し、施工は工務店を営む私の友人に任せました。私からの要望は何よりもまず平屋であることが絶対条件でした。そして、できる限り木材を使用して建てることくらいです」

平屋建てのため建物全体が木立より低く、板張りの壁が醸し出すナチュラルな雰囲気は、四季を通じて周囲の森と見事に調和している。母屋に比べてガレージの屋根が若干低く設計されているが、この高低差が生み出す空間のメリハリも見事だ。シルバーに塗装されたガルバリウムの屋根は、薄雪を思わせる佇まいで、周囲の景観に溶け込んでいる。そしてガレージに並ぶ往年のイタリアン・スポーツカーたちは、北軽井沢の風景を北イタリアの一角のように魅せている。

「白いアルファ・ロメオは1958年式のジュリエッタ・スパイダー。中央の1963年式のジュリア・スパイダーは私の好みで大幅にカスタマイズしています。左端は1970年式のディーノ246GT。初期のティーポLで、ボンネットやドアなどの開口部パネルはアルミ製です」

ちなみに埼玉の自宅とこちらの家を往復する劔持さんの足グルマもアルファ・ロメオ。しかも冬でも気兼ねなく北軽井沢を訪ねられるように、ステルヴィオ・クアドリフォリオをチョイスしていた。つまり劔持さんはことクルマ趣味に関しては完全にイタリアの人なのだろうか?

「いや、そういうわけでもないんですけどね(笑)。まあ中に入ってください。コーヒーを淹れますから」

1958年式のジュリエッタ・スパイダー。全体が極めてオリジナルな状態を保持している。

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